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VS(変態)ヒーロー

6月8日、22時半に一部内容を修正しました。

「ヘイッ! そこの悪党ども! 訂正しろ! 俺はヒーローで変態じゃない!」


「いや、どう見ても変態だろう」


 辺りを見渡すと、男共は唖然としてるし、女性達はキャーキャー騒いで逃げ出したぞ。一部はガン見してるけどな。

 秋葉も顔を赤くして俺の後ろに隠れている。レヴィアは汚らわしいものを見た感じでしかめっ面だ。 アリス? まだ酔ってて樽の上で突っ伏してる。


「嘘はよくないねっ! 女の子達も俺を見て嬉しそうな黄色い声を出してるじゃないか」


「逆だ馬鹿! お前の変態的な格好を見て逃げてるんだよ! せめて股間のを何とかしろ!」


「ホワイ? 何処もおかしくないじゃないか」


 あ、だめだこいつ。自覚ねぇ。

 冷静に見たくはないが、こいつの格好はアメコミのヒーローっぽい恰好をしている。

 胸元のKJのダンと言い、ヒーローと何度も自称してるし、認めたくはないがこいつも異世界人なんだろう。ここまで奇抜なのは日本じゃ見たことが無い。

 海外のゲームは詳しくないんだが……。ヒーローになりきれるVRMMOがあると聞いたことはあるが……これか?


「そうか! そう言って俺を混乱させる作戦だな! そうはいかないぞ! 直ぐに村人達を解放しろ!」


「解放しろっていってもな、襲われたのは俺達の方だぞ? 特に俺の仲間なんて犯されかけたのに許せるわけないだろうが」


「なんだって!? そこの君! 俺に救援を頼んだのは嘘だったのかい!?」


「うっ、嘘じゃねぇ。俺ら、平穏に暮らしてたのにこいつらが村を襲ってきたんだ! 俺達は被害者なんだ! 信じてくれ!」


 盗賊頭が地面に顔を付けながらボロボロ涙を流し、訴えてる。

 よくもここまで嘘をつけるな。この野郎。こいつ殺しておくべきだったか?

 まぁ、こんな見え見えの嘘に引っかかる奴はいないよな。


「信じる! その涙は嘘を言ってない! この悪党達め! 嘘をついて俺を騙そうなんて百年早い!」


いたよ。ここに。騙されてるぞお前。ほら、見ろよ。盗賊頭なんて企みが上手くいったと思い込んで汚い笑顔だぞ。


「もう許さない! 正義の鉄拳を受けてみろ! 〈ジャスティスキック〉!!」


 自称ヒーローは屋根から天高く飛んだかと思えば、稲妻を纏い、凄まじい速さで飛び蹴りを打ち込んできた。

 鉄拳とか言いながらやってるのは蹴りじゃねぇか!?

 咄嗟に剣を振るうとキックと剣が衝突し、辺りに強い衝撃波が起きた。


「きゃっ!」


「秋葉、少し下がってくれ。こいつ意外とやるかもしれない」


「よそ見してる暇があるのかい! ヘイッ! どんどん行くよ! 〈ジャスティスウェイブ〉!」


 自称ヒーローは地面に両手を叩きつけると、3メートルもありそうな衝撃波の波を起こし、その波は生きてるように俺に襲い掛かってきた。

 衝撃波の波を〈波動剣〉で切り裂き、その先に居る自称ヒーローに向けて走り出そうとするが、マップを見ると前に居ない。反応は……後ろか!


 足を前に踏み込んだまま、強引に体を捻って方向転換し、そのままの勢いで剣を横薙ぎに振るう。

 

「ワァッツ!?」

 

 いつの間にかに裏回りしたのか自称ヒーローがしゃがんだ姿勢のまま剣を両手で防いでいた。あの衝撃波は目くらましで本命は後ろに回っての攻撃か。

 不意の攻撃にガードも間に合ってるし、見た目は変態だがこいつの実力は本物だ。見た目は変態だが。

 

 剣は不可視の壁に阻まれた感じで切り裂けず、腕の所で止っている。それでもダメージは通ったのかスーツや腕に裂傷が入っていた。


「ワァオ! ガードしてもこのダメージなんてとんでもない力だ! こいつは楽しくなってきた!」


 こっちは楽しくない。何で深夜になっても戦い続けなきゃならないんだ。しかもこんな変態ヒーローと。まだ日本産のあのヒーローがいいぞ。考え方が常識的で。

 何度か自称ヒーローとやり合うと、大体攻撃のパターンが読めてきた。こいつは速度を活かした連撃が得意なタイプだ。通常攻撃はそこまでの衝撃は来ないが、その代わりに攻撃の速度が速く手数が多い。何度か剣で防ぎ損ねて肩や胴に喰らってしまった。

 〈無敵〉を付けているからダメージはないが、何度も受けるのはマズイな。

 必殺技も何度か見るが、どれも突撃するような必殺技で発動する前に一瞬の隙がある。タイミングさえ合えば避けるのはそう難しくはないが、初見は大変だった。


「ハァァ! 〈ジャスティス・チャージングスパーク〉!!」


 全身を電撃で纏い一瞬の間の後、猛烈な速度で突っ込んできた。ただ、ただ直線的な動きだったから跳躍して楽々避けたが、それが間違いだった。

 

