守護者
28年2月22日投稿。
1話 守護者
僕が1ヶ月拠点としていた、1層の南端の洞窟から扉まで歩くこと1時間が経過した。
「後10分てとこかな?それにしても、緑の小人は今日はまったく遭遇しないや。」
僕が魔物を狩ることで実感している事は2つある。
1つ目は、身体能力や魔法の発動時間がわずかだが伸びていること。
2つ目が、長剣の扱いが上手くなっていること。
実際、魔物を狩ることで慣れてるだけかもだけどね。
それでも、最初よりは圧倒的にマシだよね?
だって、最初は魔物を前に震えては剣もまともに振れかったんだしさ。
「やっぱり、いつ見てもこの扉はでかくて綺麗だよね。」
目の前には、僕の身長の3倍、大体6mはあり、細やかな装飾と明るい色合いの扉がポツンとある。
「さて、開けるかな。」
扉は、手が触れただけで開いていく。
そこは、真っ暗な空間だ。
でも、何かがいる。獣の臭いが濃くなっていく。
思考の停止は直ぐに解かれる。
壁に掛っている魔石が光、部屋の全貌が見えるようになる。
部屋の中心にいたのは、1匹の巨大な灰色の狼だ。
「これって・・・この狼を殺して上に登れってこと?」
狼は閉じていた目を開き唸り威嚇している。
僕は長剣を腰から抜いて、正眼の構えで警戒をする。
「『火矢は狼を射る』。」
『世界に干渉』して、火の矢を生み狼に向け放つ。
狼は、素早くかわして僕に向けて突進をして来ていた。
「早!?でも、まだ反応できるっ!!」
突進してきた狼を僕は横にずれて、抜き胴の形で剣を振るう。
だけど、狼はそれを後ろに下がる事で回避し、僕の長剣は空を切る。
「嘘!?これどうしよう・・・反応良すぎでしょー。」
「グルルル!!!」
狼は1回唸ると、さっきよりも素早く動き、僕の喉目がけて牙を剥けていた。
僕はそれを咄嗟に交わしたが、狼に右足を噛まれてしまった。
「うが!!コン畜生!!!」
狼が離す前に長剣を狼に突き刺す。
めちゃくちゃに突き刺したのが、狼の前右の足に刺さり狼が悲鳴のような声を上げる。
「これで、終りだ!!」
僕は長剣を、狼の首目がけて振るう。
スパン
狼は、足の痛みに一瞬の隙を見せた所、僕の剣によって首を刎ねられた。
その場には拳大の魔石と、牙と毛皮が残る。
“一層の守護者 グレイウルフの討伐確認しました。身体能力を上げます。次に装備、魔法発動母体『干渉の指輪』を授けます。最後に、『魔法の知識』として原始魔法『干渉』の知恵を授けます。”
声は響いた後、僕の体が熱に包まれ、力が溢れてくる。
凄いや・・・今なら、あの狼、グレイウルフをもう少し楽に殺せそうだ。
熱が引くと、僕の左手の人差し指に銀色の指輪が嵌っていた。
その後、『干渉』の知識が入ってくる。
アリーテルの貰った知恵の『世界干渉』と『自身干渉』の応用かな・・・
でも『自身干渉』ってイメージがわかなかったから、使ってなかったけど。
ふむ、そうか・・・身体の部分強化のことなのか。
「『腕よ強くなれ』。!!?凄い、長剣が軽く感じるや。でも、これを応用させて僕のイメージで『干渉』するのかな?」
僕は、目を閉じ想像する。
強くするためにはどうすればいいのか。
強くなった時の想像もする。
ん。この感じ何だろう?懐かしい・・・1ヶ月前に感じたのと同じだ。
これって、やっぱり失った記憶に関係してるのかな?
(クロク。)
ん?何だろう今の・・・
(フカク。)
やっぱり、何か聞こえる。黒く?深く?かな。
(ネヅケ。コレハイバラノケイヤク。コレハノロイ。ジシンヲシバルイバラノノロイ。)
「『黒く深く根付け』。わ!!?何これ!!」
僕の右腕全体に黒い茨の刺青が浮かんでいた。
っ!!?これ、は記憶?僕の?
僕の頭の中には、真っ黒な、いや。全身に黒の茨の刺青をした誰かが剣の一振りで魔物?や人みたいなのを大量に斬る姿が浮かんだ。それも鮮明に。
首無しの死体や、下半身と上半身がサヨナラした死体。まだ他にもたくさんある。
これ、この茨は僕の魔力を吸って成長する。それも一時間の中、僕が許可する限り。
その代わり、僕の身体能力を際限なしで上げてくれる。
これが、どんな理論や能力かも咄嗟に理解した。いや、記憶に無理やりさせられた。
この『干渉』を無理に使えば、僕は命を吸われるということも。
「これが、『僕の記憶』?なら、僕は一度『ルーンハーツ』に居たのかな・・・うーん分かんないや。」
そう、呟きながら奥に見える階段を上り二層に到着した。
そこは、山だった。正確には、巨大な幾つもの山に囲まれていた。
「えーと・・・なにここ?あっちは雪?で、紅葉、これは桜?でなんで、こっちは緑の葉なのかな?季節無茶苦茶過ぎないかな!!?」
僕を囲んでいる山はそれぞれ季節が異なる所になっていて、気温すらも北の雪山からは冷気が、南の夏の山からは、熱気が僕のいる盆地に入りこんでいる。
「取り合えず探索しなきゃね。多分山の向こうにはまた洞窟とかあるのかな?あればいいんだけど・・・あと、他の人探さなきゃ!」
こうして、ここ二層での探索が始まる。
どうもです‼
この章では、そんなに登場人物でてきません(  ̄▽ ̄)