表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/113

神官

大変遅れましたが続きです。しかし、とうとうスパロボにも騎士ガンダムが出ましたね。がっつりやりこみます。

 とある薄暗い部屋の一室。

 数百人が入りそうな巨大な部屋は壁や天井は精巧な石造りで出来ており、長い年月が経っているにも関わらず、ヒビ一つ入っていなかった。その反面、床は土が露出していてデコボコとしていた。

 奥は崖の様になっていて、底は暗く一切の光が届かない。

 コツコツと石畳に足音を立て、音も無く扉が横に開いた。

 扉の先から王鳥ガルーダ族の騎士が現れ、その後ろに手を縄で縛られた数人の男女が付いてくる。

 彼らは全員、細やかな刺繍を施された法衣を着ていた。


「こ……ここは一体……?」


 先頭を歩かされていた蝶の羽を持つ蟲人族の女性が部屋を見渡す。後ろには猫人族やドワーフ族が並んでいた。


「ふふふ……いらっしゃい。各種族の神官様方々」


 部屋に響いたのは男女の声が二重に混ざった異質な声。

 足音も立てずに岩の影から一人のフードの人物が出てきた。

 グランファング帝国を裏から操り崩壊に導いた人物がそこにいた。


「貴方が私達を攫ったのですか? 一体何が目的なのです!!」


「元気なようで何よりです。これなら、立派なにえになるでしょう」


にえ……?」


 袖を払い、やりなさいと指示を出すと彼女達を連れてきた王鳥ガルーダ族だけでなく、部屋に居た闘獅子バトルレオ族までもが奥に引きずるように連れて行く。

 

「気高き闘獅子バトルレオ族がなぜこのような事を!」

「一体何をっ……!」

 

 崖前の床には大きなコブがいくつも出来、ゆっくりと蠢いていた。


「うぁぁ………ぁ………ぁ」

「たす……け……」

「飯……飯を……」

「神よ……ご加護を……」


 コブは無数の人の頭だった。しかも、人族だけではない。犬人族、犬頭族、猫人族、猫頭族、狐人族、虎頭族など無数の多種多様な人種が男女問わず地面に頭だけ残し、埋められていた。


「ひっ!?」

「な……なんてことを……!」


 中には干からびて事切れており、死した者もいた。

 多種多様な彼らだが、一つだけ共通する点がある。

 彼らは全員、各都市、各種族の神官達だ。


「ふふふ……いい感じに苦しんでくれてますねぇ。さぁ、おやりなさい」


 王鳥ガルーダ族の騎士がぶつぶつと呪文を唱えると、人が入りそうな穴が人数分開けられた。

 

「すまない……」


 闘獅子バトルレオ族の騎士が申し訳なさそうに呟き、そっと抱きかかえて穴の中に入れた。王鳥ガルーダ族の騎士が呪文を唱えると周囲の土が身体に迫り、あっという間に頭だけ残して埋めてしまった。


「神官の数が大分揃いましたね、パラケルスス。儀式の方はいかがで?」


 岩場の影からひょっこりと顔を出したのは、正樹達と一戦を繰り広げたパラケルススだった。


竜人ドラゴニアン族の王子は先日捕えまシタ。おまけで異世界人が一人付いてきましタガ」


「異世界人? その者は使えそうですか?」


「捕える際、激しい抵抗があったので『魔砲使い』に取り押さえてもらいまシタ。首輪を付けたので暴れる事はないでショウ」


「ふむ、金に汚いと言われる『魔砲使い』ですが、評判通り、金に見合った分の仕事はするようですね」


「いい拾い物でスヨ。我らの側に引き込んでもいいかもしれまセン。話を戻しますが、生贄はあと4人と言った所デス、“ノーフェイス”。尤も、肝心のウロボロス教団に居たという神喰らいの巫女がいなくては復活は出来ませんがネェ」


 カンテラを手にパラケルススが岩場から出てくると、明かりが白い岩場を照らす。


「骨……?」


 岩場をじっと見ていた蟲人族の神官はぽつりとつぶやいた。

 岩場と思われていたのは巨大な骨だった。骨は地面から生える様に飛び出ていて、一端を見ただけでも異常な程巨大だった。彼女が知る限り、こんな巨大な生物はヨルムンガルド以外見たことが無かった。

 

