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旧企画

LOST EDEN

作者: 秋月瑛

 轟音ごうおんと爆風に包まれながら、鋼の塔が崩れ落ちた。

「作戦は成功だ! このまま一気に敵を振り切って逃げるぞ!」

 レジスタンスのリーダー、紅髪こうはつのアベルが声を荒げた。

 帝國が所有するエネルギープラントへの攻撃作戦。まだこの地域には工場がいくつも存在しているが、たった1つだとしても帝國の象徴であるエネルギープラントを破壊したことは大きな意味を持つ。

 バベルの塔――貧困層の人々はそう呼んでいた。

 遙か天まで伸び、排出される煙で神の領域である空をも穢し、星の命を掘り起こし喰い尽くさんとする鋼の塔。その姿はまるで神に挑むかのごとく、剣を神の喉仏に突き付けんとしているようだった。

 ガスマスクの少年が叫び声をあげる。

「大変、敵来る。おれ殺される!」

 少しつたない口調。そう、彼は工場汚染の被害者なのだ。

「心配するな。エノクのことは俺が守る、だって仲間だろ!」

 アベルはガスマスクの少年――エノクのただれた手をつかんで自分のもとへ引き寄せた。

 敵が狙う第一の標的はレジスタンスのリーダーであるアベルだろう。だが、おそらくエノクのことも生かしては置かない。なぜなら内部から作戦の手引きをしたのが、他ならぬエノクだからだ。

 工場内部は毒素による汚染が酷く、ガスマスクをしていても、からだは徐々に犯され恐ろしい突然変異が起きる。それでも金のために工場で働かなければならない貧困層。

 エノクは工場で働いていた母が妊娠し、変異体としてこの世に生まれた。醜悪な顔と躰を持ち、知能の発達にも問題があるため、まともな職にも就けず、己に悲痛な運命を背負わせたこの工場で働くことを余儀なくされていた。

 しかし、アベルとの出会いでエノクの生きる道は大きく変わった。

 生活のために工場で働くよりも、彼は自分の運命と闘うことを決意したのだ。

 突然、大きな爆発が起き、地面が激しく揺れた。

 崩壊したエネルギープラントを指さしながら、頭に包帯を巻いたサブリーダーのカインが叫んだ。

「壊れた工場からガスが噴き出しています。風も強い、すぐにこの辺りも汚染されそうです」

 建物が崩壊したことにより、二次爆発が起きて毒素をはらんだガスが噴き出したのだ。

 これほどまでガスが噴き出すとは予想外であり、汚染による恐怖やさらなる被害拡大に、レジスタンスのメンバーたちも慌てふためいた。

 カインがアベルに助言する。

「あなたが凛とした態度を取っていれば問題ありません。すぐに迅速な退避命令を出してください」

 すぐにアベルは自らの襟首を掴み、そこに付けた小型通信機に呼びかける。

「我々が破壊したプラントから大量の毒ガスが噴出した。持ち場を放棄してすぐに風下から退避しろ!」

「僕たちも早く逃げましょう」

 カインが迅速に思考を巡らせ、アベルが揺るぎない決断を下す。

 すぐにアベルたちも退避をしようと矢先、エノクが叫んだ。

「敵来た!」

 爆発による火災で蔓延まんえんする煙と、工場から流れてくるガスによって、辺りはまるで霧に包まれたようになり、その先から敵の影がこちらに近づいてくる。

 敵に向かってアベルが駆け込もうとした。

「俺が敵の目を惹く、先に逃げろ!」

 しかし、エノクはその場から動こうとしなかった。

「おれヤダ逃げない」

「アベルなら大丈夫ですよ。早く逃げましょうエノク」

 カインが手を引くが、エノクは固い意志で動かない。

「ヤダ、アベルおれたちの星。だから守る」

 アベルはただのレジスタンスのリーダーではない。帝國の圧政に苦しむ人々、貧困にあえぐ人々の希望の星なのだ。

 ――今から20年以上前に起きた内戦。人々の苦しみはそのときからはじまっていた。

 政権を奪われた先代の皇帝は処刑され、当時大臣だった男が叛旗はんきを翻し先代の皇帝の悪政を打ち破ったリーダーとして、のちに皇帝として鎮座した。

 これには多くの異論があり、先代の皇帝は濡れ衣を着せられたのはないか、すべては大臣の陰謀だったのではないかと。だが、その声は現在の圧政により口を塞がれ、真実の究明などされる筈もない。

