竜の卵
前話で少々思う所があり、展開が若干変わってます。ご了承ください。
色々重なって日曜投稿が出来ませんでした。申し訳ない。
これからもまた忙しくなった場合は一週間に一度しか投稿できなくなるかもしれません。出来る限りは投稿ペースを落とさない様にします。
「なぁ、レヴィア。あの祠ってどういう役割があったんだ?」
俺はサウンシェードに辿りつくまでの間、さっきの事を聞いてみた。
祠の残骸を〈鑑定〉で調べてみても何の反応も無かったからな。
「あれはヨルムンガルドに力を送る役割をしておるものじゃ」
「あれ? でもそれって神殿がやってるんじゃなかったっけ?」
エリスがロッドを拭きながら首を傾げている。相当の数のゾンビを殴り倒したらしく、返り血が付いていたからだ。それってそういう武器じゃねぇから。
もうモーニングスターとか持った方がいいじゃ……。あ、ガードルが殴られたら死ぬな。
「神殿は祠から力を集めておるにすぎぬ。全土の力を4つの神殿で集めきれるわけがないからのぅ」
「あ〜……それもそうね。エルフの里とかで見かけたでっかい石塔とかもそういう役割だったのかしら」
「そうじゃな」
つまり、信仰力は血液、祠は毛細血管のようなもので、神殿は大動脈といった感じなのだろうか。
毛細血管が尽く潰されると、大動脈に送られる血液が少なくなり、本体、ヨルムンガルドの力が落ちると。
「なるほどな。つまりアイツらの目的はヨルムンガルドの力を弱体化させることにありそうだな。力さえ落ちれば三龍であってもヤバい事になりそうし、現にレヴィアが体内からやられた訳だしな」
「うぐっ、あのときは体内からやられるとは思っておらんかったからのぅ……妾としたことが一生の不覚じゃ」
「ねぇ……それに関してかなり気になってたんだけど、レヴィアって何者? ドラゴンのような翼とか見えたような気がするし」
「ん? 妾の事かぇ? 妾はリヴァイアサンじゃ」
おい、あっさりばらしてもいいのかよ。お前仮にも話題の三龍の一匹だろ。
「あ〜、そうなんだ〜へぇ、リヴァイアサン……」
「「「はぁぁぁぁぁぁ!!??」」」」
ガードル達冒険者の声が一斉に森の中に響いた。
ジークやダンは思ったより驚いてなかったが、どうやらリデアさんに報告する時に紹介されてたようだ。その時は流石に驚いたらしいけどな。
ガードル達が衝撃的な事実を突き付けられた以外、帰り道は何事も無く無事サウンシェードまで辿りついた。
門番には話を通しているので顔パスで通してもらえる。
サウンシェードに入ると、辺りがザワザワと騒がしい。
俺達がいない間に何か騒動が……。
「なんだ、あの馬鹿でかい卵は」
「あんな卵初めて見たぞ。何の卵だろう」
「そもそも卵なのか? 丸い石材じゃないか」
「茹でるか、焼くか、それともオムレツか……くっ、悩む所だ」
騒動の原因は俺の背中の卵でした。
それと、そこの調理人。悩む以前にやらせるか馬鹿野郎。
「ううむ、マサキよ。その卵はアイテムボックスとやらに入れられぬか? 少々目立ちすぎておる」
「背負うのが面倒でやってみたんだが、ダメだったんだよ。ドラゴンゾンビなら難なく入ったんだがなぁ……」
生き物がダメなのだろうか。森タコも絞めて調理しやすくぬめりも取ってから入れたしなぁ。
「正樹さん、とりあえずシーツか何かで隠しましょうか」
「そうだな」
俺は卵を背負って両手が塞がっているので、秋葉がアイテムボックスから野営用のシーツを取り出し、卵を覆ってくれる。
しかし、こうやっていると子供を背負ってる感じだ。いや、子供なんていないけどな。
シーツで卵を隠したまま、俺達はリデアさんの下に向かう事に。
今回の件をちゃんと説明をしないといけないからだ。
入り口からリデアさんの屋敷までは遠いので馬車を借りる事に。しかし、卵を背負った俺が馬車に入るわけがないので、仕方なく荷台の上に。まるで荷物になった気分だ。
秋葉や御者が申し訳なさそうな顔をして、レヴィアとアリス、ガードル達は面白そうに俺を眺めていた。お前ら後で覚えてろよ。
「いらっしゃーい♪」
リデアさんの屋敷に辿りつくと、領主のリデアさんが直々にお出迎えしてくれた。後ろには、この前見た兎人族の少年執事とセバスチャン、更に後ろには獣人のメイドさん達が勢ぞろいだ。
「ええい! 離さぬか鬱陶しい!」
「えへへ〜♪」
リデアさんは真っ先にレヴィアを抱きしめて胸の中に埋めている。
ドレススーツの上からでも良く判る巨乳の中にレヴィアの顔が沈んでた。
なんといううらやまけしからん。
「正樹さん」
隣で秋葉がニコニコと笑顔で見つめてくる。
笑顔なのに怒りのオーラが見えそうで、すげぇ怖い。こういう所は春香そっくりだ。
こんな所まで似なくてもいいよ!