「……根に持っていますね。その件に関しては私も予想外だったのですよ。襲撃のドサクサに紛れて、まさか連れ出すような奴がいるとは」


「ええ、全くデス。お蔭で計画が大幅に狂ってマス。その件を含め、エルフの脱走の件はどうスカ?」


「鼻の利く闘獅子バトルレオ族に探させていますので、直ぐに見つかるでしょう。ウロボロスの巫女に関しては芳しくありませんね。教団の者を使い、追っ手を差し向けたのですガ音沙汰がありません。最悪、死体でもいいから連れてきてほしい物です」


「あ、貴方達は一体何を……? 王子をさらい、邪教の巫女を使って何をするつもりですか!」


 ウロボロス教団の話は彼女も知っていた。貴重な神喰らいと言う固有スキルを持ち、神を食らい新しき四龍目を生み出そうとしていた事。そして、謎の襲撃によって滅ぼされた事も。


「ウロボロスなぞ余計な物を生み出されては困りますからね。それよりも、もっと良い物をよみがえらせるのです。王子はそのために必要な人材なのですよ」


 ノーフェイスが崖を見下ろし、魔法で光を生み出す。

 光は彼女に見せつける様に、崖の底を照らした。

 

「ヨルムンガルド様っ……!?」


 崖の底にはヨルムンガルドがその巨体を横たえていた。

 かつてあった覇気は見る影も無く、頭部を黒い茨で覆われ、茨の先はパラケルススが照らしている白い骨に繋がっていた。


 茨はドクンドクンと脈打ち、白い骨に力を与えているようだった。

 力は全身の骨を青白く光らせ、崖下を埋め尽くさんばかりの光を放つ。

 骨の頭らしき部分は目が赤く光り、アンデット特有の瘴気を発していた。







 ◆◇◆







 クリスタの朝の散歩を終え、エルフの女性を乗せながら門まで戻ると門前で兵士達が大勢集まっていた。

 治療したとはいえ、血塗れの服を着たエルフの女性を連れて帰ったら面倒事に巻き込まれそうだ。

 《ステルス》で一旦、姿を隠して街中に入るか。


 街中に入り、人気が少ない場所に出ると《ステルス》を解除する。

 エルフの女性は『ルーム』の中のソファーに寝かせておいた。フェンが要るし、もし起きても大丈夫だろう。

 『ルーム』の中は戦闘不可領域なのでフェンに手荒な事も出来ないしな。

 

 クリスタの手綱を引きながら街中を歩くと警邏の人数が妙に多い。昨日はもっと少なかった気がするんだが、獣王祭が近いから警備を強化してるのか? しかし、それにしては物々しい。

 近くに居た兵士に聞いてみるか。 


「ちょっとすみません。衛兵の数が多いのですが、何かあったんですか?」


「うおっ!? ドラゴンっ!?」


「あ、すみません。こいつ俺の使い魔なんですよ」


「おぉ……ドラゴンを使い魔にしたのか。すげぇな……ちょっと触らせてもらっていいか?」


「別にそれくらいならいいよな?」


「がうっ」


 クリスタは人懐っこいから人から触られても気にしないんだよな。

 頭を下げて撫でてって催促するように上目づかいで衛兵を見つめると、衛兵は頭や角を優しく撫でた。動物好きなのかな? 俺としては虎頭族の衛兵は物凄くもふもふしてるので、尻尾を触らせてもらいたい。


「おお……こいつは凄いな。あ、何かあったか聞きたかったんだよな」


「はい」


「あのば……じゃない、王子様がいなくなったんだよ」


 おい、今馬鹿っていいかけなかったか?

 

「それでこの騒ぎですか……。護衛の人はいたんですよね?」


「いや〜……それがな、うちの王子って脱走癖があってだな。護衛を巻きやがったんだ」


 おいおい。王族なのにそれはダメだろ。確かに馬鹿といいたくなるわな

 話を聞くと、日中には城を抜け出して街中に遊びに来ることがあったが、俺達が来る前に街に出たっきり戻らなかったそうだ。

 いつもは夜には帰ってくるのだが、その日に限っては帰ってこなかったそうだ。

 それが昨日の出来事。

 これに現獣王が騒ぎにならぬよう、内密に捜索しようとしていたが何処どこからか情報が漏れたのか街中に噂が広まり、騒動になってしまったらしい。

 それでこの厳重警備か。情報漏えいは何処の世界でも厄介なもんだな。

 

