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009 アレ

怒涛の一日3話目投下。

「じゃぁ、私は水を汲んでくるわ。丁度あっちに滝っぽいのが見えるから、あそこに向かえば水くらい汲めると思うのよ」



 そう言って私はケリーに山の方を指し示したわ。

 いつもニコニコ笑顔の彼は、そちらを見て頷く。



「うん、お願いするよ~。解体にも水が必要だから無いと困るんだよね~」

「分かってるわよ。行ってくるわ」

「主、我の背に乗れ」

「へ?」



 私が向かおうとしたらパトラッシュがそんなことを言ってきたの。

 確かにパトラッシュはデカすぎるボディよ。

 体長は2メートル半くらいあるし。でも、私が乗っても大丈夫かしら。



「遠慮なく乗るがいい。我の背にしっかりとしがみ付いていなければ落ちてしまうやも知れぬ」

「……そ、そうなの。分かったわ。お言葉に甘えて乗せてもらうわね」



 私はパトラッシュに乗っかったわ。

 最初は跨る様に背に乗って、それから毛にしがみ付く様に伏せた感じかしら。

 パトラッシュは私が乗ったのを確認すると、ゆっくり歩き始めたわ。

 最初は静かに私が落ちないように気を付けながら走っていたのだけど、それが徐々に早くなって、最終的には風の様に進み始めたの。それはもう言葉にならないというか、口を開いたら振動で舌を絶対噛む自信が有ったし、スピードが速くなって風圧を感じ始めたら目なんて開けていられないくらいよ。というか、呼吸もやばい。オープンカーでもこんな状況にはならないでしょうね。仮に同じ状況を再現するなら、ボンネットに縛り付けられてかぜになるお笑い芸人の状況かしら。


 もう必死。

 本当に必死だったわ。



「主、着いたぞ」

「へ?」



 そう言われて目を開けたら、確かに滝壺っぽいところに到着していたの。

 流れてくる水が滝壺で水しぶきを上げて霧を出しているのよ。綺麗ね〜~。

 地球ならマイナスイオンがどうのこうの言ったりしたもんだけれど、そんなもの関係なくこういうところは心が洗われるような場所よね。



「ありがとう。でも、どうしましょう。水を持ちながら帰る気で鍋を持ってきたけど、鍋に入る水なんてたかが知れてるわよね。あら困ったわ」

「主、我が往復する。大きな器を作ってくれれば良い」

「なるほど……ちょっと待ってて」



 私は川の水辺の砂に着目したわ。

 程よく砕かれた砂地なら、もしかしたらと思って水の中に手を入れてみたの。



「冷た!雪解け水ね」



 ふと、雪解け水と言った自分の言葉を考えてしまったわ。

 なんで気付かなかったのかしら。

 私は水面すれすれに手を上げたの。



「これで……どうよ!」



 ピキピキピキピキ……という音がしたかと思うと、私の周囲の水が凍って四角い氷の塊が出来たわ。

 やっぱりそうなのね。

 ただ状態を氷に変えるだけなら錬金の負荷も小さいんじゃないかと思ったのよ。

 念のためにステータスを見たら、消費したのはMP1だけ。

 良かった。

 私はその後、パトラッシュが持っていける形状を聞いて作った大きな板氷を作って、それを持って行って貰ったわ。

 パトラッシュが駆けていった後を、私もゆっくりと土鍋に入れた最初に作った氷柱を持って歩いたの。

 川は滝つぼから小さな流れを作っていて、遥か遠く向こうに走っているのが見えたわ。たぶん、あっちに進めば下流域のどこかに通じているんじゃないかしら。


 氷は結構重たいのよ?

 それに、土鍋に入れていて直接触れているわけじゃないから、私の手が冷たいとかはないのだけど、それ自体から吹き出す冷気がやばい感じ。……こんだけ冷えると冷蔵庫が作れそうね。


 あ!……そうよ。それよ。

 冷蔵庫が要るじゃないの!

 戻ったら早速作らなきゃ。



「キョーコちゃんお帰り~。あなたのわんこが持ってきた氷はそこの切り株に置いたわよ~」



 ケリーがそう言って切り株の方を指し示したわ。

 確かに切り株の上に乗る板氷がドーンと有ったけど、その一部が切り取られていたの。

 ケリーの方を見ると、サラダボウルの中に切り取られた氷が入っていたわ。



「早速切り取って使ってるのね」

「うん。でも、板氷を錬金して運ぶってのはグッドアイディアだと思うけど、その後のことは全く丸無視だと思うのよ~」

「あぁ、うーんそうねぇ。ちょっと待ってね。水甕みずがめが必要よね。作るわ」



 そう言って私は土鍋をほかの切り株に置くと、パトラッシュに跨って連れて行って貰ったわ。

 私の錬金で作った砂山に戻ると、そこで大きなかめを作ったの。

 それをパトラッシュにまずは運んでもらって、次に幾つか鍋も用意してみたわ。

 寸胴鍋やフライパンっぽいのから色々。そして、それを運ぶためのトレーも用意してその中に調理鍋を入れて、パトラッシュに持って行ってもらったの。

 パトラッシュは頭の上に乗せて器用に運んでいくのよ。

 それがなんとも言えない滑稽というか、不思議な光景なのよ。


 色々と作っていたら、だいぶ砂山が小さくなったわ。

 あとは何を作ろうかしらと考えていた時、ふと思いついたのよ。

 私は砂山に手をついてイメージしたわ。私達の世界の生活では欠かせないアレよ。

 折角だから、昔CMでリビングで使ってはいけないで出てたアレが良いかしら。

 ……そうして出来上がったアレ。


 うん、我ながら素晴らしい出来だと思うわ。

 んふふふん。


 ……と思ったら、作ったは良いけどパトラッシュが運べるのかしらと思って青ざめた私。いや、全く考えてなかったのは盲点だけど、絶対みんなも喜ぶと思うのよ。でも、これを一人で持ち上げるのは流石に無理。

 そう思っていたら、パトラッシュが荷物を置いて戻ってきたわ。



「主、それで最後か?」

「え、ええ。そうよ。持っていける?」

「造作もない」

「へ!?」



 パトラッシュはいとも簡単に鼻先でひょいっと持ち上げて飛ばすと、うまい具合に頭でキャッチしたの。

 いや、痛くないのかしら。



「だ、大丈夫? パトラッシュ。痛くないの?」

「問題無い」

「そ、そう。じゃぁ、お願いするわ」



 私が頼むとブルンブルンとしっぽを振り回しながら歩いて行ったわ。

 とっても機嫌が良いのがしっぽの振りから分かるけど、やってることは凄いわねぇ。

 持つべきものは、犬ね。



 ごめんなさい。……実は私、猫派だけど。

アレは一体何なのか?


そして、こっそり猫派を告白するキョーコさんなのでした。

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