 自称ヒーローは直角に曲がり、空中にいる俺に向けて突撃してきた。

 あり得ない機動の動きと、後ろからの不意打ちで宙に居る俺は対処できず、思いっきり吹き飛ばされる。それだけでは済まず、吹き飛ばされた俺に追いついて蹴り上げ、空中で何度も蹴りや拳のラッシュを受ける。

 

 空中で姿勢を整えるも手数が多すぎて防ぎきれず、後ろに回られて蹴り落とされた。

 家屋に吹き飛ばされ、壁を貫いて椅子や机を巻き込みながらようやく止まった。


 平然と玄関から出てきた俺に皆は驚いてたが、一番驚いてたのは自称ヒーローだった。

 どうやらとっておきの切り札だったらしく、倒せなかった事にショックを受けていた。


「そ、そんな! ハッ! そうか! パワーが足りなかったんだな!」


……、あまりショックは受けてなかったな。


 まぁ、あの必殺技は乱発出来ないらしく、使って何分かは動きが鈍かった。反動があるみたいだな。

 自称ヒーローの動きは早いが、慣れてくると反撃も出来るようになってきた。

 〈波動剣〉や〈ホーミングシュート〉で反撃するが、変態的なスーツの所為か思ったよりダメージが通らない。

 自称ヒーローとやりあっていると、一部の盗賊達が逃げ出そうと動いてるのに気付いた。冒険者達も俺達の戦いに集中していて気付いてないようだ。

ここで取り逃がすと、余計面倒なことになりそうだ。出来れば追いかけたいが……。


「ハーッハッハッハ! ノってきたよ!」


 目の前のこいつが邪魔!

 殺そうと思えば殺せるが、こいつは殺してもいい奴かと言われたら困る。やってることは正義の味方気取りだしな。

 戦ってる時も冒険者達や盗賊達を技で巻き込まないように気遣って動いてるし。どうしたものか。


「おい! いい加減にしろ! 盗賊が逃げ出そうとしてるぞ!」


「その手には乗らないよ! 〈ジャスティスビーム〉!」


 俺の話を聞かず、胸元のKJのダンから光線を打ち込んでくる。

 仕方ない。話を聞かないお前が悪いんだからな? 多少の痛みは我慢しろよ。


 飛んでくるビームを擦れ擦れで避けながら、セブンアーサーとロストドミニオンを〈ホーミングシュート〉で投げつける。

 スキルの効果を得た二つの剣は、光の軌道を作りながら自称ヒーローに向かい飛んでいく。ビーム後の硬直は極わずかだ。普通に狙っても避けられるだろう。


「そんな攻撃当たらないよ! ワッツ!?」


 自称ヒーローは余裕を持って避けようとした。だが、狙いは自称ヒーローじゃない。

 俺の狙いは奴が羽織っているマントだ。

 飛び上がり回避しようとした自称ヒーローは、遅れて舞い上がったマントを二つの剣で貫かれると、そのままの勢いで壁に縫い付けられた。


「シット! しまった!」


 動きさえ封じればこっちのもんだ。自称ヒーローは抜け出そうとするがその一瞬の間に一気に距離を詰める。


「はぁぁぁ!!」


「そ、そんな! 俺が!」


 二つの剣を掴み〈波動剣〉〈手加減攻撃〉で壁ごとX状に交差切りすると、声を上げる暇も無く自称ヒーローは倒れ、壁は大きな音を立てて崩れ落ちた・

 恰好を付けるマントが仇になったな。マントは防具としての性能はいいんだが、捕えられると致命的な隙を作るんだよな。

 自動ドアや回転ドアにマントを巻き込まれて死んだアメコミヒーローを思い出す。


 二つの剣をアイテムボックスに直すと、秋葉が駆け寄ってきた。


「マサキさん、殺しちゃったんですか……?」


「いや、〈手加減攻撃〉を混ぜてるから殺してない。一応こんなのでも同じ異世界人だからな。詳しい話を聞きたいし。それに、お客さんだ」


「え?」


 マップに映ってた盗賊が何者かによって引っ張られるように動いている。そろそろ着くころだな。盗賊の援軍かと思ったら違うようだ。さて、誰がでてくるか。






「そこまでだ。全員手を上げろ!」







 男の大声が周囲に響き渡り、ドンドン! と銃の音が周囲の冒険者や盗賊達の動きを止める。自称ヒーローを見ると、顔を青くしていた。

 男は肩幅が広く、がっちりとした肉体で、全身を機械のスーツで覆っていた。髪は短くそろえていて、マイク付きのヘッドギアを被っていて、先端にパイルバンカーが付いたごつい銃を軽々と片手で持っていた。


 