ガードルはあからさまに鼻の下を伸ばして、エリスに足を踏まれていた。
ジークは硬い性格からか、顔を逸らしてる。俺もそうすればよかった……。
リデアさんに先ほどの事を報告すると、頬に手を当てて「はぁ……」と深くため息を吐いた。
「彼らの狙いが祠だったとはねー。街中の神殿は管理してたけど、過去の祠に関してまでは調べてなかったわ。これは私の責任ね」
「仕方あるまい。祠は古くから各所に点在しておる上に、どういった物かも隠しておった。それにお主の領地は広大じゃ。全てを見るのは無理じゃろう」
「それでもよ。後手に回っちゃったのは痛いけど、これからでも巫女達に祠の浄化を依頼しておくわ」
「それが良いじゃろな」
巫女はどうやら、祠の力を修復する力をもってるらしい。そういえば、フェンも巫女だったな。神喰らいの巫女だが。
「それにしても、随分と大きな卵を拵えてきたわねー。それってレヴィアちゃんとの卵かしら」
ここでも言われるのかよ! しかもレヴィアとの卵って明らかにレヴィアの体格に合わないだろ!
「違うわ! 阿呆!! これはゴールドドラゴンの卵じゃ」
「なるほど。やるわねレヴィアちゃん。今夜は目玉焼きパーティーね!」
「食わぬわ! 本当にお主は食い意地はっておるのぅ」
お前が言うな。この旅の中で一番使ったのはレヴィア、お前の食事代だぞ。
「これを持ち帰った理由はマサキに契約をしてもらおうと思ってのぅ」
「契約?」
「うむ。いつまでもジェノスライノスに頼るのもよく無いじゃろ。あれは数も限られておる上に市民や兵の足となっておる。そこでじゃ、マサキにこの卵と竜の契約をし、儀式にて孵すという方法を取ろうと思っておる」
「いやいや、孵したばかりの雛に馬車を牽かせるのは無理だろ」
「そこは大丈夫じゃ。幼竜であろうと知性はそこらのモンスターよりは遥かに上じゃ。契約さえしてしまえば素直に言う事を聞くじゃろう。力もゴールドドラゴンの雛はジェノスライノスにも引けを劣らぬ。それに、妾の力で強靭で健康な体になるように加護も与えるしのぅ」
ふむ。俺としても早くワイルガードにいきたいし、それに竜ならあのスキルが使えるかもしれない。
竜が手に入るなんて思ってなかったしな。
レヴィアに関しては餌付けに近いが、これをテイムと認識したら色んな意味で拙いだろ。
「契約の儀式ね。それならうちの庭を使ったらどうかしら? 人目につかない安全な場所を探すのも面倒でしょ」
「そうじゃな、ならばその言葉に甘えさせてもらうとしよう」
リデアさんに案内された庭は公爵なだけあって本当に広かった。
庭の樹や花、一つ一つが丁寧な手入れをされていて、ここでパーティーとかもよくやってるらしい。
その庭の隅の一角を儀式の場として借りる事にした。
儀式とやらで庭に被害が出ると庭師が可哀想だしな。
今まで背負ってた卵を柔らかい枯草の上に置く。重くは感じなかったが、ずっと落とさないようにするとなると肩が凝る。
「それで、レヴィア。契約と儀式ってどうするんだ?」
「そう難しいものではない。血を一滴、卵に落とし、妾の言う通りにするのじゃ」
レヴィアが卵に手を付くと、青白い光が卵を包み込んだ。