 一つ言えることは、社会的格差は現政権になってから目に見えて悪化し、貧困層は明日をも知れない生活を強いられていると言うことだ。

 そこへ現れたのがアベルという若き指導者だった。

 アベルの出自は明らかになっていないが、人々が彼を支持する理由はある噂にある。

 先代の皇帝が処刑されたとき、皇后は身ごもっていたとされ、反乱軍から身を隠し逃亡し、極秘裏に子を産んだと噂されているのだ。

 しかし、その数年後、皇后は新たな政権の帝國兵に拘束され、現在の皇帝の妻として皇宮に輿入れさせられた。

 皇后が拘束されたとき、出産されたという子供は発見されず、その行方は今となってもようと知れない。はじめから子供などいなかったとさえ言われている。

 それから長い年月が経ち、アベルの活躍が人々に耳に届くと、再びのその噂が流れはじめた。

 人々はアベルに先代の皇帝の面影と勇姿を見た。

 貧困層の人々がアベルを支持する声は日に日に高まり、今や富裕層の中にも支持をする者たちも現れた。だが、富裕層の支持は極僅かなものでしかない。

 新たな皇帝の元で行なわれているエネルギー産業は、富裕層の生活をより裕福なものとして、一方で貧困層との格差は広がるばかり。圧政により逆らえないばかりか、富裕層はさらなる富を求め、皇帝に丸め込まれてしまっているのだ。

 アベルを後押しするものは噂だけではない。

 アサルトライフルを構えたアベルは、エノクをカインに任せて敵の真ん中に突っ込む。

 敵からの弾雨を臆することないアベルの姿。

 硝煙の臭いが風に乗る。

 応戦するアベルを追って、エノクがカインの制止を振り払った。

「おれ戦う!」

 背後から近づいてくるエノクに気付いたアベルは、すぐさま引き返して突進しながらエノクの躰を押し倒した。

「危ない!」

 寝ころんだ二人の上を抜ける銃弾。

 反撃をしようとアベルはトリガーを引くが弾が発射されない。

「チッ、ここで弾切れか……」

 レジスタンスの装備は充実しているとは決して言えない。武器の入手も困難であるが、それよりも資金面での苦難を強いられる。

 アベルは立ち上がると腰に差していた剣を抜いた。

 つばに刻印された火竜の紋章。

「この身がここで朽ちようとも、魂は決して滅びない!」

 剣を構える気高いその姿。紅髪が風になびき、髪飾りで結ばれた長髪が竜の尾を連想させた。

 煙の中から拡声器を使った濁声だみごえが聞こえてくる。

「ブハハハハハ! 一本の剣で我が軍に、どう立ち向かうというのだ小僧!」

 強風によって煙が晴れる。

 するとそこにはアベルたちを包囲した軍勢が!

 もうどこにも逃げ場などなかった。

 敵の指揮官がこちらに近づいてくる。

「さあ武器を捨てて投降したまえ、生け捕りが皇帝のお望みだ」

 生け捕りの先にある末路……それを考えればここで最後まで戦い朽ちることをアベルは望む。

 剣を捨てず、指揮官を睨み続けるアベルの瞳にエノクの姿が映し出され、さらに――。

「君は生け捕りにされるくらいなら、果敢に敵に立ち向かう男だ。それは僕がよく知っているよ」

 なんと、そこにはエノクの頭に拳銃を突き付けたカインが!