 俺はこの外見に見覚えがある。海外ゲームの『サターン・ウォー』だ。

 武器が特徴的で、パイルバンカーの他にもロケットハンマーや、チェンソーなどごつい武器が特徴的だ。

 確か、このゲームもオンライン要素があったはず。つまり、この男は『サターン・ウォー』のプレイヤーキャラの力を持つ異世界人か。


「マサキさん、どうします?」


「ここは大人しくしておこう。何かあれば俺の後ろに隠れてくれ。必ず守るからな」


「え、あ、はい……」


 秋葉は顔を赤くしながら俺の隣に寄り添う。


「と言うわけで大人しくしてる。これでいいか?」


「ああ、大人しくしてくれると助かる。ジェイムズ。そっちはどうだ?」


「おじさんに抜かりはないよー。逃げ出そうとした奴らはこの通りさー」


 後ろの長髪の男が数人の盗賊を俺達の前に転がす。盗賊達は全員、亀甲縛りされていて身動きを封じられていた。何故こういう縛り方にした。

 ジェイムズと呼ばれた男は金髪の長髪で、目は青色。服装は軽鎧で背には矢筒と弓を背負っている。

 弓は見たことがある武器だった。確か……。


「その弓、ロードエルブンボウか」


「おっ、おじさんの武器を知ってるってことは『ブリタリアオンライン』の人かい?」


「ああ。まさかここで会うとは思わなかった」


「おじさんもだよ。で、悪いことはしないからちょっと動かないでくれるかな? おじさんにも立場ってのがあるからさ」


 ううむ、殺気も感じないし、レヴィアもさほど警戒した様子もない。盗賊も捕えてくれたし、ここは少し様子をみるか。さっきから険しい表情で自称ヒーローを見ているが、関係者かな?


「うちの身内が迷惑を掛けた。……殺したのか?」


「いや、非殺のスキルを使ったから生きている。と言っても動けないくらいのダメージは与えたけどな」


「そうか、こんなのでも仲間だから助かる。……色々言いたいことはあるが。ダン!!」


 ダンと呼ばれた自称ヒーローはびくっとしながら立ち上がる。もう立てるようになったのか。凄いな。


「なっ何かな? ジーク。それにダンじゃなくて、俺の今の名前は『キーパー・ジャスティス』と呼んでくれ!」


 腰に両手をあてて胸を張って堂々とKJの文字を見せつける。

 ジークはため息を吐きながら、ズンズンと自称ヒーロー、ダンに近づきヘッドロックを仕掛けた。流れるような動作でやり慣れてるのが良く判る。


「お前は勝手に動くんじゃない! それにいつも言ってるだろう! 専用のカップを付けろと! ギルドに頼んで態々作ってもらったのに付け忘れるな!」


「いたたたた! ごめんよ! 次からは必ず付けるから! でも、困った人が要るから急いでたんだよ!」


「そういう場合はちゃんと情報を収集してからと言っているだろう! ジェイムズ、言ってやれ!」


「えー。しょうがないなぁ。ダン、この村の人達は全員奴隷にされて売り飛ばされたりしてるよ。さっき、証拠を見つけたし、囚われてる女性達も見つけたよ。つまり、こいつらは全員、盗賊ってことだ」


 やっぱり乗っ取られてたか。村に男しかいなかったら怪しまれるから、女の奴隷を使って家族を装っていたんだな。

 事実を聞いたダンは「そ、そんな……」といって落ち込んでいた。ううむ、姿と頭は悪いみたいだが、性根は悪い奴じゃなさそうだ。考えが足りないんだろう。


「うちの馬鹿が先走って迷惑を掛けた。すまねぇ。怪我はないか?」


「あ~。大丈夫だ。俺も頑丈が取り柄だからな」


「ジーク! 凄いんだよ! 彼は俺の切り札を受けても平然としてたんだ!


 ダンは何故か自分の事のように偉そうにしてる。


「馬鹿野郎! お前は少し反省しろ! 切り札使うなんて何考えてやがる! この前も一人で突っ込んだだろ! いい加減反省しろ!」


「ご、ごめんよぉ! いたたたた!」


「苦労してるんだな……」


「はぁ、わかってくれるか」


 本当に苦労してそうだ。ただでさえ俺より年上に見えるジークの顔が疲れとため息で皺が寄っていた。


 その後、深夜だったこともあり、話し合いの場は朝に設けることにして俺達は宿に戻された。後始末はジーク達がやってくれるとのこと。


 宿屋の人も数人は奴隷だったようで、料理人は俺達に深く頭を下げていた。

その際、隷属の首輪が見えたので盗賊王のカギで外す。

 料理人は泣きながら感謝をしていたが、疲れていたので礼は明日の朝にでもしてもらうことにして休むことにした。


 まさかここで一気に3人の異世界人と会うとは思わなかった。しかも、一人は同じゲーム出身。ここにいるのなら詳しい話を聞きたいものだ。

 これからの波乱を思わせるような一日はこうして過ぎ、俺達は泥のように眠っていった。


感想や評価ポイントを下さるとモチベーションの維持にとても繋がるのでありがたいです。


変態はこういうことになりました。意外と強いです。

続いて二人の異世界人が乱入。ジークは苦労人枠です。

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