001 はじまり
ようこそおネエとの戯れの場へ。
こんな奴らと付き合ってられるぜ!……という生暖かい目の方が集ってくれると、きっとおネエさん達も嬉しい(はず)です。
おネエ達の旅をまったりご覧ください。
第1話「はじまり」
それは私がススキノを歩いていた時だったわ。
いつも一緒に飲みに出かけているケンとガリと歩きながら話していたの。
時間は夜の三時くらいだったかしら。
冬だからめっちゃ寒くてやってられないけど、お店も閉店しちゃったし、仕方なく帰り道を歩いていたのよね。
え、私?
私の名前はキヨシよ。
12月25日生まれだからキヨシですって。安直よねぇ。
でも、こっちの世界ではキョーコって呼ばれてるの。
身長180センチ、体重68キロのスレンダーボディ。
髪は短くソフモヒで、目は二重で切れ長睫毛ばっちりちゃん。
服は黒いジャケットに皮のパンツを履いて、黒のトレンチを着ているから、見る人によってはホストっぽいかしら。
あ、こんな時期だから、服の下は保温効果の高いタイツとか下着をしっかり着込んでいるわよ!
そんな格好の私の週末は、お店で店子しながら飲んだくれの生活よぉ。
良いでしょう?
年は、……ひ・み・つ・よ♪
「ねぇキョーコ、ちょっと聞いてる? ケン酷くない?」
「ん、あら、ごめんなさーい。何の話?」
「え、あんた聞いてなかったの?気ぃ悪いわぁ。ケンがさ、あたしのこのカバンをダサいっていうのよ!折角この前入ったボーナスで奮発して買ったっていうのに」
ガリはそういってショルダーバッグを私に見せてくるの。
ガリは本名はタケシだけど、通称ガリなの。
身長172センチで体重50キロくらいだったかしら。
髪はブロンドのボブのズラを付けてるのよ。
……正直ズラが無い方が男前で良い顔しているのに、何をとち狂ってアレなのかしら。
あ、……そこに触れると、私も人のこと言えないわね。
ウフフ。
あの子、昔からストイックなところがあって、絞るにいいだけ絞ってるから体脂肪一桁自慢のおネエなのよ? 誰得よね?
だからというか、こういう子の事を私達の界隈では「キショガリ」とかカテゴライズしちゃうのよ。そこから短縮してガリよ。
……最初はあの子も抵抗していたんだけど、押しに弱いというか、結局自分でその呼ばれ方に慣れちゃった様ね。
昔は剣道だか柔道だかやっていて、有段者だったかしら。
見た目厳ついのを化粧で何とか可愛く見せている、それはまぁ残念なイケメンの37歳よ。
彼の最近の仕事は警備会社関係だったかしら。
……そのわりに羽振りが良いのよねぇ。
話に聞く範囲には副業を色々とやっているらしいけれど。
あ、そうそう、それで、そんな彼が持ってる話題のバッグだけど、紫のエナメルっぽい光沢のあるバッグなの。ネオンの光を浴びてとってもあやしくピカピカに光ってるのよ?
あの子が着ている服装は、白いファーコートに象の足かと思うような白いブーツ。
服装の方は体形がガリだから着太りして丁度良い感じなのは分かるんだけれど、あのバッグは合わないわねぇ。
あ!?
でも、キモ可愛い路線を狙っているのかしら?
……それでもハズレよねぇ。
「あら、良いわねぇ。あんたのキモ可愛さにピッタリじゃない?」
「ちょっとー、キモ可愛いってなにさー!」
「え、それ狙って買ったんでしょう? そもそもいくらしたのよぉ」
「狙ってって、いくらあたしがいつもガリってあだ名付けられていると言ってもねぇ、キショガリを狙ったことは無いのよ!」
「あー、はいはい。で、いくらだったの?」
「30万」
思わず口がポカンと空いちゃったわ。
あらやだ、無様よねぇ。
「……それに? 本当に? 30万?」
「そうよ。悪いかしら?」
「悪いっていうか……感心するわ。私には真似出来ないわぁ。お金持ちって羨ましぃ」
「ちょ、あんたも馬鹿にするの!?」
「いえいえ、馬鹿にはしていないわよ。いっそ感動的な程だわ。ねぇ、ケン?」
「ケンって呼ばないでよ~。ケリーって呼ばないと、あんたのことキョンシーにするわよ~?」
ケンことケリーは身長は165センチと小柄な可愛い前髪系で売ってる35歳。
色白で二重で目がパッチリしていて小顔、全体的に色素が薄いのよね。
服装はネイビーのダッフルにカーキのパンツね。
コートの中は、ターコイズのタートルネックのセーターを着ているわ。
趣味でアクセサリーとか自作してるんだけど、結構センスは良いのよこの子。
私もたまに一緒に作るんだけど、なかなか器用なのよぉ。
まぁ、この世界の男は器用な子が多い方かしら。
この子、色々な仕事をしている様だけど、どれが本業か謎の子なのよね。
キャラ的には割とあざといというか、無駄に若作りだから可愛い系で売れるのよねぇ。
色々な意味で魔性の男よ。ほんと。
「あらごめんなさい。ケリーもガリのこと感動しちゃったから、思わず毒を吐いたんでしょう? わかるわぁ」
「そーそー。ガリの目の付け所には毎度驚かされるよ~。こんなバッグに30万よ~? 有り得ないよ~」
「こんなですってー! もーーー! これだから貧乏人は見る目も貧しいのね」
「ウフフ、私はそのバッグにそのお値段使うくらいなら、旅行にでも出かける勢いよねぇ」
「あー、それ分かるよ~。北欧とかスイスなんて行ってみたいもんよ~」
ケリーと一緒に意気投合な感じでキャッキャしていたら、ガリがとってもツンツンとした眼差し。
だけどこれもいつものことよ。
ほんと、いつものこと。
「もー、そんなにツンツンしないでガリったらぁ。そこのメックでコーヒーでも飲みましょう」
「あー、寒いから賛成よ~!」
「……あたしは許したわけじゃないんだからね!」
そんなところで無駄にツンデレセリフ吐いてどうしろっていうのかしら。
私達三人はメックの扉の前に立ったわ。
こんな時間にやってるカフェなんて、この辺にはメックかせいぜいネカフェくらいでしょう?
だからというか、座ってまったりお話しするとなったら、この24時間開いているメックが必然的に選ばれるのよね。
自動扉が開いたので入ったわ。
その瞬間、眩しい閃光が飛び込んできて視界を奪われたの。
「ひゃだ、ちょっと!眩しい!なんなのこれ!」
あまりの眩しさに私は瞼を閉じていたわ。
眩しい光の先は?
※3人の一人称や口調の傾向
キョーコ 私 マイペースお姉
ガ リ あたし 稀に素に戻る
ケリー 私 語尾伸びーる
……基本的にはアホなことやっている物語だと思います。
1話の文字数は2500前後が多いと思いますが、たまに大増量してます。