「ま、それでだ。何か怪しい事があったら詰所にでも伝えてくれ」


「はい。わかりました」


 血塗れエルフを拾ったとかはいえんな。さっきの闘獅子バトルレオ族の騎士が貴族の私兵なら、今差し出すのは危険だろう。


 因みに、闘獅子バトルレオ族の3人にはマーカーを付け、居場所は随時判るようにしてある。今はどっかの屋内にいるようだが、流石に施設名まではわからないな。

 

 

 

 親切な衛兵と別れて聡の屋敷にまで戻ると、玄関の所でアデルが待ち構えていた。

 

「おかえり。全く……散歩に行くなら私にも声をかけてくれてもよかったじゃないか」



 帰ったらアデルが拗ねてました。そういえば、朝の散歩や鍛錬はアデルとやる事が多かったからなぁ。申し訳ない。


「あ〜……すまん。明日は誘うから勘弁してくれ」


「絶対だぞ。ところでそれは何だ?」


「あ~……これか……」


 クリスタの散歩に出かけた時の事をアデルに話すと女を拾ってきたことに若干白い眼で見られたが、重傷であった事を伝えると「それなら仕方ないか……」と納得してくれた。

 

「なら、私が彼女を部屋まで運ぼう。服も着替えなおした方がいいだろうな」


「すまん、手間を掛けさせて」


「これくらいはいいさ。マサキのお人よしにも慣れたからな。しかし、闘獅子バトルレオ族か……。私も何度か話した事はあるのだが、昔から闘獅子バトルレオ族は本来誇り高く、民を護る事を信念にしているようだそんな闘獅子バトルレオ族が彼女を追いまわすなんて私には思えない。彼女が目を覚まし次第、事情を聴いた方がいいだろう」


「そうだな」


 あの場で戦闘は避けたとはいえ、クリスタの散歩で程よく腹が減った。

 聡にもエルフの事を伝えたが、快く屋敷で面倒を見てくれると言ってくれた。


「すみません、厄介事を持ち込んでしまって」


「何、気にすることはない。私も昔はよくあったことだからな。それに、正樹君が分けてくれたアレの対価と思ったら安いものだ」


 あ、そうですか。


 昨日は夕食のお詫びに手持ちの味噌と醤油を分けてやったんだが、非常に喜ばれた。

 日本人と言えば味噌と醤油だよな。今日の朝飯に出るのは間違いないだろう。

 味噌と醤油は麹菌こうじきんがいるから作るのが難しいんだよな。下手するとカレーより難しい。

 販売ルートも教えてやったが、ヤマトの国と獣王国は取引が極まれにしか行われておらず困難なようだ。でも、この様子だと意地で取引しそうだ。

 

 朝食の時間になり、一番遅く起きたヨーコが来たところで一緒に朝食を取る事に。

その際、アデルと秋葉に挟まれる形になり、出遅れたヨーコが悔しそうにしていた。

 

 朝食は白ご飯にシャケっぽい川魚とみそ汁、クイーンクックの卵焼きにガブリキューリの浅漬けだった。純和風だな。アース大陸の料理は味が濃くて、こうしたあっさりしたのが胃に優しくて助かる。

 

 聡は醤油と味噌が塗られた焼きおにぎりだった。く、俺もそっちがよかった。 


 食後の緑茶を啜り、一息つく。

 異世界なのに日本食が恋しくなるのは、やはり元の世界の事が忘れられないんだろうな。食に関しては仕方ないか。これで育ったもんな。

 

 茶を飲み干すと、メイドさんが襖を開けて入ってきた。


「失礼します。マサキ様がお連れしましたお方がお目覚めになりました」


「お、起きたのですか。良かった。それで様子の方はどうです?」


「お目覚めになられた時は混乱しておりましたが、マサキ様が保護し、ここに匿っているという事をお伝えしたところ落ち着きになられました。それで、彼女がマサキ様にお礼を言いたいと」


