千の聖剣
長くお待たせしました。書籍化追加続報です。
GCノベルズ様より、12月25日発売です。
今回は連日投稿一話目です。
後、年末が近づき仕事がハードになってるので感想が返せず申し訳ございません。
「ゲホゲホッ!! ゴポッ!」
ザンドが身体を折り曲げながら咳き込むと、黒が混ざった血を吐き床が赤黒く染まっていく。
「ザンド様!? 大丈夫ですか!?」
「心配無用だ……直ぐに収まる。水を」
「ザンド様、こちらを」
ザンドは部下から手渡された水筒を手にすると、懐から紙包みを取り出し中に入っている粉状の物を水と一緒に飲み干していく。
部下達から襲撃の報告を受けたザンドは、神殿でもごく一部のみ利用することを許される魔道具によるエレベーターに乗り込んだ。
円形状の土台のみが動くエレベーターは壁がなく、土がむき出しの竪穴を降り続ける。
すると、地下へと下っているというのにだんだん明るくなり、剥き出しの土から多くの発光する水晶が見えてくる。
「はぁ……はぁ……ふう」
「ザンド様。もうすぐ最下層です」
「お主らはこのまま上に戻り、警備に戻れ。決してこの装置を使わせるな」
「ハッ!」
ザンドはエレベーターが止まり、地に降りると真っ直ぐに横穴へ向けて歩いていく。
部下はザンドの指示に従い、エレベーターを操作するとガコンと音を立てて上昇していく。
横穴は剥き出しの水晶が多く飛び出ており、それらが昼間を思わせるような光を発していた。
だが、幻想的な風景にも目をくれずザンドは更に奥へ足を進めると、五メートルを超える巨大な扉が現れる。
その傍には扉を閉ざしていただろうと思われる無数の巨大な鎖が、鋭利な刃物で切られた様に切断され転がっていた。
ザンドは扉を押すと、その巨大さからは想像できない程容易く扉が開いた。
扉の先には、精巧な石造りで出来た広大な地下空間が広がっており、一匹の龍が横たえていた。
数多の龍を束ね、大地を収める偉大な三龍の一匹。だが、その巨大な身体は無残に茨によって浸食され、地面に縫い付けられるように縛り付けられていた。
茨の先は壁に埋まっている巨大な獣の頭蓋骨とつながっており、茨が脈打つ度に頭蓋骨の空の瞳が赤く光る。
狂獣王アポイタカラ。
古代の時代には災厄と称され、数多の種族を滅ぼし狂獣を支配していた恐怖と畏怖の象徴。三龍が一匹、ヨルムンガルドにまで迫った王の亡骸がここに眠っていた。
ザンドは不敵な笑みを浮かべながら巨大な骨を見上げている。
「おやおや。虚空と思いきや、貴方でしたか」
ザンドの姿に気付いたフードの人物。
ノーフェイスが部屋中を覆っている茨の隙間から出てくる。
「ザンド公爵、身体のお加減は如何ですか?」
「ふん、この成りを見てよく言うわ」
「ええ、ええ。死相がはっきり見えております。もって獣王祭まででしょうね」
「やはりか……」
ザンドは自分の身体の事をよく知っており、狂獣との融合や薬により延命を図ってきたが募る倦怠感に一日に何度も繰り返される吐血。
痩せこけた身体、吐いた血は赤黒くもはや素人目から見ても長くはないと判るほどだった。
こうやって立っていることでさえ奇跡と言っていいほどだ。
「儀式は何処まで進んでいる?」
「七割と言ったところでしょうかね。あと数日も経てば貴方の望みが叶うでしょう」
「ああ。くっくっく……」
ザンドの視線の先には、茨に混ざって無数のケーブルがヨルムンガルドとアポイタカラと繋がっており、その先には場違いに設置されたガラスの筒。
多少の違いはあったが、それらは冒険者と狂獣を融合させた施設と同様のモノだった。
時折、アポイタカラの空の瞳が怪しく光ると警備の騎士達が心身を恐怖で震わせていた。
「愚かな……」
茨の隙間から放たれたのは年老いた男性の声。
ノーフェイスが茨を動かすと、頭のみを残して埋められた老年の神官の姿が露わになる。
他の神官達と彼が別々に埋められていたのは、彼が長い間貴族や王家の神事を任せられる程の実力を持っている土の大神殿の大司教だったからだ。