俺は懐からナイフを取り出して、軽く指先を斬って卵に一滴落とす。
血は卵に落ちると、卵の中に吸い込まれるように染みこんでいった。
すると、卵を包み込んでいた光が蒼から黄色、赤に変わった。信号機か。
続いてレヴィアの言う通り、掌を卵に着けて、ゆっくりと魔力を送り込む。
魔力は卵になじむようにゆっくりと吸い込まれていった。
特に嫌な感じはしないな。どんどん送ってしまおう。
軽く虚脱感を感じ始めたので〈MP自動回復(大)〉〈魔力上昇〉(大)〉を着け、MPを回復しながら魔力を送り込んでいく。
更にレヴィアは聞いたことが無い言語で言葉を紡ぐ。後で聞くとこれは龍言語と言って古代言語の一つらしい。
直に聞いたエリスが、聞き入ってたのが印象的だった。魔法使いにとっては物凄く貴重な体験だったようだ。
レヴィアが力ある言葉を一つ一つ紡ぐたびに卵はドクン、ドクンと脈動する。
赤い光りだったのが次は白く、白銀色に輝くとレヴィアは目を見開いた。
「まさかこやつは……」
何か問題が起きたのだろうか? と思っていると、一際大きく卵が脈動し、ヒビが入る。
「孵るぞ!」
ヒビは段々大きくなり、ついには天辺から大きな穴が開いた。
それを皮切りに次々と穴が広がり、卵から現れたのは――水晶のような鱗を持つ竜だった。
あれ? これってゴールドドラゴンの雛じゃないのか?
そう不思議に思っていると、幼竜は一メートルの大きな巨体で俺に伸し掛かってきた。
ちょっ!? 重い! というか力強っ!?
「がうがう♪」
じゃれる様に俺に伸し掛かってきた幼竜。思いっきり舌で舐めまわされてまるで味見をされてる気分だ。
「まさか、ゴールドドラゴンの卵から希少種の宝玉竜の雛が孵るとはの……」
なるほど、希少種なわけね。そんな事より引きはがすのを手伝ってくれ!
全身を涎塗れにされて、全員で引っ張ってようやく幼竜は俺と離された。
うへぇ、体がべとべとだ。
「がうぅ……」
幼竜は捨てられた子犬のような目でこっちを見ている。くっ。そんな目でこっちを見るな。罪悪感が……。
とりあえず撫でると凄く嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
「マサキちゃん、随分とドラゴンに気に入られちゃったわねぇ。魔力も……何コレ凄いわ。どれだけ送り込んだの?」
「大体魔法使い10人分の魔力だと思う」
因みに、俺の『フル・ヒール』一発分が魔法使いのMP半分くらいだ。装備でブースト掛けてる分が大きいんだよな。
「無茶苦茶ね……マサキちゃん。この子とんでもない魔力秘めてるわよ。力強いのもその所為ね」
「なるほど……。まぁ、いう事聞くなら力強い方がありがたいかな。こいつの親も強靭な体に育ってくれてた方が嬉しいだろうし。それで、レヴィア。これで契約は終わりなのか?」
「いや、最後に名づけが残っておる。一番大事な事じゃからしっかりと決めるんじゃぞ」
名づけか……。苦手なんだよなぁ。流石にポチタマとかダメだろうし。
「クリスタとかどうだ?」
安直だが、水晶という事で。ネーミングセンスとか無いからな!