「わかりました。直ぐに行きます」


「なら私も一緒に付いていこう」

「あ、私も!」

「あの……私も」


 アデル、ヨーコ、秋葉の3人の嫁さんが競う様に席を立つ。

 誰か一人が来てくれたら十分なんだが……。まぁ、同性の女性が複数いた方が話し易いかもな。


「あ……あの」


「ん? フェン、どうした?」


「私も……行っていいです……か?」


「あ……ああ。構わないが……何かあるのか?」


「んと……その人に……会わなきゃいけない気がして……」


 会わなきゃいけない? 知り合いなのか? フェンの知り合いっていうと……ウロボロス教団の知り合いぐらいしかいないはずだよな……。

 合わせてみてから考えればいいか。何かあれば俺達なら対処できるしな。

 

 

 

 

 

 

 アデル達とフェンを連れて、エルフの彼女が休んでいる部屋に向かいノックをする。

 

「どうぞ、お入りください」

 

「失礼するよ」

 

  襖を開けると、布団から起き上がっていた彼女の姿が目に入った。

  俺が着せたローブは畳まれて、今は治療用の清潔な衣服に着替えている。

  顔色は血を流し過ぎたのかまだ青白く、儚げな感じを見せる。

 

「貴方様が私を助けて下さったマサキ様ですね。私はリリン・フィールドと申します。此度は命をお助け下さり、ありがとうございます」

 

「礼ならクリスタに言ってくれ。ほら、庭で寝そべってるあのドラゴンだ。アイツがリリンさんを見つけたんだ」

 

「はい。でも、飼い主である貴方様がお助け下さったのには変わりはありませんので」

 

 彼女はにこりと優しく微笑む。エルフというのはやっぱり美男美女の集まりなのだろうか。笑顔の破壊力が凄いな。

 軽く彼女に見とれていると、後ろで嫁さん3人から抓られた。

 ダメージはないが精神的に痛い! 特に視線が痛い!

 さっさと話しを切り出そう……。

 

「リリンさんを見つけた後に闘獅子バトルレオ族の騎士が追ってきたんだが、何か心当たりがありますか?」

 

「それは……」


 するとリリンさんは表情を曇らせ、俯いた。

 言いづらい事があるのなら《ログ解析》で強引に調べる事も可能だが、あんまりこれはしたくないんだよなぁ。個人的なプライバシーを覗くことになる。それこそ昨日の夕飯から下着の色まで。


「黙っているならそれでもかまいません。出血して体力が戻ってないだろうし、もう少し休んだ方がいいでしょうね」


「私が犯罪者……とは思ってないんですか?」


「その線は考えなくもないが、犯罪を犯した人が名乗るのはおかしいでしょう」


「それもそうですね」


「あの……それに……これ……、エルフの里の……アミュレット……ですよね? 白銀で出来ていて裏地に古代エルフ文字……という事は……リリン様は……大神官でしょうか?」


 フェンが机の上に置かれていたアミュレットを手に取る。

 フェンの指摘にリリンさんは驚き、じっとフェンを見つめている。


「え、えぇ。その通りですが、貴女は……?」


「私も……巫女をやってました……。……これです」


 フェンはメイド服のポケットを探ると、一つのアミュレットを取り出した。

 アミュレットは金色の光を輝かせ、蛇が8の字を画いた装飾。

 

「ウロボロスの!? そうですか……貴女が……」


リリンさんは決したように顔を上げる。

 

「貴方達と出会ったことは運命なのかもしれません。人払いをお願いします」


「判りました」


 そばに付き添っていたメイドさん達を下がらせる。他に誰か潜んでいないかマップで確認もするが、近くに俺達以外の反応はない。

 

「大丈夫だ。話してくれ」


「では、お話ます……。私は土の大神殿の大神官様から祭事の為にお呼ばれし……、他の神官様方々と一緒に土の大神殿で囚われておりました。彼らは……私達と、ヨルムンガルド様、そしてウロボロスの巫女を、彼女を使い、狂獣王“アポイタカラ”を復活させようとしております」



感想や評価ポイントを下さるとモチベーションの維持にとても繋がるのでありがたいです。


書籍化に関して続報です! 活動報告の方にエクスマイザーのラフイラストと秋葉のイラストの掲載許可が出たので公開します。

こりゃ秋葉襲われますわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最近はこちらの方も日曜更新で頑張ってます。 宜しければこちらの方も感想や評価諸々を下さると大変喜びます。 TSさせられた総帥の異世界征服!可愛いが正義! re:悪の組織の『異』世界征服記~可愛い総帥はお好きですか~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