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031 石碑と考察

PV4000、ユニークアクセス1000を超えました。

いつもありがとうございます。


引き続き封印の洞窟からです。

 扉の先に入ると、唐突に室内が明るくなったの。

 照明で明るくなったというよりは、部屋全体が薄っすら薄い緑色に発光している感じね。部屋の広さは20畳ほどかしら、そこそこ広いけれど壁画が有るわけでもなく殺風景な白い壁が薄っすら光っている感じね。側面の壁がのっぺりとしているのに対して、正面の壁の方だけ僅かに奥まって作られているわ。およそ30センチほどかしら。だけど、側壁同様に壁には何も描かれていなくて、壁の中央直下の床に四角いタイルがほんのり主張しているだけ。

 部屋の中央には石碑の様なものが有ったわ。高さは1メートル弱かしら。真四角の中央にA3サイズ程度の広さを横にして絵と文が描かれていて、見やすいように傾斜が付けられているわ。そして、その石碑を中心とした文様が床に描かれているのが印象的ね。

 私達はゆっくりと歩きながらその石碑に近づいたわ。とりあえず罠らしいものは何も無かったようで、緊張しながら警戒して歩いたけれど拍子抜けよ。



「……ここで行き止まりの様ね」



 ガリの言う通り、部屋には先に通じていそうなドアは見当たらない。もしかしたら隠れているなんてこともあるのかもしれないけれど、現状認められる怪しいものはこの石碑だけ。

 石碑にはよく分からない文字が長々と書き込まれていて、文章の左横に人物の絵が描かれているわ。絵は抽象的で、人で戦士の様な格好をしているのは分かるけれど、それだけね。文の内容が分かればもう少し考えようが有るのかもしれないけれど。



「これ、どう思う? とりあえず、人には見えるわよね」

「うん。人だよね~。そう考えると、ここは人が封印されているってことになるのかな。絵を見た感じだと禍々しい感じはしないし、どちらかというと室内の雰囲気を考えても良い人なのかも~」



 確かにこの部屋の雰囲気は悪くない。如何にも悪魔が住んでいそうというおどろおどろしい感じはなく、仄かに明るいくらいね。そんな私の感想に水を差すように腕組みしながら呆れ顔でガリが言ったわ。



「あんた達、人は見掛けによらないとも言うでしょう? こんな見掛けで魔王とかって線もあるのよ?」

「そりゃ、そうかもしれないけれど、背格好を考えると厳つそうにも見えなければ、どちらかというと子供っぽくないかしら?」

「確かに~。少年ってくらいの方が通る感じかも~。少なくともおっさんには見えないよ~」



 ケリーも同意したように、描かれている人物は大人というよりは子供っぽい。これで魔王だとしたら、よほどの童顔か、実際に子供の姿をしていたのかしら。



「それにしても、どうしてそんなのが封印されているのかしら?」

「それが分かれば世話無いわよ」



 確かにそうなんだけれど、壁画からの解釈で行けば、天使と悪魔の戦いは天使が負けて悪魔によって人が封印されたという解釈になるのかしら。とすると、ここは悪魔が作った場所っていうことになるのよね。

 この人を大事に封じている意味って何だろう。

 パトラッシュは人里が山向こうにあると言っていたわよね。だとしたら、人が居ないわけじゃないってことだから、人が負けたというわけでもないのかもしれないし。……どういうこと?



「さっきの壁画との整合性についてだけど、これを見てどう思う?」

「……そうねぇ、人間が負けたと解釈するなら、魔物はこの世界を制覇しているはずなのに、この谷の魔物は私達にあっさり負けているのよね。だとすると、引き分けに近い負けで、悪魔はこの人を封印するのに力を使い切って沈静化したって感じかしら」

「その可能性もあると思うけど~、この人が魔王だったとしても同じことが言えるんだよ~? 魔王を封じるのに力を使い切って平和を勝ち取っているとしたら~、この人を解放しちゃうとまずいことになるかもしれないよ~?」

「二人とも一理あるだけに判断に迷うわね。せめてこの文章が分かれば判断のしようもあるってもんなんだけど~」



 文章が読めない。

 これが問題なのよ。


 さっきから鑑定も使っているけれど、鑑定結果は「封印の石碑」としか出てこないの。説明が出ないということは、それ以上の情報は分からないって意味よね。実際この洞窟の表示は「封印の洞窟:未踏破」だから、誰も知らない場所の情報を提供できるわけがないと言われればその通りなのよね。困ったわ。

