死者の群れ
仕事内容が変わり、夜遅くまで作業が難しくなりました。週二回で投稿ペースは護る予定ですが、今日のように金曜日投稿とずれ込む可能性がありますがご了承ください。
――素晴らしい――
パラケルススは久しぶりに感じる強者との戦いに喜びを感じていた。
屍を操る能力は、ほぼ無限の戦力を持つに等しい。自分一人であれば街や小国まで容易く滅ぼせるほどに。
彼に戯れで滅ぼされた街や小国は数えきれない。
今パラケルススの目の前で繰り広げられているのは、一方的な戦いだ。
しかし、それはいつも見た自分から一方的な虐殺ではなく、逆に蹂躙される勢いで繰り広げられる戦い。
パラケルススが望むのは戦いそのものだ。何より望むのは強者との戦いだ。
正樹達の戦いを見て、思わず笑みを零す。
「(さぁ、異世界人達よ。もっともっと、踊ってくれたまえ。劇を壊すほど激しく。この下らないショーを壊してくれたまえ!)」
内心『パヴェリア』に背くような応援を送りつつ、新たな屍を生み出して正樹達へ差し向ける。
パラケルススは目的を既に達成している。後は残った時間の限りを楽しむだけだ。
◇◆◇
もうどれだけの骨を倒したか分からん。
最初の内は数えていたが100を超えてからもう数えるのが面倒になった。
というのも、あまりにも数が多すぎるんだよ。この数って下手すると小国の兵士を上回るぞ!
しかもそれに輪にかけて厄介なのがアンデットの多様性だ。
スケルトンからゾンビ、ボーンハウンドにゴースト、スケルトンタイガー。中にはダマスクリザードボーンまでいる。空からはスケルクロウといった鳥型のスケルトン迄襲い掛かってくる。
〈鑑定〉を付けっ放しだった所為で名前もHPMP、状態も見れるがこれって魔力を込めてみたら詳細まで見れるのだろうか? まぁ、後回しにしよう。
それにしても、銃器組が酷いのなんの。秋葉はショットガンで周囲の敵を吹き飛ばした後、アサルトライフルで先の敵を撃ち抜き続ける。
勿論、撃ち尽くせばリロード時間もある。その隙を逃すほど敵は甘くはない。
動きが遅いゾンビとは違い、ダマスクリザードボーン、ボーンハウンドやスケルトンタイガーは骨だけで構築された分、動きが俊敏だ。あっという間に秋葉に近づこうとするが。
「近づけると思うな!」
ジークがレールショットガンで吹き飛ばす。レールガンだけでも凶悪なのに、それをショットガンにしたのはゲーム製作者の正気を疑う。良いぞもっとやれ。
電磁加速された弾丸は、頑丈なエイリアンの体をも木端微塵に打ち砕く。骨ごときが耐えられるわけがないので、一番頑丈なダマスクリザードボーンでさえ骨屑と化した。
威力は高いが、この武器にも欠点がある。一度打つと冷却に時間がかかり連射が利かない事だ。だが、それを補うのが秋葉のアサルトライフル、そしてジークの持つチェインアサルトライフル(チェンソー付き)だ。
交互に繰り広げられる銃弾の雨に、ゾンビの群れは為すすべもなくやられる。だが、如何せん量が多すぎる。一向に減る気配が無い。
それは俺達近接組にも言える事だ。
今回のスキル構成はこんな感じだ。
パッシブスキル:〈武神の心得〉(近接戦闘能力上昇(大)身体能力上昇(特大))〈気配感知能力上昇(大)〉〈HPMP自動回復(大)〉
アクティブスキル:〈鑑定〉〈波動剣〉〈イグニス〉〈ホーミングシュート〉〈震脚〉〈六道千塵〉〈波動の太刀〉
『ロストドミニオン』と『セブンアーサー』で目の前のゾンビを切り刻んだ後、ゾンビ達を押し潰して駆け抜けてきたのはボーンナイトライダーだ。
騎士の成れの果ての姿のようで、馬も騎士も頑丈そうな鎧を着けている。
ボーンナイトライダーが速度を落とさずにさびた剣を振り下ろしてくるが、それより一瞬早く相手の懐に飛び込み、X状に骨馬ごと切り裂く。俺の後ろで骨がカランカランと、崩れ落ちる音が聞こえるが見てる暇なんてない。もう次が来ている。
迫りくるスケルトンタイガーの頭に狙いを定め、剣を振り上げる。
勢いのついたスケルトンタイガーは避ける暇も無く、剣に吸い込まれるように切り裂かれた。
その上からボーンハウンドが襲い掛かってくるが、スケルトンタイガーを切り裂いたのは『セブンアーサー』だ。追加攻撃が3回分発生し、ボーンハウンドの足を巻き込んで粉々になっていく。
突如足を失ったボーンハウンドは空中でバランスを崩す。無様に落ちる前にもう片手で『ロストドミニオン』を振りおろし、粉砕する。
次の敵を見やると、少し遅れてスケルトン達が近寄ってきている。
ゾンビやスケルトン達の壁に阻まれ、後ろに居るホーンタイガー達は進めないようだ。
この好機を逃すわけにはいかない。一気にここで数を減らす!
