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002 ここはどこ

 瞼を閉じても色とりどりに点滅する光。

 赤や青や黄色やピンクや紫や緑や……様々な光が輝いては変わりゆくのを感じたの。

 コレ、もし目を開けていたらポキモンショックものよね。

 そんなことを考えていたら、光の点滅が終わったの。



「あ……」



 私が閉じた瞼をゆっくり開けたそこは、雄大な山々と遠くまで広がる草原だったわ。

 唐突に有り得ない景色を見たら、みんな目をぱちくりしちゃうもんでしょう?

 私も同じで思わず二度見しちゃった程よ。

 でも、私の見知ったメックの姿に変わることは無かったわ。

 パッと見で四千メートル級の切り立った山々に針葉樹の生えた森、青々と茂った草丈の長い草原。

 所々に散らばる様々な花の色。

 ……お酒の飲み過ぎとお馬鹿な会話のし過ぎで、遂に私の脳内にお花畑が咲いたのかしら。

 先程までの極寒から比べれば春の陽気の漂う気温と心地よい風に、プッツンして極楽へ逝っちゃった的予想をしてみるも、ほっぺを抓ると、ひゃだ!? ……痛い。

 とりあえず、おおよそ私達の知るメックの店内と違うことは言えるわね。

 あのメック独特のテロレー、テロレー、テロレー、テロレーってポテトの揚がる音なんてしないし、それどころか風の音がぴゅーぴゅー言ってるじゃない?


 軽く衝撃を受けたわ。

 あ、ごめんなさい。


 ……実は結構重かったと思う。



「……え、ちょっと、なんなの」



 私が辺りを見回すと二人の姿が有ったのだけど、背後にあるはずの扉は無かったわ。

 これって、もしかしなくても、戻れないってことかしら。

 内心の混乱は有るけど、この場をどう解釈するか情報があまりにも不足しているわ。

 ただ、一方で美し過ぎる景色に、私のアートなハートが震えているのも感じているけれど。



「ねぇ、ケリー、ガリ、見て」



 まだ眩しさに目を閉じた状態の二人に声を掛けて目を開けさせる。

 二人も驚いたように辺りを見回し始めたわ。



「キョーコ、ここ、何処?」

「知らないわよ、ガリ。私が知ってたら驚くわけないでしょう」

「ほ、北欧みたいだよぉ~」



 ケリーの呟く様な言葉に、確かにと思わず頷いてしまった私。

 そびえ立つ山々に美しい草原という景色。

 地形を見ているとU字溝みたいな連なりを見る限り、フィヨルドとかの氷河地形に見えるから、そういう場所なんでしょうけど。


 だからどうしたっていうのが正直な気持ちよね。


 あまりに唐突にこんな場所に来てしまって、これが夢なのか現実なのか疑う心も有るけれど、こっそり今度は手の甲を抓ってみれば痛いのよね。

 ……人間、あまりに非現実的な状況を目の当たりにすると思考が停止するものだけど、ここでは情報量の多さにパンクする勢いね。


 確かに旅行に行きたいとは言ったわよ。

 だからって突然何の準備もなくテレポートとか何なわけ?

 某組合系SNSじゃないんだから。


 え、そんなもの知らないですって?

 ……世の中知らなくても良い世界というものがあるわ。

 おネエさんは許す。



「ねぇ、どうやって帰ったら良いのかしら」



 ガリの言葉は私の言いたいことと同じよ。

 それを何故私に聞くのかしら。



「知らないわよ。メックが北欧だなんて、誰がパン屋に入ると言ったかしら」

「北欧は好きよ~。パン屋の方も好きよ~。でも、お家の方がもーっと好きよ~?」

「はいはい、ケリー。あんたはお家大好きっ子だったわよね」



 半ば感心する程能天気な返しに力なく笑う私。

 しかし、冷静に振り返ると、ここって私達には場違いなくらい爽やかな場所よね。

 誰が好きで3匹のおネエがスイスの山奥の草原でハ○ジごっこかしら。


 あら、ケリー、それにガリも、お股が立った!立った!……って言わせたいの?

 ……そんなおネエのキャッキャうふふを誰かがご所望だとして、何処のどなたの仕業かしら。


 それにしても、いつの間にメックはどこでもドアの開発を成功させたのかしら。

 どこでもドア付メックとか、誰得?


 

「ねぇ、ケリー、ガリ、貴方達聞いたことあるかしら? メックがどこでもドアを作っただなんて」

「そんなのあるわけないじゃないのよ~」

「そんな誰得サービスを宣伝しないメックなんて、ただのハンバーガー屋でしょ」

「そうよねぇ。……私も馬鹿な質問をしたと思うわぁ」



 こんなおバカ達に質問をした私を小一時間問い詰めたい気持ちになったけど、私負けない。

 でも、考えたところで説明には足りていない。


 戻るにはどうするって、まるでどこでもドアの様に連れてこられた私達は、それこそ魔法でもかけられた様な話でしょう?

 ここが地球上の何処かで有るとしても、全く知らない場所じゃ救助を呼べる様な状況じゃないし、そもそも遠い外国だとしたら言葉が通じるとも思えない。言葉の問題はともかくとしても、どんな場所か把握する事は必要だし、場合によっては自力で動く必要があるわ。

 だとしたら、呼びに行くために山を越える? アレを?

 改めて見上げる山並みは、とても素人がどうこう出来そうな感じじゃないわ。登山好きの義父ちちでも安全第一とか言って退散しそうな勾配よ?