大司教は強靭な身体を持つものが選ばれ、なおかつ人格と魔力共に優れた者でなければ大司教は務まらないとされている。
歴代まれにみる力を持った大司教は他の神官達に慕われ、傍にいるだけで影響を与えかねない。ゆえに彼らの苦悶を引き出すためには彼は別に埋める必要があった。
そんな彼も長い間埋められた所為で相当に汚れており、少々やつれていたが他の神官とは違って意識をはっきりと持ち、強い視線でザンドを見上げる。
「ほう。それは誰の事だ? サランディ大司教」
「ザンド公爵。儂と同じ老い先短い命。なぜ、悪逆を成してでも歴史に名を残そうとする」
「ふははは……はっはっはっは! 簡単な事よ。我にはな……他の有象無象と同じく歴史に名を残せずに死ぬなぞ耐えられぬのだ。我が祖先は遥か昔には空を支配し、数多の種族を支配していた。多くの種族が空を恐れ、心身ともに我らを崇めたてた! 常に獣人達の心には我らが住んでいた! しかし、今はどうだ! 薬草しか目立たつ生産物しかない東の領に押し込められ、人族との戦場にも立たせてもらえず、ただ平穏に過ごすだけの日々! 我には耐えられぬ! 王鳥には闘争こそが相応しい! 例え大悪党と、世紀の反逆者と言われようとも戦に置いて人々の心に恐怖と強さと共に我を刻み込む! さすれば我は永遠に人々の心に、歴史に生き続けるのだ」
「お主と言うやつは……」
サランディは狂気に満ちたザンドを見ながらため息をつく。
(既に正気ではない。昔のザンド公爵は横暴に振る舞っていても理知的で王家と逆らうようなことはしなかった。病がザンド公爵を変えたのか……それとも、傍にいる彼らか)
サランディは視線をザンドの近くにいるノーフェイスとパラケルススへと移す。
いつ頃からかやってきた謎の者達。
常にフードを被り、まるで自分の手先の様に王鳥族を支持する彼らに言い知れぬ不安を感じて神殿直属の暗部に調査を命じたが、向かった者達は全て帰らず、遺体すら見つかることはなかった。
王家も調査をしていたようだが、手練れの暗部を失うだけの結果となり調査は至難を極めていた。
気が付いた時には一部の神官達も彼らの手に落ち、封印の間の神官戦士達でさえ押さえられていた。
身内にも気を付けていたが、こうも手際よく内部を浸食されるともはや見事としかいえない。
心の中で己の無力さをザランディは嘆き、主であるヨルムンガルドに詫び続ける。
すると、細かな振動がザランディの身体を揺らした。
パラパラと砂が落ちてくると、ノーフェイスが天井を見上げる。
「ところでザンド公爵。上の方で騒ぎがあったようですが」
「問題ない。ただのネズミが入り込んできただけだ。直ぐに駆除される」
「そうはいかないようですヨ」
二人の会話に割り込むように、一匹のカラスが降りてきて、それに群がる様に何処からか大量のカラスが現れた。
カラスが集まり人型になったかと思うとパッと全てが散り、羽の中からパラケルススが現れた。
その表情は楽しみに満ちており、不気味な笑みを浮かべていた。
「ザンド公爵、ただのネズミと思ってるようですガ、侵入者は貴方の思った以上の手練れでス。異世界人、それも大勢。全くどのような手を使ったかわかりませんガ、こうも手早く攻めてくるとは予想外ですネ。虚空が向かったようですガ、間に合いますかねェ」
「それは本当ですか?」
「えェ。各階にゾンビバットを見張り代わりに配置しておいたので間違いないですネ。ヴォルフも倒されてしまったようでス」
「あの三首狼がか!? ぐぅ…! 我の願いは邪魔させぬぞ! 何とかしろ!」
「ならば、計画を早めましょウ」
「おや、いいのですか? まだ鍵は手に入っていないのですよ?」
「問題ありませんヨ。あの方の占いの通り、彼女が王子の魂に引かれてやってきたようでス」
「ほう。魂の結びつきと言うのは思った以上に強い物なのですね。これならいけるでしょう。ザンド公爵、計画の前倒しをします。筒の中にお入りください」
