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穢れ

※残虐なシーンが一部あります。ご注意ください。

 門の前まで来ると、そこには既に領主であるリデアさん、兎人族の執事セバスと見習いっぽい兎人族の執事少年。そしてダンとジークが集まっていた。

 ジェイムズはどうやら盗賊のアジトを探しに行ったまま、まだ戻ってきてないようだ。

 『狩人』にも〈気配感知〉のスキルがあるから、いたほうが助かるんだが、まぁ何とかなるだろう。


「やっほー。突然呼び出してごめーん!」


 軽いなおい! 街の近くで土地の穢れが起きてるんだぞ。それでいいのか領主。


「マサキ、コヤツはそういう奴じゃ。一々気にしておったら切りが無いわ」


 レヴィアがため息を吐いていた。確か知人だったな。軽いのは昔からという事か。セバスも少年も苦労してるだろうな。


「そ、そうか。それでだな、リデアさん。その穢れを見つけた人は?」


「今は落ち着かせるために休ませてるわ。何か怖いモノを見た感じで錯乱してたわ。第一発見者は商人と護衛の冒険者達ね」


 話を聞くと、行商人が用を足そうと道を外れたら、円形に土地が枯れた場所を見つけ、そこで何者かと戦闘になり、急いで逃げ帰ったと説明してくれた。

 冒険者達にも襲ってきたので応戦したが、圧倒的な力で3人の前衛が殺されてしまった。と命からがら逃げかえった冒険者達と商人が語ったようだ。

 命が救われた冒険者は弓使いと薬剤師。後ろに居たことが明暗を分けたようだが、今は怯えて碌に話も出来る様子ではないらしい。


 なるほど、それでこのメンバーか。ガードルも二つ名持ちだし、何かあっても戦力としては問題ない。ジーク達は言うまでもない。

 

 ジークは俺達のパーティーに組み込むことにした。ダンはガードル達だ。決して押し付けたりなんかしてない。決して。大事な事だから二回いう。

 ガードルが交換しろと目線で訴えるが、無視。

 実力もあるし防御性能も高いのだからダンをうまく使ってほしい。

 

 リデアは屋敷でこの件についての仕事があるようだ。門には俺達に依頼を出す為にこの場に来たようだ。

 流石に付いてこられても困るし、そっちの方が安全だが、実はものすごく強かったりしてな……。


 今回の依頼は『難易度A級依頼。土地の穢れの調査』だ。

 既に冒険者の死者が出ていることから相当難易度が上がっているようだ。


 二つのパーティーに分かれて俺が索敵も出来るので最前衛、中衛に秋葉とレヴィアとアリス、最後尾は遠近対処が出来るジークだ。その後ろにガードル達が着く形になっている。

 

 以前、ジークの戦いを見せてもらったがごつい銃で殴り倒し、チェンソーで切り裂くという猟奇染みた攻撃だった。

 【サターン・ウォー】の敵はエイリアンだ。鉄のような頑丈な敵もいた。

 相手がエイリアンからモンスターに変わっただけだが、生で見ると本当にすごいと思う。

 

 遠距離攻撃はガトリングからライフル、拳銃にグレネード。ダイナマイト付きクロスボウなどがある。秋葉とこの辺りは似てるな。ダイナマイトは無いが。

 秋葉はガスマスクやライト、医療キットに戦車修復用のバーナー迄あるから、秋葉の方が汎用性が非常に高い。ジークはどちらかというと攻撃一辺倒だ。

 

 真ん中に秋葉とレヴィアを挟みながら進む。

 途中で狂獣やモンスターが襲ってきたが、この面子の敵じゃない。あっさりと蹴散らして先に進んだ。

 

「俺達があんなに苦労した狂獣もこんなにあっさりかよ……」


 ガードルが何か愚痴っていたが、しょうがないと思う。

 多分、この混成パーティーはこの大陸でトップクラスだと思うぞ。

 他に異世界人組でパーティー組んでいたら判らないけどな。

 