 だとするとひたすら救助を待つか……だけど、いくら防寒バッチリな私達の服でも、冷え込み具合によってはねぇ……。眼下に見える景色にはそこそこ大きな針葉樹が群生しているのが見えるし、お花畑も見えてるから冬ではなさそうだけど、針葉樹以外は草原って辺りを見るに、そんなに高く成長できないって事よね。

 というか、こんな非現実的な状況の想定をしている私だけど、それこそ本当の意味で有り得ないあまり考えたくない路線が選択されていたとしたら、いわゆる「常識的選択」は何の意味もない。


 ……はぁ。


 ここまでおかしな状況を三人でボケをかましながら突っ立っているけど、体脂肪を絞りすぎて油の売りようがないガリがいるにも拘らず油を売っている始末だわ。ここにステータス表示なんかあったら、アホとかバカとかボケなんて出てるのかしら。


 その時、唐突に視界に青緑色の半透明の角丸四角が表示されたの。

 そこにはステータスとタイトルが出ていて、ゲームのウィンドウ風に何やら書かれているのよ。



 キョーコ 

 年齢 37 LV,1 職業:錬金術師

 HP120

 MP380

 LP10


 AT15

 DF11

 MA23

 MD36

 SP10

 LU50

 

 スキル

 錬金術 LV,1

 鑑定眼 LV,1

 画 力 LV,10

 調理術 LV,5

 裁 縫 LV,7

 工 芸 LV,8

 調 教 LV,9


 称号:おネエ



 目が飛び出るほど驚いたわ。

 ちょ、ちょっと、どういうこと!?

 目の中にウィンドウよ!?

 ウィンドウ始めました!?!

 何馬鹿正直にステータス表示しちゃってるのよ。

 私は思わず視界にあるウィンドウに触れようと手を伸ばしたけど、空を切ってしまったわ。


 

「キョーコ、何とち狂ってるの?」



 ガリが無神経に聞いてきたわ。

 でも、不思議と腹が立たないの!

 だって、こんな異常事態よ!

 称号がおネエなのよ!



「ねぇ、あんた達、騙されたと思ってステータスを表示しろって考えてみて」

「はぁ? 何言ってるの?」

「良いから、早くしろって言ってるのよ」

「わ、分かったわよ。もう……」



 そう言ってガリが黙ったのを見てケリーを見たら、ケリーが驚愕の表情を浮かべていたの。

 そう、やっぱり見えてしまったのね。アレが。



「ケリーも見えたのね」

「うん。見えたよ~。どうなってるの~。ステータスは兎も角~、称号がおネエって何って感じだよね~」

「あら、あなたも? 私もなのよぉ」

「……私、キショガリ」

「……」

「……」



 もの凄く暗く沈んでるガリを、思わず二人で背中に手を当てて慰めてしまったわ。

 ガリが落ち着いたところで3人のステータスを教えあったの。

 二人のステータスは以下の通りよ。



 ガリ

 年齢37 LV,1 職業:戦士

 HP300

 MP200

 LP15


 AT80

 DF30

 MA10

 MD20

 SP30

 LU30


 スキル

 剣 術 LV,8

 槍 術 LV,5

 武 術 LV,9

 馬 術 LV,5

 弓 術 LV,5

 裁 縫 LV,6

 調 理 LV,4

 大 工 Lv,8


 称号:キショガリ



 ケリー

 年齢35 LV,1 職業:料理人

 HP80

 MP420

 LP9


 AT30

 DF10

 MA10

 MD20

 SP12

 LU40


 スキル

 占 術 LV,9

 裁 縫 LV,8

 調 理 LV,9

 工 芸 LV,7

 金 融 LV,8

 美容術 LV,9


 称号:おネエ



 二人のステータスを聞いて、まず気になったのはLPかしら。

 LPって、某国民的RPG制作会社のゲームにあったアレと同じ意味なら、私達の死ぬまでの回数券ってところかしら?

 でも、それって死ぬような危険がここには有るってことよね。

 それに、短縮されて表示されていると思われる各種パラメータ。

 ATはアタック、DFはディフェンスは理解できるとして、MAとMDは何かしら?

 可能性としてはマジックアタックにマジックディフェンスかしら。

 SPはスピードだとしても、LUって何?


 あと、スキルってあるわよね。

 つまりスキルという形で私達の元の世界の能力が表現されているってことかしら。

 レベルの値がどの程度を表すのか分からないけれど、10刻みだとしたら10の画力はカンストしてる話になるわね。

 あらやだ、私の画力をそんなに素晴らしく評価してくれるなんて嬉しい。

 って、そこを掘り下げちゃ脱線しちゃうわ。テヘ。

 他のものも大体私が出来ることに関係しているけれど、あのレベル1のスキル二つは身に覚え無いわね。

 って、その前に。



「……これが出てくるってことは、ここ、ゲームの世界ってことかしら?」

「何言ってるのよキョーコ。どう見てもここはスイス的何かでしょう?」

「あら、でもガリも見たでしょう? どういうわけか新しい扉を開いちゃったでしょう?」

「ちょっと、そういう言い方やめてくれる? 新しい扉というよりは、メックの扉は古いでしょう?」

「え、そこ? そこ突いちゃう?」



 私とガリがそんな馬鹿な話をしていたら、ケリーが遠くの方を見ていたのよ。

 あらごめんなさい。

 そうよね。

 こんなバカな二人を見たら気が遠くなるわよね。


 でも、気になってケリーの見ている方へ目を向けたら、何かが近づいて来るのが見えたのよね。

三匹のお姉さんは達の前に現れたものは一体!?


それより、あのフライヤーの音は耳に残りますよね。

そして、このネタを書くとポテトが食べたくなりますよね? え、そんなのお前だけ?

ご、ごめんなさい。言ってみただけよ。(byキョーコ)


※話の中で出てくる北欧=パンというネタは北海道の方なら分かる地元ネタです。

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