二つの剣を水平に重なるように合わせ、〈波動の太刀〉を発動させる。
数多の武器のオーラが剣に集まり、6メートルを超える光る大太刀となって現れる。
二刀流から一刀に変わったが、これにはそれを補うだけの殲滅力がある。
レヴィアとの訓練で身に着いた動きを、一挙手一投足寸分の狂いなく、〈波動の太刀〉の動きに合わせていく。
足を踏み込んだ瞬間、視界がブレた。
訓練のお蔭か、〈波動の太刀〉を自在に操る事が出来た。
速度に振り回されずにスローモーションに感じる時の中、太刀を横薙ぎ、更に返す刀で切り裂いていく。
一瞬の内にゾンビたちの後ろへと通り過ぎた。
その直後、ほんの少し遅れてゾンビ達の体が二つに分かれ、消滅していく。ゾンビもスケルトンも、ゴーストも分け隔てなく数百のゾンビ達が消滅していった。
バリーの時以来、使ったきりだが相変わらず凄い威力だな。しかしゴースト系まで斬れたのはどういうことだろうか。二つの剣、両方とも属性は付いてないからダメージは通りにくいはずなんだが……。
「思った以上の成果が出ておるのぅ。教えた方もこれなら鼻が高いぞ」
「ゴースト系まで斬れるとは思ってなかったがな」
「斬れて当然じゃろう。主のそのスキルは気を纏っておる。故に霊体であろうと問題なくダメージは通るぞ」
スタッと軽い音を立ててレヴィアが俺の隣に降りてきた。
陣形組んだのにレヴィアまで前に来ていいのかよ。
「早く倒すのであろう? ならば引きこもっておるより、妾とお主で暴れ回った方が効率的じゃ。ガードル達にはアキハ達の背中を護るように頼んでおる」
確かに俺とレヴィアの力なら、言い方が悪いが近くに仲間がいたほうが邪魔になる。
殆どダメージを受けない二人だ。レヴィアの言う通り前で暴れる方がよっぽど効率的だ。
「なら、背中は任せたぞ」
「うむ、任せぃ♪」
切り裂かれた間を埋める様に、次のアンデットの群れが襲い掛かってきた。次は狂獣をゾンビ化した奴らが中心だ。こいつどれだけ引出持ってるんだよ!
