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冒険者達

強烈な腸炎によりダウンしてました。少し動けるようになったので投稿を。後書きに報告があります。

 アリスに人が居る場所まで案内してもらおうと思っていたが、早速俺達は後悔していた。


「おい、この場所さっきも通ったぞ」


「あはは」


「おいこら、笑ってごまかすな」


「あはは、こんなはずじゃなかったんだけどなー」


「あのな……。俺は人が居る場所に案内してくれって言ったんだが……。なんで人っ子一人いない森の中に案内してるんだお前は!」


 俺の絶叫が森林の奥深くに響き渡る。

 マップを最大にしても見つかるのは森森森。森しかねぇ。日も傾き始めこのままでは野宿になりそうだ。





 時間は少し遡る。



 途中まであった街道は吊り橋が掛かっていた所で何か争った痕跡があり、橋は崩れ落ちていた。

 何時もなら『ウィング』を使えば崖なんて余裕だが、魔力嵐ガストの影響でほぼ使えない状況だ。


「いつもはこんなに濃度高くないんだけどねー。長老が言うにはー、一か月か二か月くらいは人は魔法は使えないだろうって言ってたよ」


 アリスの言葉を聞いた時は思わず絶句した。最低一か月以上、魔法は使えないのか。

 アリスとレヴィアの話では、ここまで濃い魔力嵐ガストは初めてらしく、この気象はやっぱり異常なようだ。

 仕方なく川沿いに沿って移動していくと、アリスが川の向こう側に村か街があったはずと教えてくれた。

 何も情報が無いので、あったらいいな程度に思いながら川を渡ろうとするが、思った以上に川の流れが激しかった。


「ふふん、この程度の流れなぞ造作もないわ」


 レヴィアが自慢げに川を泳いでいく。そりゃお前は海神だからな。泳ぎは得意中の得意だろう。

 水色のドレスも不思議と濡れず、川から上がったばかりなのに入る前と同じだった。どういう素材なんだろうあれは。


 俺も渡ろうと思い〈泳ぎの達人〉のスキルをセットしていると、俺より先に秋葉が川に飛び込んだ。そういえば、泳ぎが得意って言ってたな。

 

 秋葉はスキルも無いのに、川の流れを苦ともせず、泳いでいく。泳ぐ姿は健康的でいいな。水着だったらなお良いだろう。軍服なのが勿体無い。

 軽く見惚れていると、置いていかれてた事に気付く。早く追いつかねば。


 〈泳ぎの達人〉〈水中呼吸〉のお蔭で難なく泳ぎきった。デカいサメもクロコダイルもアナコンダも襲ってこない。魚のモンスターは居たが川の流れに逆らえず流された。お前それでいいのか。


 アイテムボックスからタオルを取り出し、濡れた体を拭いていると、タンクトップ姿の秋葉が目に入る。

 アデルとは違った美人で、豊満なスタイル。艶やかな赤黒い髪が水を滴らせ秋葉自身の魅力を引き上げている。

 

「あ、あの。マサキさん、そう見られると恥ずかしいんですけど……」

「あ、す、すまん」



 またあの胸の柔らかさを思い出しかけ、顔を背ける。秋葉も俺の視線に気づいてたようで頬を赤くしていた。……いかん。溜まってるのかもしれない。




「興味は持ってもらえてるみたい。良かった……」




 何か聞こえた気がするが小声過ぎて良く聞こえなかった。嫌われてなければいいんだがなぁ。

 俺にはアデルもヨーコもいるし、秋葉に手を出すわけにはいかないな。秋葉も俺みたいな三十路近いのは嫌だろうし。

 よし、しっかりと理性を保とう。

 

 二人とも新しい服に着替えなおすと、アリスの後を付いて道なき道を歩いて行った。

 

 

 

 そして冒頭に至る。あのまま川を下ってればよかった。

 今から川に戻っても着く頃には夜になるだろう。ジト目でアリスを睨み付けているとマップの端に僅かに人影が移った。


「ここから北西に人がいるっぽいな」


「で、でしょー! ほら、アタシの道案内間違ってなかったでしょ!」


「ぐるぐる回ってた奴が何をいうか!」


 レヴィアがアリスを捕まえようとすると慌てて空に逃げていく。地上にいるとレヴィアに捕まるもんな。


「くぬー! 降りてこぬかー!」


「へへーんだ! 誰が降りるもんかー!」


 子供のような二人だ。人の場所は分かったからもう置いていこうか……。


「秋葉、行くぞ」


「え? いいんですか」


「いいのいいの。誰か人が居るなら少なくとも街道か街の場所位知ってるだろ。見失わないうちにさっさと行こう」


「あ、はい」


 まだ遊んでる二人を無視し、俺は秋葉の手を引いて森の中を進んでいく。

 置いていかれた事に気付いた二人は、後で慌てて追いかけてきた。遊んでるからそうなる。



 木の枝や茂みを切り裂きながら進むと、4人位の人影が見つかった。街道沿いにいるようだが、見つかったのは人影だけじゃない。モンスターだ。それも数は6体。圧倒的に彼らが不利だ。


「ちっ。人が襲われてる! 急ぐぞ!」

「はいっ!」

「うむっ!」

「ちょっ! まってー!」


 折角見つけたのに殺されては困る。これ以上迷子になるのは勘弁だ。アリスはあまり当てにならないというのが分かったしな。いや、一応アリスのお蔭でここには来れたからちょっとは当てにしてもいいかもしれないが。



