022 魔人の駆け出しのおネエ
私はいつもの河原へ向かったわ。
滝壺から少し離れたところの川砂をさらって素材を集めていたの。
金、銀、鉄、銅、錫、ニッケル、チタン、アルミニウム、マグネシウム、クロム、プラチナ、タングステンといった私の世界で知っている金属の他に、ファンタジー世界の金属を幾つか試してみたの。
前者の私の世界に存在する金属類は大なり小なり存在することを確認出来たわ。次に後者の方は精霊銀とミスリル銀は存在することが分かっているから、他にアダマンタイト、オリハルコン、ヒヒイロカネを試してみたんだけど、アダマンタイトはレンガ一個分、オリハルコンは野球ボールサイズが有ったけれど、ヒヒイロカネは存在しないみたい。
で、ここからは合金の作成を試してみたの。
現代社会で高性能な金属といえば、飛行機にも使われるジュラルミンよね。
ジュラルミンのアタッシュケースとかお高いのが売られているものだけど、これで鎧とか作れたら絶対高耐久よね?……というわけで、結論から言えば作れました。実際の性能がどの程度の物かは分からないけど、ジュラルミンを生成することは出来たので、これを加工すれば色々な物を作ることは出来そうね。
ここでこの世界の技術であれば、私達の現代で困難な物も作れる可能性に思い当たったのだけれど、私の中で困難だけど便利だなと思うようなものがパッと思いつかなかったから、これはそのうち閃いたらにすることにしたわ。
素材を集め終えて、木で作った箱の中に素材を詰めたわ。
金属類では鉄が一番多く生成されるから、結構重たいのよね。鉄のインゴットは大量だから、それだけで一つの箱一杯になったのよ。私の力では持っていくことが出来ないので、パトラッシュに持って行って貰おうと思ったのだけど、箱に括り付けたロープじゃ弱くてブチッといっちゃったのよね。
どうしたものかと考えていた時に閃いたの。
カーボンファイバーでロープを作れば良いんじゃね?って。
金属を作ることばかりを考えていて炭素にまで頭が行っていなかったけれど、試しに石炭を回収してみたら結構大量に出たのよ。で、次にどうせ作るなら現代でも普及していないカーボンナノチューブファイバーで編んだ綱を作れないか試してみたの。これも結論から言えば出来上がったわ。思ったよりしなやかな割りに強いの。下手なナイフでは全く歯が立たないって意味ではチート素材よね。しかもとっても軽いし。
パトラッシュも今度はブチッと切れずに持って行けたわ。一応首の周りに当たるところは綿の当て布をしてあげたから食い込まない様に配慮しているのよ。
荷物運びが上手く行きそうなので、調子に乗って山の麓に手を当てて石炭を収集してみたわ。
意外に集まったから、石炭ストーブとか作ったらよさそうね。
そんなこんなで作業していたらあっという間に三時よ。
三時のおやつとして小さな編み籠の中に入れてきた木の実を、適当な座りの良さそうな石の上に腰かけて食べたわ。大きさは500円玉大の赤くて丸い実で、味は枇杷の様な味わい。種は苺の種みたいな感じでプチプチとした食感も楽しめるの。この世界の果物としては割とヒットよ。
ちなみに名前はマーベリンっていうそうよ。
ぽかぽか陽気の中、食べ終えたところで魔法について考えてみることにしたの。
私は滝壺周辺にやってきたわ。
ちなみに現在の私のステータスはこんなところよ。
キョーコ
年齢 37 LV,18 職業:錬金術師
HP990/990(660UP)
MP1930/1940(620UP)
LP10/10
AT36→69(33UP)
DF32→65(33UP)
MA268→928(660UP)
MD246→836(590UP)
SP45→100(55UP)
LU111→215(104UP)
スキル
錬金術 LV,7
鑑定眼 LV,6
画 力 LV,10
調理術 LV,5
裁 縫 LV,7
工 芸 LV,8
調 教 LV,9
集 中 Lv,8
上魔法 LV,5
水属性 LV,8
土属性 LV,7
火属性 LV,6
風属性 LV,2
称号:魔法使いのおネエ
レベルが上がってHPもMPもかなりごっそり増えたんだけど、相変わらず実感は無いのよね。ただ、体力的に疲れにくくなってきた気はするし、重い物も昨日と比べたら軽く持ち上げられる様にはなったと思うわ。しかし、恐ろしく上がっているMAとMD……たぶん、魔法攻撃力と魔法防御については、どうなのかしら。確かに魔法攻撃力が上がっているからこそ、スピンアイスの命中率や破壊力は上がっている印象はあるんだけれど。
今日試す魔法は結界魔法よ。
昨日咄嗟に考えて作ったトラップ魔法は、範囲を指定してイメージを描いて、魔法の発動に条件を付したもの。ワンちゃんに使ったのは、スパイク状の突起を隆起させる土魔法「逆ツララ」と、それを範囲指定した「ツララフィールド」、更に逆ツララが吹っ飛んで行く「ツララミサイル」の三連コンボの他、「自動隆起ヌリカベ」ね。
範囲指定して侵入するものを攻撃するという条件付けを行って、それに伴って発動する魔法を指定する。これが私の作ったフィールドトラップ魔法の形式なのだけれど、これを応用すれば特定の属性で防御するシールド魔法というものが作れるのではないかしら。
