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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第III章 グレイズの三匹
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090 祝勝会 後編

祝勝会編続きです。

 彼女が作っていたのはスープ料理の様ね。

 ちょっと味見をしてみたんだけれど、これがまた有り得ないぐらいに薄いのよ。

 どうしたらこんな薄味が美味しいと思えるのかしら。

 そもそも素材の良いところが全く無いじゃないの。

 具も少ないし、調味料らしきものも使っているのかしら。

 あぁ、言い出したら切りが無いから、私は黙々と使えそうなものを用意して調理を始めたわ。

 スープには出汁が足りないから、念話でパトラッシュに豚肉とハーブをガレージから持ってくる様に伝えて持ってきてもらったわ。あと、鶏肉も出してもらって、野菜と鶏肉を串に刺して塩とハーブで塗して焼き鳥にしたり、デザートにブタ油から作ったゼラチンを使用して先程のベリーっぽい味のフルーツを潰して作ったゼリーを用意したわ。


 調理に要した時間は一時間程かしら。

 その間は上では私が用意したハーブティが振る舞われて、少し落ち着いていたわね。

 そこに少女達に料理を運ばせていく。

 ついでに彼女らの分の席も用意させて一緒に食べてもらうことにしたわ。

 全部の用意ができた頃に私も厨房を出て自分の席に戻ったの。

 私は自分の席で立って一同に話しかけたわ。



「お待たせしました。皆さんの前にしっかりと料理が回ったものと思います。さぁ、改めて祝勝記念の宴として料理をご賞味ください。頂きます」



 今度もみんなで頂きますの唱和の後、まずは目前に置かれたスープをスプーンで掬って食べるという姿が見られたわ。そうしたら、あまり期待していなかったって感じの表情が目を丸くしているのよ。最初は半信半疑の一口だったのが、二口三口と進んでにんまりとうんうん頷いている。


 私も自分で作ったスープを飲んだわ。


 私の作ったスープはポトフっぽいものだけれど、ある物で作った割には良い感じの出汁加減と塩加減になったと思うわ。ハーブで肉の臭みは良い感じに消えているし、野菜の味もしっかり溶け込んでいて私好みの美味しさね。

 さて、肝心の先程の生ご(略)を美味しいと言い切った少女一家だけれど、彼女らも口に運ぶスピードが速いわね。これは美味しいって反応と見て間違いなさそうかしら。


 焼き鳥の方も良い塩加減にこんがり焼けた香ばしさとハーブの匂い消しが上手くいっているわ。

 ブタ串を用意して室蘭焼き鳥風とかも有りだとは思うけれど、残念ながら和辛子が無いと物足りないのよね。だから今回は断念。


 え、室蘭焼き鳥を知らないですって?


 北海道には室蘭焼き鳥という名の豚串が有るのよ。

 豚と玉ねぎを交互に串に刺して焼き鳥のように焼くのだけれど、タレまたは塩胡椒で焼いた後、和辛子で頂くと辛子の辛さより甘みを感じてとっても美味しいの。ご家庭でも豚ロースとか塊肉を食べ易い大きさに切って、玉ねぎと交互に刺して焼けば簡単に作れるわ。


 食後には先程のゼリーを用意してあるわ。

 ゼリーは箱の中に空間結界張って魔石で冷気を出す簡易冷蔵庫で冷やしているから、しっかりキンキンに冷えていて美味しく出来ていたわ。ゼリー独特のぷるるんとした食感には戸惑っている人もいたけれど、味は良かったようで最終的には全員完食したわ。


 こうして皆さん満腹になったところで、また私は自分の席を立って私達の席とは別のテーブルに座る少女一家を見たわ。



「如何でしたか? 私の料理は」



 私の問いかけに、お兄ちゃんは何とも言えない敗北感の様な顔を浮かべているわね。

 そこに少女が口を開いたわ。彼女の視線は私をキッと睨んでいるのよ。

 なんでそうなるのかしら。



「とても美味しかったです。ですが、これほどの味を用意するにはどれほどの費用が必要となるかと思うと、残念ながら私達のお店では提供出来ないと思います」

「え」



 私は彼女の言葉に耳を疑ったわ。

 この味を用意する費用が馬鹿にならないですって?

 ……私が使ったものはこの世界にある物で、このグレイズでも入手可能な物の中で用意したのよ? それが用意できないって、よほどの貧乏か、それとも……?