 で何事も(戦闘が何回かあったが瞬殺)無いまま、目的の場所にまで辿りついた。

 マップを見ると赤い反応がある。出会う前から敵性の反応だ。


「全員止ってくれ。この先に敵性反応が8つ。こっちの気配に気づいた様子はないが、好戦的なのには間違いないようだ」


「ううむ」


「レヴィア、どうした?」


「なんか妙な気配じゃな。人であるような無いような」

「うん、凄く嫌な感じがする。人だけど人じゃない?」


 レヴィアとアリスの二人が妙な気配か。人であって人じゃないか。


「どちらにせよ、今は行くしかないだろう。マサキ。俺とお前でいくぞ」


「ああ。秋葉とレヴィアは援護を。アリスは魔法で支援を頼む」


「分かった」

「うむ」

「りょーかい!」


 ガードル達はダンとガードルを前衛にして俺達に並んでいくつもりのようだ。

 道なき道を駆け抜け、開けた場所に出るとそこには森の中とは思えない光景が広がっていた。

 局地的な荒地と言えばいいだろうか。その周囲だけが草木が枯れ果て、大地が枯れてひび割れていた。

 その中心には黒い人型。見た目は頭に角が生えて全身に禍々しい鱗を生やした獣人……なのかアレは。頭が獅子や虎、鳥、猫人もいる。初めて見る奴もいるな。手がカマキリの様になっている奴。あれが話で聞いた蟲人か? しかし、全員が所々がおかしい。

 全員に共通してるのは黒い角と鱗だ。まるで邪竜のような雰囲気を醸し出している。


 奴らの中心には何かが埋まって……、あれは……。

 

「正樹さん、あれ……人ですよ!? 人が埋められてるっ!」


 秋葉の悲鳴のような声を上げて指を差す。

 目を凝らすと骨が見える程、痩せた熊人族が苦しそうに呻き声を上げていた。

 

 そして、熊頭族が手に持った斧を天高く掲げ、振り下ろそうとする。

 

 させるか! 俺はアイテムボックスから即座にスローイングナイフを取り出し〈波動剣〉〈ホーミングシュート〉で腕を狙い、投擲する。

 

 光の軌道を描きながら、ナイフは熊頭族の腕に向かい伸びていく。

 だが、それよりも早く、秋葉とジークの二人のライフルが熊頭族の腕を打ち抜いた。

 

 うん、流石に俺のナイフ投げも弾丸には勝てんわ。

 

 二人から高威力のライフルで腕が千切れかかっていた所に、俺のスローイングナイフが遅れて突き刺さり、腕を切断した。


「グアァァァア!?!?」

「ダレダ!」

「テキダ! コロセ! コロセ!!」

「ヤッテヤル! ヤッテヤルゾ!!」


 不意打ちに気付いた獣人達が武器を手に俺達に向かって走ってくる。

 腕を落とされた獣人も残った片手で斧を持ち走ってくるが、痛みの為か動きが遅い。

 

 走りながら〈波動剣〉〈ホーミングシュート〉のセットで攻撃するが、今度は大剣や大斧で防がれてしまった。

 しかし、威力が高い所為で二人の獣人は武器を大きくはじかれたようだ。

 

 その隙を逃す俺達じゃない。三本目のスローイングナイフを投げつけ、秋葉とジークのライフル、シブラの矢やダンのビームによってがら空きになった胴体に遠距離攻撃の雨を受けて吹き飛ぶ。


「ギギギ! コイツラツヨイ!」

「ニゲルカ?」

「ニゲテドウスル! アノカタニコロサレルゾ」


 あの方? こいつ等の後ろ盾がいるようだな。まぁ、明らかに姿とか変だしな。

 さっさと捕えて《ログ解析》で調べてしまおう。

 

 残り6人にまで減った黒い獣人達は死に物狂いで攻撃を仕掛けてくる。

 鳥人族は空から仕掛けてきたが、秋葉とジーク、シブラにとってはただの的にしかならない。

 速度が乗り切る前に両翼を打ち抜かれ、シブラの矢は鱗によって弾かれたが、額に当たり昏倒した。そこにジークが腹を踏みつけ、チェンソーを突き刺して刃を回転させる。

 

 

 ――ギュルリリリリリリ!!――

 

 

「ガガガガァァァァ!!!??」

 

 ビクンビクンと体を痙攣させながら、鳥人族は体を開かれ息の根を止められた。返り血を浴びたジークはまるで何もなかったように次の敵へと狙いを定める。

 見せられないよ! ってレベルじゃねぇ!