「「「グオォォォォォォ!!」」」
大地を揺らすような咆哮と共に、様々な狂獣アンデット達が襲い掛かってくる。
近接されればその頑丈な体と巨体で吹き飛ばされるだろう。
ならここで使うのは〈イグニス〉だ。
アイテムボックスに剣を二本とも仕舞い、10本のダマスクスローイングナイフを取り出す。持てなかった分が地面に突き刺さるが、これでいい。
「〈イグニス〉!」
〈イグニス〉を発動させると、全てのナイフが青白く光り、宙に浮き始める。
「おお、何じゃそれは?」
「まぁ見てなって」
青白く光るナイフを狂獣アンデットに向けて投げ、全てのナイフが敵に突き刺さるようにイメージする。
すると、ナイフが俺の思った通りの軌道を描きながら飛び、狂獣アンデットの体を削っていく。
〈イグニス〉は投擲武器を操り、自動で攻撃させるスキルだ。フィン・ファン○ルをイメージすると判りやすいかもしれん。
欠点は〈イグニス〉を発動中はずっとMPを使う事だが、魔方も使えない今ではMPは有り余っている。それにHPMP自動回復(大)で十分補える範囲だ。流石に『ウィング』を使えばどうなるか分からないが、そのうちやってみたい。
「中々に面白いスキルじゃのぅ。なるほど。それでナイフを作った訳か」
「剣だと上手く行くか判らなかったしな。材料の問題もあるし」
こうやって喋っているが、二人とも手は休めていない。俺は再度二つの剣を取り出して〈波動剣〉で切り裂き、レヴィアは拳で吹き飛ばしているが、うっすらと両手に光を纏っている。
後で聞いた話だが、これは〈龍闘術〉という身体強化スキルらしい。物理攻撃に『龍気』という力を乗せ、ゴースト系にもダメージを有効に与えられるスキルだ。勿論、普通のモンスターが食らってもひとたまりも無い。
「マサキ、妾が薙ぎ払う。援護を頼んだぞ」
「判った!」
互いに頷いて、軽くレヴィアが跳躍し、6枚の龍の翼が展開される。
翼は光り輝き、力を溜めこむ。
レヴィアが飛んでいる隙に、〈震脚〉で周りの敵にまとめて衝撃波を叩き込んだ。
これは味方がいると巻き込むから使えないスキルなんだよな。だが、レヴィアは俺のこのスキルを鍛錬で何度も見ているし、熟知していた。
地面から来る衝撃波に狂獣ゾンビ達は一斉に動きを止める。空に逃れた敵は〈イグニス〉によって撃ち落とされて地面に落ちた。
一瞬の攻防の間に、レヴィアの攻撃の準備が整った。
「消し飛べ! 〈ショックウェイブ〉!!」
レヴィアの背に6枚の大きな龍の翼が生え、小さく小刻みに振動させると、周囲に音の衝撃波をまき散らした。
音自体は聞こえないが衝撃だけが辺りに破壊をまき散らしていく。超音波爆弾という方がしっくりくるかもしれない。
まぁ、俺もその攻撃に巻き込まれてる訳で。
この攻撃は音が聞こえないかわりに、耳鳴りが酷い。
《無敵》でダメージは受けないとはいえ、ずっとキーンと耳鳴りがするのは不快だ。
レヴィアの場合はこの攻撃の他の幾つかスキルがある。そのうちの一つブレスは圧倒的な火力を誇り、地形すら変えてしまう。
「くぅ……頭がくらくら来る。もうちょっとマシな攻撃は無かったのか? ブレスとか」
「良いではないか。ほれ、すっきりしたであろう」
「そうだがなぁ……はぁ」
レヴィアの言う通り、周辺に居たアンデット達は全て、〈ショックウェイブ〉によって跡形も無く粉砕されてしまった。〈イグニス〉によって体を削られ、〈震脚〉と〈ショックウェイブ〉の地面と大気の同時攻撃はアンデット達を殲滅してしまったようだ。
跡地にはパラケルススだけが佇んでいる。その表情は驚きから口角を上げて嬉しそうな笑みを浮かべている。
「あっはっはっはっは!! 素晴らしい! 実にすばらしい力をお持ちだ! これは退屈な仕事になると思ったが非常に楽しめそうだ! あぁ! 君たちを好きになってしまいそうだ!!」
恍惚とした笑みを浮かべながら、拍手をするパラケルスス。
いや、こんな奴に好きになってほしくない。丁重にお断りしたい。
「あとはお前一人だ。『パヴァリア』の事について詳しく聞きたいが……、お前はこの場で仕留めておいた方が良さそうだ」
このアンデットの群れを国に向けられたら大惨事しか見えない。
情報も欲しいが、こいつはこの場で仕留めるに限る。
俺は〈イグニス〉を操作し、全てのナイフがパラケルススを囲むように配置し一斉に放つが、突如発生した光る竜巻によって全てが弾き落とされた。
「なっ!?」
竜巻がやむと、その後にはパラケルススと一人の男が立っていた。
男の手には近未来的な武器を持っている。この武器は次郎から聞いた……ビームセイバーだったか。という事はこいつは『ハンター』か!?