「がうがう♪」
「お、気に入ってくれたのか?」
「がうっ」
巨大な尻尾をぶんぶんと振って嬉しそうにすり寄ってきた。どうやら気に入ってくれたようだが、尻尾の勢いが強すぎて抉れてるぞ。
無事契約も終わった事だし、俺のあのスキルも使えるかどうか確認をしてみるか。
〈MP自動回復(大〉〉を外し、付けるのは〈サモン・ドラグーン〉だ。これは竜騎士のスキルで契約した竜を呼び出すことが出来る。その他にはこれを付けているだけでドラゴンの位置を知る事が出来たり、送還も出来る。送還した場合はアイテムとして竜玉の中に入るという設定になっている。
こういうのはちゃんとこの世界での仕様を確認しておくべきだろう。
「ちょっと試したいスキルがあるから、皆離れてくれないか」
「何をするつもりじゃ?」
「まぁ、危険な事じゃないから。〈サモン・ドラグーン〉」
スキルを発動すると、クリスタが光り輝き、あっという間に小さな宝玉になった。
宝玉は自動的に俺の手元に収まり、中身を覗くとクリスタが窮屈そうな様子でこっちを見つめている。うーむ、持ち運びには便利だが、あまりこの中に入れておくのは可哀想だな。食事の事もどうなってるか判らないし。
もう一度、〈サモン・ドラグーン〉を発動すると大きく翼を広げてクリスタが現れた。
「ほう、召喚系のスキルも持っておったのじゃな」
「そういうことだ。と言っても契約した竜しか呼び出せないけどな。そういえば、こいつの餌って何をやったらいいんだろうか? 適当に肉でもやったらいいのか?」
「そうですね。マサキ様の魔力を食べて成長するので、餌を与えなくても大丈夫ですが、このように食べ物を与えたほうが成長は良いと竜騎士の方々からお聞きしたことがあります」
そういうとセバスは肉の山をクリスタに差し出していた。
おい、いつの間に用意した。準備が良すぎるだろ。
「執事ですので、こんなこともあろうかと用意させていただきました。」
「それに執事は関係あるのか」
次々とクリスタは肉を平らげていく。
高性能な料理で育てるとどんな結果になるのか気になるところだ。旅をしている間は俺の料理を食べさせよう。〈味の神髄〉も駆使すると予想外の成長が見込めるかもしれない。
「そうそう、マサキちゃん。今回の緊急依頼の報酬なんだけど、折角ドラゴンが手に入った事だし、装甲車とかいらない?」
「え? いいのか?」
「いいのいいの。セバス。量産計画の方は順調だから一つくらい譲っても大丈夫でしょ」
「ふむ、そうですね。まだディノスライオスの育成も終わってませんし、一つくらいなら大丈夫でしょう」
あの快適な馬車を貰えるのは助かる。あれは金を積んでも中々買えそうにない代物だからな。
「それと、契約をしてる証として首輪も付けておくわねー。従属の首輪と言って、使い魔にしたモンスターに着ける首輪よ。それがないと街にも入れて貰えないし、浚われちゃうわよ」
攫う? こいつを攫おうとしたら餌にされるんじゃないだろうか。
セバスが用意してくれた肉の山は全てクリスタの腹の中に納まっている。人なんて一口で食われそうだ。
首輪は魔道具の一つなので、体の成長に合わせて伸縮自在らしい。中にはスキルを使う事によって巨大化や人型になるモンスターもいるからだそうだ。
装甲車は今すぐもらえるというわけにはいかないようだ。調整やメンテナンス、牽くための繋ぎをクリスタ用にカスタマイズする必要があるらしい。
完成するのは早くても三日はかかる。クリスタ用のだとオーダーメイドになるからだ。
その間の滞在はリデアさんが費用を持ってくれることになった。
流石にずっとブタタにあの宿の代金を肩代わりしてもらうのは可哀想だしな。
リデアさんの屋敷は温泉付きで、一面大理石の大浴場に意匠を凝らした彫刻。様々なハーブ湯や打たせ湯まであった。何故かマーライオンまで。昔、異世界人から伝えられたらしいが、誰だよ。伝えた奴。あれは魔除けだろ。
極上の飯と風呂を堪能し、その日は疲れからか早めに眠りに付こうとしたが……。
「やっほー。夜這いかけにきちゃった」
リデアさんが堂々と夜這いかけにきた。何やってんの。
「月兎族は万年発情で性欲が旺盛な種族なの。だからちょっと美味しそうなマサキちゃんを味見に」
「断る。帰れ!」
「帰れってここ私のお家!」
「リデア様。お客様に何をしやがってますか! いえ、もういいです。ちょっとこっちに来なさい」
「あ、セバス。ちょっと待ってー! 少しで良いから味見をー!」
騒がしいので、さっさとドアを閉める。
幾ら美人でも軽々しく味見なんてされてたまるか。
セバスがリデアさんを問答無用に引きずり、「あーん」と嘆く声を無視して、俺はベッドの中に潜りこみ、疲れからか直ぐに夢の中に落ちていった。
何故か夢の中までリデアさんが襲ってきたのは余談だ。勿論追い返した。
感想や評価ポイントを下さるとモチベーションの維持にとても繋がるのでありがたいです。
ペットっぽいのが仲魔になりました。コンゴトモヨロシク
えっちなお姉さん枠としてリデアさん。非攻略対象です。
やろうと思ったけどやらなかった没ネタ
リデア「契約なら私がやってあげるわよー。セバス! 準備して!」
セバス「解りました」
ほんだららった へんだららった どんがらがった ふん♪ ふん♪
正樹「アウトーー!? ネタが古すぎる!」