 あまりの衝撃に瞳孔どうこうを開き何も言えずにいるアベルに、カインは悪魔のような微笑みを浮かべた。

「人質だよ。自分の命は惜しくなくとも、仲間の命ならどうかな?」

「なぜだ!」

 それが口から吐き出せた精一杯の言葉だった。

 カインの裏切りは予想もしていなかった。

 指揮官も笑っていた。

「馬鹿な小僧だ、もっとも傍にいた仲間の裏切りにも気付かぬとはな。しかし、たかが小僧1人を捕らえるだけのために払った代償は高い。まさかプラントが1つ破壊されてしまうとは」

 不機嫌そうに指揮官はカインを睨み付けた。

「僕のせいではありませんよ、事前に作戦を漏らしておいたのに、食い止められなかったのはそちらが無能なだけでしょう」

「なにィ!」

 目くじらを立てる指揮官になおもカインは言葉を続ける。

「指揮官ともあろう方が冷静さを欠いてもらっては困りますね。僕はただのスパイではありませんよ、皇帝直属の部下であることをお忘れなく」

 皇帝の名が出た途端、指揮官は押し黙ってしまった。

 未だにアベルはカインの裏切りを信じられずに、戦意を失い立ち尽くしていた。

「なぜだカイン!? おまえの両親は帝國兵に拷問された挙げ句に殺され、皇帝を心から憎んでいたんじゃないのかッ!」

「本当にそんな理由で僕がレジスタンスのメンバーになったとでも? たしかに両親が皇帝に殺されたのは事実さ。けどね、それは単に皇帝に逆らった両親が馬鹿だっただけのこと、僕が怨んでいるのは両親のほうだ」

「なんだって!」

「いつか話をしたね。裕福だった暮らしから一変して、両親が死んでから僕がどんな地獄を見たか。はじめから勝ち目のない戦いなんだ。そう、君さえ現れなければ、両親も間違った道に進むことはなかった。全部、全部おまえのせいなんだ!」

 もうずいぶんと昔のことになるが、カインはこんなことをアベルに話していた。

 革命の英雄とカインの父はアベルに願いを託し、人脈や金銭面での支援をした。その結果、反逆罪に問われ、父は処刑され、財産もすべて没収。苦しい生活の中で母も病に倒れ亡くなったのだと――。

 その話は事実だったのだろう。

 しかし、カインが怨んでいたのは皇帝ではなくアベルだったのだ。

 今までカインはアベルの右腕として、良き理解者として、親友として傍にいつもいた。そのカインが、実は虎視眈々とアベルへの復讐の機会を狙っていたのだ。

 信じる者に裏切られ、敵にも包囲され、アベルはついに膝を突き項垂うなだれた。

 自分たちの戦いで、犠牲になった人々がいることを改めて実感した。正義のため、自由のため、人々のために戦っていたつもりだった。

 しかし、その戦いの一方で、戦禍に巻き込まれ新たな不幸に堕とされた人々がいた。

 今回の作戦で手引きをしたエノクもはじめは協力を拒んでいた。それは生活があったからだ。工場が破壊されれば失業者が出る。その失業者たちは、アベルたちが守ろうとしている貧困層なのだ。