「ねぇ、一つ聞きたいんだけれど、お酒や飲み物に水を加えた理由も、もしかしてそういうこと?」

「はい」



 彼女は鋭い眼差しを変える事なく私に返してきたわ。



「そんなに調達価格って上がってるの?」

「はい。ここ最近は特に。父が亡くなり、そこに追い打ちを掛けるように仕入れ値が上がり、私達は料理の味を維持することも出来なければ、価格を維持することも厳しくなりました。価格を上げれば客は離れますし、味を維持しようものなら価格を上げなくてはいけません」

「クレア、もういい」

「お兄ちゃん!」

「……お客さんの言うとおり、俺は父の味すら満足に受け継ぐことも出来ず厨房に立っていた。だから、俺の未熟さが招いた結果だ。お客さんが作った料理の方が正直俺なんかよりずっと旨かった。これが差なんだよ」



 歯を食いしばるようにして座るお兄さんの姿を見ていると、なんだか私が彼らを苛めているような錯覚に陥るけれど、それとこれは別よね。

 はぁ、何でこうなるのかしら。

 祝勝記念会がまるでお通夜よ。



「分かった。貴方に料理を指導してあげる。乗りかかった船ですもの、異論は許さない。良いですね」

「え……」



 少女がどうしてそうなったという戸惑いの表情を見せる。

 彼女ら一家が唐突な提案に面食らってる様子だけど、私は有無を言わせぬ勢いで迫ったわ。



「良いですね?」

「……はい」



 こうして私はこの店を指導するという新たな問題との格闘を始めたわ。

 まぁ、ポプリ村の商品は売りきっちゃったから良いわよね?

 横目にシャインやアレンやライルを見ると、口をぽかーんと開けて見てるのよ。

 その視線が「あんた何を言ってんの?」って問うている様で痛いわねぇ。

 でも、宣言しちゃったし、やっぱりやめたって言うのも変でしょう?

 周囲の人達の空気はというと、何故かうんうん頷いている人が居たりと肯定的なのよね。

 何はともあれ、この夜はこの様な結果で終わったわ。


 翌日私はシャインとお兄ちゃんの仕入れに同行したわ。

 シャインにうちの馬車を出してもらって市場に行ってきたのよ。

 お兄ちゃんの名前はサイノスって言うそうなの。髪はライトブラウンの髪を刈りこんでいて青い瞳がとっても綺麗なの。今年で20歳だそうよ。ちなみにこの世界の誕生日の概念は毎年の生まれ月の一日に祝うとういものだそうよ。だから毎月一日は教会で誕生祭という祭事が行われるそうなの。


 市場はグレイズの港の中央にあるのよ。

 毎日の水揚げがある魚介類の他に、干し肉とかも沢山出荷されているほかに、冷凍肉という魔法で凍らせた肉も出回っているのね。これにはちょっと驚いたわ。

 確かに魔法がある世界なんだもの、そうしたものが有ってもおかしくは無いんだけれど、これまた結構なお値段で少女……クレアちゃんっていうんだけれど、彼女が言っていた話も嘘じゃないみたいね。


 市場では野菜も沢山並んでいたから、私も色々と買ってみたわ。そして、香辛料や調味料の取引に向かったんだけれど、それらの取引が殆ど買い占められていて無いのよ。



「何もないわね」



私の問いかけに、サイノス君は俯き加減に元気無く答えたわ。



「……商業ギルドのオームラ会頭が亡くなってからです。カーン商会がほぼ香辛料や砂糖は独占している状況で、俺達が買うにはカーン商会から高額で買う他に道が無くなってしまったんです」

「……成る程。でも、独占出来るほどに入手ルートって限られるの?」

「冒険者に依頼して調達してしのいでいる店も有ります。しかし、うちはそんな伝手は無かったので。オームラ会頭がいらっしゃった頃は、うちの店も贔屓にして下さって色々と父は便宜を図って頂いたこともあったと思いますが、そうした伝手が消えた今は全くの手詰まりです」

「そうなの。ハーブは調達できると思うけれど、それ以外の物の入手は何とかしたいですよねぇ」



 この日は魚と野菜を購入して帰ったわ。

 とはいえ、別に指をくわえて待ったり、尻尾を巻いて逃げる気は無いのよ?

 手詰まりといっても、打開策は有るはずよ。

 ヒントは彼の話の中にあるはずだもの。

こうして料理屋を手伝う事にしたキョーコ。

市場価格の高騰にはキョーコも手が付けられない様子。

さて、どうするのか。

続きます。

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