 ジーク。猟奇的な光景に皆、ドン引きしてるぞ。

 

「ナ、ナンテヤツダ!」

 

 俺の前には獅子頭族がジークの残酷な攻撃に意識をあっちにやってしまっている。

 隙だらけっと。

 

〈波動剣〉で首を刎ねて一撃で仕留める。人前でよそ見はいけないなぁ。


 隣を見ると、ガードルが二刀流の蟲族の攻撃を巧みに捌き、隙を見つけては攻撃を繰り返していた。堅実だが確実にダメージを与えているな。

 

「ギギギ、強靭ナ鱗ヲ手ニ入レタノニ、何故攻撃ガ通ルノダ!? タカガ鉄ノ剣ガ何故!」


「残念だったな! こいつはとっておきなんだよ!!〈クレセントスラッシュ〉!」


「ギャカカカ!?」


 下段の構えから、三日月状の光を描きながら剣を振り上げると、武器ごと蟲人族の体を寸断した。


「グギギギ!!」


 うえっ!? 身体が真っ二つになったのに、まだ生きてるのか。

 這いながらガードルに向かってるみたいだが、そこにエリスのメイスとグンアの槍によって今度こそ止めを刺された。

 蟲人族ってこんなに生命力が強いのか。恐ろしいな。

 

「どらごんあっぱー!」


「コ、コンナハズハー!」


 隣ではレヴィアが飛び上がりながらアッパーカットを猫人族に喰らわせていた。

 あれ、顎が砕けてないだろうか。


「これでもくらえー! 『ブルーランスボルト』!」


「シバババババ!!?!??」


 空中で身動き取れない状態で猫人族が電撃の槍を受けて、煙を噴きながら落ちてきた。ピクピクと痙攣はしてるから一応生きてはいるみたいだな。やり過ぎなような気がしないでもないが、やらないとこっちが危ないから仕方ないとしよう。

 

 残った二人は仲間があっさりとやられた事におじ気ついて、武器を構えながら後ずさりをしていた。


「イイイ、命ダケハ助ケテクレ!!」

「何デモ言ウ! 何デモスルカラ!」


ん? 何でもするって言ったよね。


「フフフ。何でもすると仰いましたね。貴殿達」


 そうそう。何でもすると……って誰だ!?


「全員! 下がれぃ!」


 レヴィアの焦ったような声に俺達全員は咄嗟に後ろに飛び退くと、黒い獣人達を中心に黒いヘドロのようなものが広がり、荒れ地となった土地を黒いヘドロで染めていく。

 困惑している黒い獣人の二人の後ろにゴポリと、泥のように地面が盛り上がり、割れると中から黒い鴉のような獣人が現れた。

 しかし、こいつの身にまとってる雰囲気が異質すぎる。《無敵》を張っていても悪寒が止まらない。

 秋葉が震えながら、鴉のような獣人を指差す。


「正樹さん……。あれ……何なんですか?」

「判らんが……全員、迂闊に動くな。あれはヤバい……!」


 この悪寒には覚えがある。バリーの時と同じだ。だが、こいつから感じる威圧感も悪寒もバリーとは比べ物にならない。


「ア、ア、ア、アア」

「オオオ、オ許シ下サイ。“パラケルスス”サマ」


 その威圧を間近で受けている黒い獣人二人は小鹿の様に足を震わせ、失禁しながら今にも気絶しそうだ。

 

「許すも何も、何を勘違いしているのですか」


「「エ?」」


「いやぁ、実に見事です。このように街に近い場所を汚染するとは実に見事。褒めて差し上げますよ」


「ハ、ハァ……」


「更にこのように強い者達、それも異世界人を4人も! 実にすばらしい働きだ。そんな君らには褒美を差し上げよう」


「「ヒッ!?」」


「さぁ、受け取りたまえ」


「ヒ、イヤダァァァ!」

「タスケテェェェ!!」


 黒い獣人二人が、目の前で黒いヘドロの中に引きずり込まれていく。

 それだけじゃない。レヴィアとアリスによって気絶した猫人族も倒れたまま黒いヘドロの中に飲み込まれていく。

 