しかし、前に見た時はサングラスを掛けて。黒髪オールバックだったはず。だが、目の前に現れたこいつは茶髪の短髪だ。良く見えるとイケメンだ。
「パラケルスス。何を遊んでいる。こんな騒ぎは計画に入ってないぞ」
「これは私の所為ではありませんよ。功を焦った実験体が勝手に動いたのを処罰しただけです。この地のは最後にする予定とあれほど言いつけておいたのですが」
「……嘘を吐くならもっとマシな嘘を吐け。どうせ面白いからと黙っていたのだろう」
「ばれましたか。『ハンター』、後でデータを渡すのでそれで勘弁してください」
「ふん。それと、『ハンター』の名は捨てた。祠の破壊が終わったならさっさと引き上げるぞ」
「祠じゃと!? お主ら! 何をしたのか判っておるのか!」
手を出せず、様子を見守っていたレヴィアが突然大声を上げた。
いきなりの事でびっくりしたが、よっぽど大変な事だろう。
しかし、『ハンター』で合っていたようだが、あの二つ名を捨てた? どういうことだろう。
「ええ。判っておりますよ。ヨルムンガルドの力を削がせて貰っております。いい具合に魔力嵐も広まりましたし、実に順調です」
「パラケルスス。余計な事は言うな。それ以上言ったら貴様でも斬るぞ」
「おお、怖い怖い。虚空だけは敵に回したくありませんからね。楽しめましたし、今回はこれで帰りましょうか」
虚空。それがこいつの名か。
パラケルススは大袈裟に両手を広げながら竦み、地面を覆っていたヘドロを自分中心にかき集め、元の荒れ地と化した大地を露出させていく。
このまま帰すと厄介なことになるな。面倒事はさっさと片付けるに限る!
「レヴィア!」
「判っておる! この場で消え失せろ!」
咄嗟に俺とレヴィアが二人に飛びかかるが、それは大きな壁によって阻まれた。
いや、これは壁じゃない。……ドラゴンだ。
全長が6メートルもありそうなドラゴンが突如、俺達の前に現れて立ち塞がった。
「ゴ、ゴールドドラゴン!? しかもアンデット化してやがる!」
後ろでガードルが悲鳴にも似た声を上げていた。こいつがゴールドドラゴンか。
くすんだ鱗からは金色がところどころ見える。だが、綺麗なのはそこだけだ。
全身は黒くくすみ、鱗は所々が剥げ落ちて肉や骨、内臓までが露出している。
瞳も無く、無の眼を映すモノは何もないが、文字通り腐ってもドラゴン。威圧感がこれまでのモンスターとは比べ物にならない程強い。下手するとバリー以上だな。
「それではこれにて退散しましょう。ああ、そうです。有益な情報を渡すと言ってましたね。『英雄』マサキ。獣王祭にて待ってますよ。第二幕、楽しみにして下さい」
「パラケルスス。本当に斬られたいか」
「ふふふ。これ以上喋ると本当に斬られそうですね。では、御機嫌よう」
「おい! 虚空! お前は何故そんな奴等と一緒にいるんだ! そいつらは帝国を裏で操っていた奴らなんだぞ!」
大声を上げて俺は虚空に呼びかける。同じ異世界人だ。
何故、あんな奴らに組みしてるのか聞いておきたい。隷属の首輪も無いことから強制的ではなさそうだが……。
「……俺達は世界を壊す。それだけだ」
「はあ!? 世界を壊すって何故」
「パラケルスス、出せ」
「おや、いいのですか?」
「おい! 俺の話はまだ終わってないぞ!」
「これ以上の問答は無意味だ」
「ふふ、では、今度こそ御機嫌よう」
バサリとゴールドドラゴンゾンビは巨大な翼をはためかせ、空を飛び始める。
「させないヨ! 〈ジャスティスブレード〉!!」
今まで後ろで秋葉達を護っていたダンが、空を飛び始めたゴールドドラゴンゾンビに向けて斬り込んでいく。手刀だが、光っているから斬れるのだろうか。