 そもそもここの封印って、仮に解くとしたらどうやってするのかしら。

 もし石碑にご丁寧に説明が有ったとすれば、それを読めない時点でアウトなのよ。じゃぁ、私達が分かる方法で封印を解くとしたら何が有るのかしら。扉の魔石の様なものは認められないけれど、唯一可能性があるとすればそれなのよね。床の文様が魔法陣か何かだとすれば、床の魔法陣が一つの鍵になっているのだとは思うけれど……。



「ねぇケリー、この床の文様についてはどう思う?」

「コレ? ……そうねぇ、扉の文様と同じく何らかの魔法効果が込められているんだと思うけれど~、これが発動しているのかしていないのかの解釈でも判断が分かれるよ~。例えば既に発動しているとすれば~、解除する方法を探すってことになるけれど~、発動していないとしたら~……何のためのって疑問も出てくるでしょ~?」

「あぁ、確かに。そっか、発動していない可能性もあるのね。仮に発動しているとしたら、扉の様に光っているかもしれないから、そうするとこの文様は動いていないってことになるのかしら」



 ケリーの言う通りであれば、この床は動いていない。何故ならドアの文様が私の魔力を受ける前まで光っていなかったからよ。これがアレと同じ代物であるならば、起動時は光っているはずだもの。

 そこにガリが疑問を口にしたわ。



「もし動いていないものだとして、封印を解除するための文様をわざわざ勝った方が描いたりするかしら? あたしが魔王ならそんなご丁寧なことはしないわね」



 確かに言われてみるとその通りね。

 勝者がわざわざご丁寧に解除方法を用意する意味はない。



「……そうすると、この封印をした人は天使でも悪魔でもない第三者って可能性も出てくるのかも~」

「第三者が封印する意味が分からないわ。人間を封印して悪魔に勝利させる存在って何者よ。しかも、その肝心の悪魔も結局のところ世界を掌握することが出来なかったわけでしょう?」

「うーん、可能性の話だからわからないよ~。分かることは、この人を封印する必要が有っただけでしょ~?この洞窟が稼働中のものだと仮定したら~、止めれば分かるってことになるんだけど~」

「客観的に見て、この洞窟が禍々しいわけじゃないって辺りが一つのポイントなのかもね。悪魔が作ったにしては随分丁寧な作りだし、この部屋を見たって雰囲気はどちらかというと神々しい感じじゃない?」



 二人のやり取りから第三者の視点が見えてきたわ。

 ガリの言う通り、この部屋は静謐でどちらかと言えば神々しささえ感じられる様な空間ね。

 少なくとも禍々しい存在が世界を征服して作ったものには思えない。ただ、封印されている存在もまた禍々しい感じはせず、どちらかというと良いものっぽい雰囲気が感じられるのよね。こう考えると、良い人が良い人を封印するという変な想像に行き当たるのだけれど、そうすると壁画の悪魔が描かれる意味が分からなくなるのよ~。


 ちょっと視点を変えて悪魔が仮に封印する人間といったら勇者よね。そう考えた場合、この石碑に描かれている少年っぽい戦士は勇者という可能性もあるのよ。勇者が封じられているとすれば、これを助けることで悪魔の軍勢に対抗する手段が生じるって線もあるのかしら。その場合、この人の封印を解除する方が世界にとってはお得なのかも。


 じゃぁ、良い人が良い人を封印したという想像を突き詰めたらどうなるかしら?


 良い人となると、この場合神様かしら。

 神様が何らかの理由で勇者を封印したとして、勇者を封じなくちゃいけない理由って何?


 某国民的RPGに出てきた神様は、自分が負けることを見越して最後の力を振り絞って勇者を封印して保護するってネタが有ったわよね。……とすると、この洞窟は神様が悪魔と最後の死闘の末に息絶えて残した物になるのかしら。この場合、悪魔とは引き分けた形で、勇者の封印を解ける者が現れれば優勢になるって寸法になるわね。

 私はこのアイディアを二人に話してみたわ。



「どうかしら?」

「……無くはないわね。でも、そんなことするくらいなら、一緒に戦って倒してしまった方が良くないかしら?」

「私もそう思うよ~。結局魔王を虫の息に出来るくらいなら、その時に一緒に戦って倒してしまった方が良いんだから、そう考えると矛盾すると思う。例えば、魔王の攻撃の中に勇者の弱点が有って、それから守るのに封印するほかに道が無かったとかって線もあるのかもだけれど~、封印を解く人が現れなかったら託す意味が無いでしょう?」