 アベルの脳裏に迷いが過ぎる。

 今までがむしゃらに戦ってきた。揺るぎない信念を持って戦ってきた筈だった。

 エノクが叫ぶ。

「立てアベル!」

 暴れたエノクはカインを振り切ってアベルに駆け寄る。

 鳴り響く銃声。

 カインが構えた銃口から微かに立ち上る硝煙。

 人影が音を立てて倒れた。

 まるで襤褸ぼろ切れのように風にあおられながら、倒れたまま躰を動かさないエノク。その口だけが微かに動いた。

「おれ、どうせ命短い。人間じゃない生まれてきたはすぐ死ぬ、だから……」

 そこで言葉は途切れた。

 変異体として生まれて来た者の宿命。ここで死せずとも、その一生は健康体で生まれてきた者に比べ、圧倒的に短い。

 剣を握るアベルの手に力が入る。

「たとえ……おまえでも、許さないぞォォォッ!」

 龍が如く咆吼をあげてアベルがカインに斬りかかった。

 すぐに退避したカインは帝國軍を盾にして、その姿を隠してしまった。

 指揮官が命じる。

「足を撃て、足なら構わん! だが絶対に殺すなよ!」

 飛ぶように駆けるアベルの足下に銃弾が撃ち込まれる。

 軍勢を離れ近づいてきていた指揮官なら狙える!

 アベルの剣が振り上げられた。

 そのとき、アベルの頬を走った一筋の血痕。

 指揮官が喚き散らす。

「誰が頭を狙えと言った馬鹿もん……ギャァッ!」

 短く叫んだ指揮官の脳天から剣が振り下ろされた。

 丸太のように倒れた指揮官。

 兵士たちは一瞬ざわめいたが、すぐに再び銃撃がはじまる。

 アベルは弾雨を掻い潜りながら軍勢に立ち向かう。

 しかし、勝ち目など誰の目で見ても明らかだ。

 そのときだった!

 上空からの砲撃で爆風に煽られたアベルが吹き飛ばされた。

 地面に伏せながらアベルは遙か空を見上げた。

 厚い雲の中から顔を覗かせた巨大な影。夕焼けを背に浴びて現れたのは飛空挺だった。

「……帝國の船。だが……」

 アベルは呟いた。

 次々と天空から降り注ぐ砲撃は、帝國兵を壊滅に追いやった。

 いったいどうして帝國の飛空挺が味方の軍を?