ゴールドドラゴンゾンビに当たると思った瞬間、一際大きく翼をはためかせて急上昇。
ダンの攻撃はスカっと宙を斬り、腹部の薄皮を一枚斬るだけで終わった。
「アアアーーー!?」
更に勢いがついたダンはそのまま森に頭から突っ込んでいく。お前は何をしに来たんだ。
「ダン! よくやった! アキハ! 準備はいいな!」
「はい! いつでも撃てます!」
後ろを振り向くと、二人ともライフルを構えていた。ダンはジークの指示で突っ込んでたのか。
秋葉は対物ライフルを構え、ジークのは……十字架のような馬鹿でかいライフルだ。
先端に杭が見えるが、パイルバンカーも兼ねているのか? 無茶苦茶だな。
「シュート!」
「吹っ飛ばしてやる!」
既に俺の射程外に逃れていたゴールドドラゴンゾンビに向かって、二人の銃弾が迫っていく。
「GUUUU!?」
「おお!?」
「チッ!」
二人とも凄腕のスナイパーだ。寸分の狂いなく、ゴールドドラゴンゾンビの頭を吹き飛ばした。
頭を失ったゴールドドラゴンゾンビは、紫色の煙を上げながら地面へと落ちていく。
「やれやれ貴重なドラゴンでしたが、諦めるしかなさそうですね」
「貴様が遊ぶからだ」
パラケルススが翼を広げると、大量の鴉が現れた。
鴉の軍団は二人の足場になると、急上昇を始める。
「チッ! あの角度じゃ狙えん!」
「私もです……」
直線距離でなら秋葉の射程は3キロだが、角度が急すぎると流石に無理か。
落ちてくるゴールドドラゴンゾンビを見ていると、ダンに斬られた腹部から何か白いのが出て来ていた。
あれは……卵? 体内で卵を護っていたのか。珍しい種類だな。
落ちるにつれて、卵が少しずつ押し出されるように外に出て、ついには卵が落ちた。
「マサキ! あれを捕まえるのじゃ!」
「はい!? なんでだよ!」
「いいから速くせぬか!」
レヴィアの鬼気迫る迫力に負けて俺は渋々、跳躍し卵を抱きかかえる。
このままだと地面に激突して割れるのは免れないだろう。
地面から2メートルの所で『ウィング』を発動。一瞬だけ浮遊を得るが、直ぐにマナが拡散し地面に降り立つ。衝撃を抑えるくらいなら何とか使える程度だ。
ズウウン! と大きな地響きが辺りに響き、ゴールドドラゴンゾンビが地へと墜ちた。ダンがもし、腹を斬らなければ確実に割れてたな。
抱きかかえた卵は流石ドラゴンの卵というべきか。1メートルもある巨大な卵。
産み立てほやほやでまだ温かい。腐ってはいないみたいだな。
まさかこいつを食べようと思って……。
「マサキよ。さすがに妾もこれを食おうとは思っておらぬぞ」
顔に出てたようで先に言われた。
しかし、見事に逃げられてしまったな。いや、ゴールドドラゴンゾンビを前もって仕留めれただけ上出来か。
「逃げられた……か」
世界を壊す……、その時に見た虚空の瞳は誰よりも暗く、揺るがない決心を潜ませていた。アイツに何があったのだろうか。
「マサキよ。今は戻ろうぞ」
「あ、ああ」
今は考えても仕方ないか。アンデット達を倒した事で良しとしよう。
ゴールドドラゴンゾンビはいい素材になるという事なので、俺のアイテムボックスの中に仕舞う事にした。
俺は駆け寄ってきた秋葉を抱きしめて、『サウンシェード』へ帰っていく。
卵を背負ったまま。レヴィア、これどうするんだよ。
感想や評価ポイントを下さるとモチベーションの維持にとても繋がるのでありがたいです。
レヴィアと正樹に暴れさせたらこんな結果に。他のメンツなら苦戦する事必死なんですがね……。
近代兵器の重火器はやっぱり凶悪ですね。まだロケラン打ってないだけ優しいと思います。
出番は少なかったですが、ダンも後ろで頑張ってました。