「分かった。頼んだぞ……!」
「ふふふ、貴方には私たちの計画に協力してもらった恩があります。出来る限りの事はしましょう」
ザンドが筒状のゲージの中に入った瞬間、部屋が大きく揺れ、轟音が響いた。
「な、何だ!?」
ザンドが大きな揺れに慌てている中、冷静にパラケルススとノーフェイスは遥か遠くの天井を見上げる。
その直後、全員の頭上から瓦礫が落ちてきた。
ノーフェイスが茨の檻を形成し、ヨルムンガルド、アポイタカラの亡骸を包み込む。
茨の檻は上の階で埋められている神官達にもおよび瓦礫から身を守っていた。
騎士達は狼狽しながらも各自身を守れそうな場所に避難していく。
「ヒッ! タ、タスケ……! ギャァァア!」
避難が間に合わなかった一人の王鳥族の騎士が絶叫と共に瓦礫に押しつぶされ息絶えた。
騎士達は命からがら茨の下へと逃げ込む。大小の瓦礫が茨に当たるも、鋼の如き硬さを持つ黒い茨は傷一つ付かなかった。
パラケルススにも瓦礫が降り注ぐが、身体が崩れたかと思うと身体が無数のカラスとなって飛び去った。
すると間もなくして彼らの傍に大剣の残骸と共に、一人の男が落ちてきた。
◆◇◆
ヴォルフによって地面を砕かれ、落下を始めたが虚空は攻撃をやめるつもりはなく、空中戦を仕掛けてきた。
「せぇぃ!」
槍よりも鋭く、弾丸よりも速く迫る大剣の束を〈波動剣〉〈ヘキサスラッシュ〉で薙ぎ払い、叩き落とす。
剣を弾き飛ばすも、空中で向きを変えて誘導弾の様に向かってきたので〈ウェポンブレイク〉で粉々に砕く。
流石に壊してしまえば操れないだろう。
「……驚いた。まさか粉砕するとはな」
驚いたのはこっちだよ! 〈イグニス〉まで使うとかどういうことだよ!
落下しながらも虚空は〈イグニス〉を使って大剣を操り、攻撃を仕掛けてきた。
操る数や武器の種類によって〈イグニス〉の操作の難易度が変わる。
俺が短剣10本で抑えているのは、それ以上だと近接攻撃が疎かになるからだ。
だが、虚空はそれを容易く超え、優に50本を超える大剣を空中にばら撒き、時間差や回転、螺旋を織り交ぜて攻撃を繰り出してくる。
しかも、〈イグニス〉で使っている武器はただの大剣じゃない。
向かってきた大剣を紙一重でかわしたところで手に取り〈鑑定〉してみると、希少武器だった。
これはうちのゲームではまだ実装されていない武器だが、別のオンラインゲームの武器では見かけた有名な希少武器。
『聖剣バルムンク(模造品):至上の剣グラムの欠片を元に、邪龍ファブニールを打ち倒すために作られた竜殺しの聖剣。竜族に対し特攻能力を持つ。模造品による劣化で耐久力が下がっている。STR+10 特殊能力:龍特攻 (大)レア度:模造品により認知不可』
ゲームや漫画で使われる有名な武器の一つ。
神話による竜殺しで有名な『聖剣バルムンク』。の模造品。
しかしだな、ちょっと数が多すぎやしないか? 模造品とはいえ聖剣のバーゲンセールなんてありがたみがないぞ。
散発的に撃ってくるマシンガンも厄介だ。ダメージはないとはいえ、衝撃は食らうので身体のバランスを崩してくる。
ただ、追尾してくる聖剣とは違い、直線の動きは軌道が読みやすく、防ぐのには苦労しなかった。
秋葉が撃っているのを何度も見てるしな。
秋葉の場合だと抜き打ちして軌道を読ませない上に、跳弾まで難なくこなす。
仲間ながら凄いと思う。
量産型バルムンクの隙間を縫うように撃たれた弾丸を手に取った量産型バルムンクを盾代わりにして防ぐ。
見る見るうちに量産型バルムンクの耐久値が減っていく。このまま壊してもいいんだが、一本くらいは拝借しよう。あとで改造だ。
奪い取った量産型バルムンクをアイテムボックスに入れ、〈ソニックブレイド〉で反撃するが虚空が大剣をサーフボードの様に足場にし、滑空しながら難なく避けられた。
くっ! イケメンだからサマになる!