 アベルの通信機がなにかを受信した。

『Zazaza……Zaza……だ、聞こえるか? 帝國の飛空挺レッドドラゴンを掻っ払ってやったぜ!』

 空にまばゆい光が差した。

 別の作戦を遂行していた仲間たちが、帝國の飛行場から飛空挺を盗み出したのだ。

 思わぬ襲撃で帝國兵はほぼ壊滅し、生き残った兵士たちも我先と退却していく。

 倒れた兵士の下からカインが這い出してきた。

「まさか……飛空挺強奪作戦の情報も教えてやったのに、なんて無能な奴らなんだ!」

 カインは死んだ兵から短機関銃を奪い、銃口をアベルに向けて弾を発射した。

 だが、すでにアベルの間合いにカインは入っていた。

 剛剣によって短機関銃が叩き落とされた。

 すぐにカインは飛び退き剣を抜いた。

「僕が自ら手に掛けるような真似はしたくなかったんだけど、ねッ!」

 交じり合う鋼がキンと音を立てた。

 カインの刃を刃で受けたアベルはそのまま剣ごとカインの躰を押す。

「どうして裏切った!」

「それはさっき言っただろ、君を怨んでいるからだと!」

 押されていたカインがアベルを力で押し飛ばした。

 地面に片手を付いてしまったアベルにすかさずカインが襲いかかる。

 すぐにアベルは相手の剣を薙ぎ払おうとしたが、腕を斬られ剣を落としてしまった。

 カインの剣が振り下ろされる。

 だが、それよりも早くアベルはカインの懐に突進した。

 互いに地面を転がりながら倒れた。

 先に立ち上がったのは胸を押さえて、苦痛を浮かべるカイン。

「ゴホッ、ゲフッ……ゲホッゲホゲホゲホ……」

 咳の止まらないカインを見ながら、アベルは攻撃を仕掛けようともせず、ただじっとその姿を見つめていた。

 カインが微かに口元を綻ばせた。

「もしかして気付いたかい?」

「まさか……」

「包帯を巻いて潰していても、触られたらわかるものだね」

「女だったのか!」

「ふふっ。そうさ、僕は女だよ。か弱い女に手をあげるのかな?」

 倒れた弾みでカインは武器を落とし、丸腰の状態だった。

 一方アベルは素早く剣を拾いながら立ち上がっていた。

 切っ先が閃いた。

 アベルの剣がカインの喉元に突き付けられる。

 微笑みながらカインが尋ねる。

「殺すのかい……親友の僕を、共に戦ってきた仲間を?」

「…………」

 今さら裏切り者が何を言うのか。しかし、アベルは無言のまま動けなかった。

 嘲笑うカイン。

「殺せないんだろ、どうせ僕のことを殺せないんだろう!」

「……ッ!」

 剣を握るアベルの手に力が込められ、切っ先がカインの肌に触れた。

 静かに流れたひと雫の鮮血。

「本当に僕を殺すのかい?」

「……おまえのしたことは許せない。しかし……」

「そうかい、僕は殺されるんだね……実の兄の手に掛かって」

 悪戯いたずらな笑みをカインは浮かべた。

 その言葉を理解するのにアベルは時間を要した。

「今なんて!?」

 それはあまりにも衝撃的で、ありえないことだった。

「お兄様、わたくしのことをお殺しになるの?」

 少女のような声音でカインは言った。

 たしかに言った。

 そう、『兄』と――。

「嘘だ!」

 悲痛な叫びをあげたアベル。

 到底、信じられることではなかった。

 まさか実の妹がいたなど、アベルは一度も耳にしたことなどなく、その噂すらまったく聞いたことがない。

 信じられないと言った顔をするアベルにカインは証拠を見せようとした。

「僕が首から提げているペンダントを見るといい」

 アベルはカインに切っ先を突き付けたまま、その首に提げられている紐をたぐり寄せ、ペンダントに刻まれた紋章を見た。

 ――気高き火竜の紋章。

 言葉を失い驚きを隠せないアベルにカインはさらに続ける。

「君が同じ物を持っていることを僕は知っているよ。それが何よりの証拠だと思うけどね?」

「馬鹿な……俺に妹が……しかも、目の前のカインが?」

「僕の本当の名前はソフィア。世が世であれば帝國の第一皇女だった」

「だったら尚更、あいつを怨んでいる筈じゃないのか! 父を殺したのはあの男なんだぞ!」

「……ふふっ、君には関係ないね!」

 カインは切っ先から首を離し、アベルの腹を膝で蹴り上げた。

 油断していたアベルはよろめき、そこにすかさず剣を拾い上げたカインが斬りかかる。

「死ねッ!」

 瞳孔が開いた。

 刃を伝って流れる黒い血が朱に染まって地に墜ちる。

 膝を突きながらも剣を構えているアベル。

 その握る剣の先はカインの腹を貫いていた。

「刺したね、兄さん?」

 苦痛に顔を歪ませながらカインは自ら後ろに下がって剣から腹を抜いた。

 そして、力なく膝から崩れ背面に倒れた。

「俺は……」

 偶発的な事故であった。アベルには刺せなかった。にもかかわらず、飛び込んできたカインに剣は突き刺さった。

 血の噴き出る脇腹を押さえ天を仰ぐカイン。

「傷はまだ浅い、死ぬにはまだ時間がかかりそうだ。早く止めを刺せよ!」

 アベルは震える躰を支えながら立ち上がり、眼をしっかりと開けて睨んでいるカインを見つめた。

 そして、無言のままおぼつかぬ足で、静かにこの場を後にした。

 アベルの背中に投げかけられる罵声が木霊する。

「絶対に後悔するぞ、ここで僕を殺さなかったことを後悔させてやる!」

 その声はアベルに届いたのか……。

 復讐を誓うカイン。

 哀しみのアベル。

 戦いはくらい影を落とした。

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― 新着の感想 ―
[一言]  壮大な世界観を秘める文章とキャラクターに心惹かれ、一気に読みました。短編としては非常に組み込まれて作られた印象があり、その上で展開に次ぐ展開、息着かせないないとはこのことですね。  霧に浮…
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