「お前は……一体何者だ?」


「おお、私としたことが紹介が遅れました。私は『パヴァリア』の一員、『パラケルスス』と申します。『英雄』マサキ殿」


 パヴァリア!? まさかこんなところで会うとは。しかも俺の事も知っているようだ。


「帝国の一件は実に見事でした。まさか『ノーフェイス』の自信作を打ち砕くとは」


「ノーフェイス……そいつが帝国を裏で操ってた奴か」


「おや、アレは名乗りもしてませんでしたか。ヤレヤレ、失礼な奴ですねぇ」


 仰々しく腕を広げるパラケルスス。黒い羽根が舞い落ち、ヘドロの中に飲み込まれていく。こいつの性格を表す様にまるで底なし沼のようだ。


「主らは何を企んでおる! この地で何をするつもりじゃ!」


「ふふふ、それをここでネタばらししても面白くありませんよ」


「そういう問題ではないわ! 素直に喋らぬというのならば、力づくで聞き出すまでよ!」


 「おやおや、せっかちはいけませんよ。水神リヴァイアサン。そうですね。このように役者が揃ったことですし、1つ面白い事をしましょうか」

 

 そういうと、パラケルススは地面に手を突き、何かしら呟く。

 その時だった。アリスが怯えながら俺にしがみ付いてくる。その顔は今まで見たことが無い程に怯えきっていた。


「アリス! どうしたのじゃ。しっかりせい!」


「ダメ、レヴィア! あれはダメ! 精霊が、皆が止めてって泣いてる! あれは、死者を呼び出そうとしてる! それも一体や二体じゃない! 一杯! 沢山くるよぉぉ!」


 アリスが耳を押さえながら怯えきってフードの中に隠れてしまった。

 余りの恐怖にフードの中で泣いているようだ。

 

「フフフ、妖精にはこの力は堪えたようですね。もし勝てたのならば、有益な情報をお渡ししましょう。勿論、逃げても構いません。その場合、この者達がどう動くか保証はしませんけどね」


 目の前のヘドロの中から出てくるのは骨や腐乱死体、中には半透明なゴーストが大量に、文字通り湧いて・・・出てきた。

 マップを見るとヘドロの中だけじゃない。俺達の周囲全体が赤い敵性マーカーで埋め尽くされている。数は百や二百じゃすまないな。千体以上のアンデッドが取り囲んでいる。


「良く言うわ。これだけのアンデッドを放置しては、近隣の街を襲うに決まっておろう」


 そうだよな。アンデッドは、生きている者の生命を感知して襲う性質がある。

 しかも、この近くで一番近いのは『サウンシェード』だ。

 この千を超えるアンデッドの群れが街を襲えば、阿鼻叫喚の地獄絵図となるだろう。

 Sランクのブタタや他の冒険者達が居るとはいえ、被害が出るのは免れない。

 

 逆に、ここで俺達が逃げ出さなければ一番近い生命は俺達という事になる。

 全員で背中合わせになり、後衛を中心に円形状に陣形を取る。


「おい、ガードル、ジーク。やれるか?」


「当たり前だ。ここで逃がすわけにもいかねぇ。それに物語みたいな英雄も憧れてたんだよ。格好の舞台じゃねぇか」

「愚問だな。このふざけたショーとやらには付きあってられんが、これだけの敵を放置するなぞ出来るわけがない」


 リーダーのガードルの言葉に仲間達も意志は同じだ。慣れ親しんだ街だ。

 秋葉もレヴィアも引くつもりは更々ない。秋葉は銃をライフルから一番範囲が広いショットガンに持ち替えている。

 ジークは……火炎放射かよ。ごつい体格に加えてそれを持つと世紀末感が増すな。

 

「さぁ、ショーの第一幕の始まりです。見事乗り越えてください」


 くそっ。まるで演劇扱いか。

 

 津波の様に襲い掛かってくる千を超えるアンデッド。それに対するは9人の冒険者。アリスは使い物になりそうにないから、今は引っ込ませた方が良いだろう。

 

「ウオオォォォォォォォ……!!」

 

 死者の呻き声が穢れた大地に轟き、それを合図にアンデッド達が突撃してくる。

 こうしてくそったれなショーが始まった。勿論、相手の思う通りにはさせないけどな!


感想や評価ポイントを下さるとモチベーションの維持にとても繋がるのでありがたいです。


次回は久々のそれなりの規模の無双タイムです。

普通なら苦戦必至ですが、まぁ相手が悪いですね。


ジークと秋葉の区別を分けたら、ジークの武器が相当ひどいことに。敵はバラバラになった!

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最近はこちらの方も日曜更新で頑張ってます。 宜しければこちらの方も感想や評価諸々を下さると大変喜びます。 TSさせられた総帥の異世界征服!可愛いが正義! re:悪の組織の『異』世界征服記~可愛い総帥はお好きですか~
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