でも、今回やろうとしているものはそこじゃないのよね。
魔法には属性ごとのスキルが設定されているってことは、現在持っているものの他の属性が存在する可能性が有るわよね。俗にいう四大属性の他の属性といえば、光や闇や聖や邪といったものかしら。あとは空間や時間に関係したものとかも有りそうよね。たぶん、これらのある種基本以外の属性というのはイメージし難いものだから普通の発想ではダメそうよね。
ただし、私みたいな現代人ならばイメージできるものがあるわ。
例えば、光。
私は人差し指の先がライトの様に光るイメージを描いてみたわ。
そうしたら、薄っすらと白く光ったの。
新たなスキルを獲得しました。
光属性 LV,1
来た!……やっぱり有るのね。
これが有るということは、こっちもある筈よね。
私は人差し指の詰めの先に光が吸い込まれていくイメージを思い描いたわ。すると、爪の先に現れた闇が急速に光と共に空間を飲み込んで行き始めたの。同時に物凄い勢いで私の中からMPが失われていく感覚が起こったわ。びっくりして直ぐに解除したけれど、ステータスを見たらMPが半分くらい持ってかれていたの。
新たなスキルを獲得しました。
闇属性 LV,1
何だったのかしら。
闇の力は光なんて比較にならないくらいデカい力なのかしら。……なんていうか、あれはまるでブラックホールよね。確かに私が思い浮かべる光を吸い込むものと言ったらブラックホールだったから、それがそのまま再現された為にあれだけのMPを持っていかれたってことかも知れないけれど。……それにしたって非常識な出力よね。まるでたがが外れた様な。
気を取り直して次行ってみようかしら。
聖なるイメージってどんなものかしらね。
邪悪なものを寄せ付けないっていう意味で言えば、ダークウルフとか敵意ある魔物を排除するイメージかしら。あとは、アンデッドとか悪魔みたいな存在を近づけない様な。総合すると、闇の魔物や悪意を持つ者や亡者から守るってことね。であれば、滝壺中心から半径5mの範囲を清浄な空間にしてしまう感じで行こうかしら。
私は滝壺周囲を中心にドーム型のフィールドを作るイメージを描いて、その結界にいる者へ害意ある者や死して立ち上がる存在から保護するという条件を付して形成する様に集中してみたの。その途端、滝壺周辺にサークル状の白い光が走って、それがドーム状に覆っていく様に立ち上っていったわ。そして、頂点に集まった瞬間に閃光を発して光が消えたの。……あまりの輝きに思わず目を閉じてしまったんだけれど、再び開けたそこにはダイヤモンドダストの様にキラキラと光の粒が輝いているのが見えたわ。
私は恐る恐るフィールドの中に足を入れたんだけれど、入った瞬間に空気の感じが変わったのよ。
どう言い表せばいいのか分からないけれども、静寂というか、妙な落ち着きのある空間というか。
新たなスキルを獲得しました。
聖属性 LV,1
あー、やっぱり有るんだ。
ここまで来たなら、邪もあるって事よね。
一先ずフィールドから出たんだけれど、このフィールドっていつまで持つのかしらね。
MPは100程削られていたから、それなりに消費しているけれど、レベル1じゃ長くはもたなそうじゃない?
さて、邪のイメージに取り掛かるけれど、こんなもの何に使えるのかしらって疑問が先に来ちゃったのよね。邪悪な物って聖の反対で悪意だとか死に関わるものだと思うの。とりあえず、足元に生えている草を見つめてみたの。
この草を枯らせるイメージを描くとして、生命力を刈り取る様な感じかしら。死神の鎌で命を刈り取る様な感覚で集中してみたら、実際に暗い鎌が目の前の草を刈り取る様に一閃されたわ。そうしたら、実際には切られていないにも拘らず、見る見るうちに萎れて黒く変色して灰になってしまったの。
こ、こわ!?
でも、同時に私の体に力が入って来る感覚が有ったわ。つまり、草から得た生命力が私の中に入ってきたってことよね。ステータスを見てみたらMPが50くらい回復しているのが見て取れたから、MPに変換されたのか、HPの回復効果もあったけれど消耗していないから変化が分からなかったか。
いずれにせよ「死神の鎌」が動いたってことよね。
新たなスキルを獲得しました。
邪属性 LV,1
称号が変わりました。
魔法使いのおネエ → 魔人の駆け出しのおネエ
……なんか余計なものが来たわよ。
邪属性は分かるけれど、称号が変わったのはどういうわけ?
せめて賢者とかそういう綺麗な印象の言葉は選べないのかしら。いや、賢者のおネエってのもなんだかおかしいとは思うけれど、魔人の駆け出しのおネエって中途半端な割りにイカニモ感あるじゃない。
調子に乗って頑張り過ぎたかしら。
まぁ、今日の所はこの辺で切り上げておいた方が良いわね。
私は大声でパトラッシュを呼んだわ。
その辺を遊び歩いているパトラッシュも今日はしっかりとやって来てくれたの。
私は彼の背に跨って家路についたわ。
沢山の素材を収集し始めたキョーコさん。
思いつく限りの属性をマスターしたら魔人の駆け出しのおネエになってしまいました。
そもそも称号に何の意味があるのかと思いつつも研究に励みます。




