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十六夜  作者: 桜騎
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始まりは~妹は~

 今回の話は妹編です。十六夜も姉として出てきます。

 「おはようございます、お母さん」

私は台所で料理をしているお母さんに挨拶をした。

「ああ、おはよう、幸姫」

お母さんはいつもの優しい笑顔で応えてくれた。私の一日はそこから始まる。

 私はいつも、家中を回って家族に挨拶をする。一番最後になるのは…いつも十六夜姉さんだ。

「…おはようございます、十六夜姉さん!」

私はひきつる顔を何とか笑顔に変え、挨拶をする。

「…」

なぜ、私がお父さんの方へ遠回りして十六夜姉さんを後にするのか。それは、なぜかいつも返事をもらえないから。気のせいか、少し睨まれているような気がする。

 十六夜姉さんは、毎朝地域を回って挨拶していて、すごいと思う。だけど、私は十六夜姉さんが嫌いだった。

「…っ」

私は姉妹の間にある長く思い沈黙に耐えられなくなって、一礼して走り去った。十六夜姉さんとは話さないから、いつも何を考えているのかわからなかった。

 そんな感じの毎日を、私は過ごした。

 そんな毎日をしばらく繰り返したその日、お母さんに十六夜姉さんを呼んで来いと言われた。正直いやだったけど、私は涙をこらえながら十六夜姉さんのいる場所へむかった。

「あの、十六夜姉さん…」

十六夜姉さんはウザそうに振り返った。

「…何?」

「あ、の、お母さんが呼んでます…」

私は十六夜姉さんの顔色を窺った。

「あ、そ」

十六夜姉さんは無言で私についてきた。私も無言で歩く。私はいつも、この沈黙に耐えられなかった。

 十六夜姉さんは急にため息をついた。

「嫌いなら嫌いと言えばいいのに…」

「…え?」

十六夜姉さんはハッとして目を伏せた。

「べつに…」

私はその意味について考える。外で何かあったのだろうか。しかし、そんなことをのんびり考える暇もなく、お母さんがいる部屋まで来てしまった。

 「それでは、失礼します…」

私は部屋まで送り届けた安心で、油断していた。まさか、真の目的がべつにあったなんて…。

「幸姫、待ちなさい」

「っは、はい」

「ここに十六夜を呼んだのはあなたの事に関してですよ。十六夜は忙しいのですから、あまり時間を取らないで」

私は向き直った。十六夜姉さんが眉根を寄せたのがわかった。

「はい。ごめんなさい…」

そしてお母さんはさっと立ち上がり、手を洗ったりまな板を出したりした。どうやらそんなに真剣な話ではないらしい。十六夜姉さんはそんなお母さんを見て、さらに眉間のしわを濃くさせた。

「十六夜にお願いがあります。幸姫を朝の挨拶に連れて回りなさい」

それはもう、お願いというよりも命令のような…。

「え?」

十六夜姉さんの顔は、もう黒かった。これには、お母さんに反抗と思われるよりも、私が震え上がることの方が大きかった。

「連れて行ってください」

十六夜姉さんは信じられないというふうにお母さんを見ていた。まあ、私は想像できていたけど。

「できますか?」

お母さんはそんな十六夜姉さんの表情に気付かずにそう訊いた。お母さんの頼みでは、断るわけにはいかず…。

「…はい」

十六夜姉さんはしぶしぶうなずいた。

「ありがとう。幸姫は十六夜に従うこと。良いですね?」

「…はい」

私もしぶしぶうなずいた。


 次の日、私は十六夜姉さん従って一緒に歩いた。

 十六夜姉さんと一緒に挨拶する。隣にいるともっとよくわかるけど、十六夜姉さんは本当にすごいと思う。だって、みんなと笑顔で接するのだ。少し嫌な事されても笑顔を崩さないし、会話も長く続く。表情を崩すのは家だけかもって思うくらい。

 私も、そんなふうになりたかった。そんなふうに、みんなと笑顔で。

 私は目の端にとらえた家に向かう。十六夜姉さんはちょうど今、近所の人と話していて私には目もくれなかった。

「こんにちは~」

私は小さい声で言いながらその家の敷地内に入った。その時、ワンワンと吠える犬が私の足めがけてかみついてきた。その犬はかなり大きくて、3歳の足を動けなくするには十分だった。牙が、ずぶずぶと血を無視して食い込んでくる。

「い…痛い。い、たい…」

「幸姫!!」

その時、話を終えた十六夜姉さんがかけてきた。

 十六夜姉さんはその犬をさっと追い払うと、私をおぶった。十六夜姉さんが走ろうとした時、ザクザクと草を踏む音が聞こえた。

「おい、コタロー。どうしたんだよ、急に…」

それは、犬の飼い主だった。飼い主は私の足を見て青ざめた。

「まさか、その傷は、うちのコタローが…!?」

十六夜姉さんは即座に手を振って答えた。

「いえ、まさかとんでもない。転んだところに木の枝が落ちていただけですよ。妹が勝手に敷地内に入って申し訳ありませんでした」

十六夜姉さんは深く頭を下げた。


 私たちは家に帰って、すぐに足の手当をした。お母さんは玄関で出迎えてくれてて、私の足を見た途端、真っ青になって救急箱を取り出してきた。

 そして、一通りの手当を終えると、お母さんは十六夜姉さんを叱り始めた。

「何であんたは妹の面倒をちゃんと見ないの!?」

少なくとも、私にはいつも優しいお母さんが怒っているところを初めてみて、その勢いに負けて私は自分のせいだと名乗り上げることができなかった。

 私は、ただただそれを眺めて一日を終えた。別の言い方をすれば、それは十六夜姉さんが一日怒られたということだ。私は、その後の事を考えて身震いをした。

「きっと、十六夜姉さんは私をさらに睨んでくるんだろうなあ…」

私はそのバカなつらさを布団に丸め込めて眠りについた。

 こんにちは、桜騎です。今回は十六夜妹編でした。私は一番上なので、妹の視線で書くのは大変でした。

ところで、十六夜の事なんですが、「十六夜」はじゅうろくやではないですよ。「いざよい」ですよ。一応、書いておきました。次回、ついに一話の一番最初の意味がわかります!お楽しみに!

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