「……そう考えた場合、予め『私達』が呼ばれる様に手筈が整えられた上で封印したみたいな話よね」

「「確かに」」

「そこまで用意周到にこの世界の神様が準備したとしたら、この子の封印を解いてあげる必要があるってことになるわね」



 私達は頷きあった。

 答えは封印を解くってことで固まったんだけれど、相変わらず解き方は分からない。



「そういえばさっきの話の中で、悪魔が勝ったのにご丁寧に解除する文様を書かないって話が出たわよね。あれって前提が神様になったら、私達を召喚する手筈を整えた上で勇者を封印したということになって、文様は解除するための鍵として描いたってことにならないかしら?」

「そうね。ガリの言う通りね。でも、肝心の動かし方は結局分からないわ」

「直接文様に力を送る方法が有れば行けるのかもしれないけれど~、ここの仕組みを考えると扉の魔石みたいなものが有ると思うのよね~。どっかに隠れてるのかしら~」

「あ!……もしかして」



 私は思いついて石碑を押してみたの。

 そうしたら、石碑がズレたのよ。



「ねぇ、二人とも手伝って!」



 二人は頷いて一緒にずらすのを手伝ってくれたわ。

 それで頑張ってずらしてみたら、有ったのよ。赤い魔石が。



「……行くわよ?」



 二人ともこくりと頷いたわ。

 私はそれを見て床の魔石にキョーベンを向けて魔力を流し始める。でも、全く反応しないどころか、床の魔石は魔力を吸収しようともしなかったわ。何故?



「あれ~~、なんでダメかな~?」

「ねぇ、キョーコちゃん、もしかしたら、あの正面の壁の床の四角に石碑を持っていかないとダメなのかも?」



 ケリーに言われて壁下の床と石碑を見比べる。

 確かに大きさはそれっぽい。……というわけで、3人でうんしょっこらしょって感じで石碑をそちらに持って行ったわよ。そうしたら、何かスイッチが入った様に中央の床の赤い魔石の周囲が青白く光ったの。


 ビンゴっぽいわね。


 で、私はもう一度そこに魔力を注ぎ始めたわ。すると、魔力が光の線となって文様に走って行き、青白い閃光を発して上に伸びたわ。そして、天井にその光が伸びると天井にも文様が光の線となって浮かび上がって、ずらした石碑の上にそれらの光が粒となって集まり、人型を形成したの。それは想像通り体格的にはそれほど大きくない中学生くらいの少年の姿を形成したわ。

 光の集合体で出来た少年が口を開く。



「……な、これは、どうして!? こんなのあんまりだ!!!」



 想像通り甲高い少年の声がしたけど、その声は酷く焦り困っている印象を受けるわ。



「ねぇ、あなた、私の声が分かるかしら!」

「え、あ、おかまの声!?」

「おかまじゃないわよ!!!ったく、ガキがぁ!お姉様ってお呼び!」

「ひぃ!?あ、え、あぁ……すみません」



 少年は私の声にビクついてこちらを見たわ。

 ようやく私達の存在に気付いた様ね。



「ねぇ、あなたは何者?」

「僕はチヒロ。勇者として召喚されたんだ」

「そう、チヒロ君、貴方はなぜ封印されていたのかしら?」

「……僕は神様に言われて、このままでは世界を救えないから……ああああああ!!!!」



 チヒロは唐突に叫びだしたかと思うと、彼の体から閃光を発したわ。

 眩しくて思わず目を閉じてしまったんだけれど、再び開けた時にはチヒロの体に羽が生えていたの。



「チヒロくん、大丈夫!?」

「……僕は大丈夫です。有難う。あなた方のお陰です。僕には世界を救えなかったけれど、あなた方ならきっと。その為に僕は来るべき日に備えます。では、ご武運を」



 そう告げると光の粒となって弾けて消えてしまったわ。

 私達は呆気に取られて口を間抜けにあんぐりしながら、チヒロが居た場所を見つめていたわよ。



 スキルレベルが上がりました。

 空属性 LV,4 → 5

相談の結果封印を解くことにした三人。

現れたのは予想通りの少年。

彼はチヒロと名乗り勇者として召喚されたと言いましたが、全てを話す前に閃光を発して人が変わったような口調になりました。そして、彼らに世界を託し消えます。

あまりの話に呆然とする三人でした。

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