まぁ、そういう使い方もあるのかと思って俺も真似をする。アイテムボックスの中で死蔵していた武器を一本取り出す。機会があればシーザーに渡そうと思ってた武器だが、機会を逃してしまった。
よっと、サーフボードは社員旅行以来だが、上手く乗ることが出来た。
〈イグニス〉での操作も剣一本だけなら楽だしな。
俺が足場に使った武器は耐久力だけ特化している『デュランダル』と言う武器だ。
VIT+20もあるので盾役には丁度よさそうな武器だが、両手剣なので盾が装備できなくなるというデメリットがある。もっと致命的なのは攻撃力が低い事。
片手剣のミスリルソードと同値だ。修正予定すらないし。
一応伝説の通り破壊不可の特殊能力が付いているが、そもそも装備する人がいないから勿体ない性能だ。
不人気武器だが、この世界では上手く生かしてあげよう。伝説通りとはいかなくともそれ相当の活躍をさせてやったら武器も本望だろう。足場にしてるのはスルーで。
因みに〈イグニス〉は人を支えるほどの力はなく、落ちながら移動を補助する程度の力しかない。珊瑚の大地で繰り広げられるロボットモノの様に空を飛ぶことは出来ない。
ちょっと惜しいが束ねても浮力は得られないので諦めるしかなかった。
虚空が手を翳すと、アイテムボックスから取り出したであろう量産型バルムンクが豪雨の様に襲い掛かってくる。
螺旋状に高速回転しながら向かってくるバルムンクを〈六道千塵〉〈ウェポンブレイク〉で迎撃する。
聖剣とオーラ状の武器がぶつかり合って激しい衝撃音と共に無数の聖剣が砕け散る。
〈六道千塵〉はレヴィアに向かっていた剣も貫き、残った剣はレヴィアの手によって粉砕された。
「すまぬ、マサキ。助かった」
レヴィアも偽物とはいえ聖剣を素手で弾き飛ばしていたが、流石の龍殺しの聖剣相手に素手は厳しいようで手傷を負っていた。龍特攻武器は伊達じゃない。
白く細い手は赤く染まり、水色のドレスは所々切り裂かれている。
「レヴィアお姉さん……!」
「お前……手が……!」
「安心せい。この程度の手傷どうということはないわ」
しかし、幼い二人に笑顔を向けて気丈に振る舞っているが、レヴィアは本来の力を抑え込んで人化し弱体化している。
人化していても龍族には変わりはなく、そこに模造品とはいえ神話の聖剣による攻撃だ。
リヴァイアサンとはいえ、神話の龍を殺した聖剣に斬られて平気なはずはない。
直撃を避けているが、もしまともに受ければレヴィアといえども危険だ。
幾ら壊しても剣は尽きることなく、上下左右から襲い掛かってくる。
直線上の〈六道千塵〉は相性が悪いな。手早くスキルを入れ替える。
なら、これならどうだ!
「〈波動剣〉〈ウェポンブレイク〉〈サイクロンエッジ〉!!」
〈サイクロンエッジ〉は斬撃の渦を巻き起こすスキルだ。攻撃範囲が縦に長く、横に狭いのが特徴だが、〈波動剣〉と組み合わせることよって範囲と威力が上がり、竜巻の壁となる。
俺の前方に竜巻が巻き起こり、向かってきた聖剣と弾丸を老木が粉砕機に巻き込まれたように粉々にし、白銀の塵となった。
レヴィアが蹴りや素手で剣を砕き、壊し損ねた剣をシリウスが隙を見て取ったであろう折れたバルムンクで弾き飛ばす。まだ幼く小学高学年の見た目の割によくやるな。
この攻撃の最中で奪い取った手際もそうだが、臆せずに剣を振るう度胸は凄いものだ。
だからと言ってフェンは渡さんがな!
「この程度では倒せんか」
「だったら諦めたらどうだ。下手な小細工を打っても俺達には通用しないぞ」
「どうやらその通りだな。なら―――全力でいくぞ。〈模倣:朧分身〉」
虚空は両手で印を結び始めた。あれは次郎の忍術!?
虚空の身体がぶれたかと思うと、徐々にぶれが大きくなってぶれが静まった頃には虚空の身体が5人に増えていた。
5人に増えた虚空は各自手を天にかざすと、何もなかった空間に視界を埋め尽くすほどの武器が現れる。
おいおい……。マジか。この目であの宝具に近いものをみるとは。
百は優に超えて数えきれない武器達が俺達に刃先を突きつけている。
武器もバルムンクだけでなく、斧や薙刀、刀に槍、珍しいものになると銃剣まである。
恐らくこれらは全て模造品だろう。
「〈模倣:ホーミングシュート〉。……行け!」
虚空の号令と共に驟雨の如く、数多の武器が俺達に襲い掛かってきた。
くそっ! 数が多すぎる! しかも魔力嵐の影響で『グラビティウォール』は使えない!
「うらぁぁぁ!!」
〈波動剣〉〈ウェポンブレイク〉〈サイクロンエッジ〉のコンボに加え、〈ソニックブレイド〉も足して広範囲の武器を砕くが、余りにも量が多すぎて防ぎきれない。
強引なスキルの組み合わせの代償でHPが減っていくが、気にしていられない。
俺はいいんだ。問題はレヴィア達。
この高密度の攻撃を受けてしまえばいくらレヴィアでも防ぎきれるものでなく、フェンやシリウスにも被害が及ぶ。
『デュランダル』を動かしてレヴィア達の盾になり、『セブンアーサー』と『ロストドミニオン』の二刀流で斬り砕くが一つの斧を砕いた瞬間、目の前が爆風で覆われた。
「ッ!?」
やられた! 奴らは『メテオハザード』も複製していたという事を見落としてた!
爆風の衝撃で『デュランダル』から吹き飛ばされ、加速して落ちる俺の目に映ったのは、レヴィア達に迫る無数の武器だった。
レヴィアが砕き、シリウスが弾き、アリスが妖精魔法で打ち落とすが足りない。
あまりにも数が多すぎる。
「ぬうっ!」
「くっそぉ!」
「多すぎるよぉ!!」
悲痛な声だけが俺の耳に届く。『デュランダル』をこっちに向かわせているが、他の武器達に阻まれて中々引き寄せることが出来ない。
俺の方にも追い打ちで銃剣が向かってくる。
銃剣を砕くと、視界に一本の剣が見えた。黒く艶が消えた一本の剣だ。
丁度レヴィアの死角に位置した黒い剣は、真っ黒い軌道を描きながらレヴィアに向けて飛んでいく。
そのタイミングに合わせてレヴィアの正面に向かって更に武器達が集中し始める。
凌ぎきれないと判断したのか、レヴィアは口を大きく開いてブレスの兆候に入る。
ダメだ! それは囮だ!
「レヴィア! 避けろぉぉぉ!」
「がぁぁおおおーーー!」
俺の声が間に合わず、レヴィアはブレスを解き放つ。
一度ブレスを放つと出し切るまでブレスは止めることが出来ない。
破壊の本流に意識を持って行かれるとレヴィア自身が語ってくれたことだ。
破壊をまき散らすブレスによって数多の武器が破壊尽くされ、何本か『メテオハザード』が混ざっていたらしく爆発も起こっている。
その間もレヴィアに向かって黒い剣が迫る。
止めろ!
止めろ!!
――――――に対し《申請》します。――――
不思議なくらいにゆっくりと流れるように時間が感じる。
頑丈なはずの水の膜も容易く突き破り、レヴィアの頭に向けて剣が伸びる。
確実に殺す為の一撃。
水の膜が突き破られたことでようやくレヴィアが気づいたが、遅く目に初めて恐怖と怯えが見える。
レヴィアが、死ぬ。
止めてくれ!!
止まってくれーー!!
レヴィアが突き刺さる瞬間、頭に不思議な……若い女性の声が響いた。
―――《申請》を受理。管理者権限《違法武具剥奪》を許可。実行します。―――をどうか――お願いします―――
評価・感想をくださるとモチベーションの維持につながるのでとてもありがたいです。
相手側にもチート級能力が発覚。虚空の能力に関しては詳細は伏せますが、ネタ的にAUOのアレです。武器さえそろえることが出来ればという条件を満たすとこういうことも。
続きはまた明日投稿します。誤字修正もまた明日となります。