 急いで森の中を駆け抜けていくと、キィンキィン! ギャウン! と金属が何か硬い物に当たった音と獣の叫び声が聞こえた。


「くそっ! 魔法頼む!」

「使えないって言ってるでしょ! もうっ! ポーション投げるわよ!」

「悪いっ。助かった!」

「くぅー! 硬い! そこぉー!」


 近づくにつれ、4人の喧騒が聞こえてくる。魔法使いがいるのは珍しい。だが、魔法が使えなくなっているこの状況では苦戦しているようだ。代わりにポーションを投げて支援役に回ってるみたいだな。


「あれは狂獣じゃな。小型のようじゃが彼らには分が悪いのぅ」


 あれが狂獣なのか。鉄の鱗に巨大な爪、全てをかみ砕きそうな鋭い牙を備えたトカゲのような奴だ。コモドオオトカゲに近いかもしれない。

 激しい戦闘の音が聞こえるにつれ、街道が見えてきた。その時点で既に秋葉はマグナムを抜いている。


 ギィギャリン! ガキン! と鈍い金属音が響き、獣人の男が持っていた剣が巨大なトカゲの爪によってへし折られた。


「しまった!」

「ガードル!?」


 剣を折られ武器を失ったガードルという名の獣人に他のトカゲも攻撃を集中し始めていた。ヤバい。盾で防いでるがこれ以上は持たない!

 後ろで弓矢を撃っている奴もいるが、トカゲの鱗は鉄の矢を通さずに弾いている。


「グルルゥガァァ!」


 雄叫びと共に大きく爪をガードルに向け、振り下ろしていた。

 『フレイムジャベリン』――をいつもの癖で放とうとするが途中でマナが四散し魔法が形を成さなくなった。そうだった、今は魔法使えないんだった!

 ちっ、本来は投げる武器じゃないが、この際は仕方ない!

 

 俺は〈ホーミングシュート〉〈波動剣〉でロストドミニオンをやり投げの要領で全力でぶん投げる。


 ゴウゥゥ! と轟音を響かせ、茂っている木々を打ち抜きながらロストドミニオンはトカゲの胴体に直撃し、吹き飛ばした。

 仲間が突如吹き飛ばされた事により、動きを止めたもう一匹のトカゲに対して秋葉がマグナムを3連射。

 弾丸は装備の補助効果を受け、秋葉の射撃性能を組み合わさり吸い込まれるようにトカゲの目に、腕に、喉に鋼のごとき鱗を貫いた。

 不意を受けたトカゲはそのままドサリと体を沈め、ビクビクと痙攣していた。恐らく目に当たったのが脳にまで達し即死させたのだろう。


「なっなんだぁ!?」

「この剣は何処から飛んできたの?」


「いいからその剣を使え! 助力する!」


 呆気に取られている獣人達に向けて怒鳴り声に近い声で叫ぶ。俺達という乱入者が来て戸惑っていたが、それどころじゃないと全員が頷き、剣が折れた獣人がロストドミニオンを手に取り、突撃を仕掛けてきたトカゲに向けて剣を振り上げる。

 剣は容易くトカゲの鱗を切り裂き、片腕を切り落とした。


「す、すげぇ! なんだこの剣! 狂獣の鱗をこんなに容易く……!!」


 そりゃセブンアーサー程のレア度はないが、ボスのドロップ品だもんな。片手剣の癖に攻撃力80、STR,DEX+15は伊達じゃない。追加効果が無い分、物理的な火力だけは高いんだよな。

 そこでようやく俺達は街道に出て、彼らと合流した。そこからはもう一方的だった。

 俺がセブンアーサーを抜き、トカゲを一匹切り刻み、秋葉とガードルとかいう獣人が弱ったトカゲに止めを刺した。

 

 槍、弓矢、杖を持った獣人達が必死になって抑え込んでいた2匹のトカゲはレヴィアのとび蹴りにより2匹纏めて蹴り飛ばされ、樹に打ち付けられた。

 レヴィアの足場が悪かったのか、威力が乗りきれず倒し切れていなかった。

 そのまま逃げようとしたトカゲに向けてアリスが強烈な電撃の魔法を打ち込むと、芳ばしい香りを漂わせながら即死した。美味しく焼けたのだろうか。

 それよりもアリスの魔法は凄いな。魔力嵐ガストの影響を全く受けてないようだ。

 後で聞くと妖精魔法と言う部類らしく、妖精にしか伝わっていない魔法らしい。

 環境に影響されない魔法か。覚えたいなこれは。


 戦闘を終え、彼らを改めて見渡すと俺達が来るまでに結構な傷を負っている。ここで俺が回復魔法を使って癒してやることも出来なくはないが、この魔力嵐ガストの中だと消費MPもかなり多い。魔法が使えない今だと迂闊に使えば怪しまれるな。

 ここはポーションに頼るか。貯蓄は十分だ。


「怪我人が多いな。これを使うといい」


「こんなにポーションを。ってハイポーションかよ! い、いいのか? 後で金請求したりしないだろうな? 俺らあんまり金持ってないぞ?」


「こんな状況で金をせびるほど落ちぶれちゃいない。怪我したままだと辛いだろ。タダで良いから使え。あ、その剣は返せよ?」


 一本しかないんだから譲るわけには行かない。名剣を使った後では流石に惜しそうにしていたが、渋々と返してくれた。返さなかったら力づくでも返してもらうけどな。


 十分すぎる量のハイポーションのお蔭で彼らは全ての怪我を完治することが出来た。

 彼らは冒険者のようで、猫の姿をした剣士、黒ウサギ耳と尻尾の魔法使い、熊の槍使い、ネズミ耳の弓使いだ。因みにウサ耳とネズミ耳は女だ。ウサが男じゃなくて良かった。半分獣人と完全な獣人の二人に分かれているな。

 猫の姿をした獣人剣士が立ち上がり、俺の前に立った。こいつがこのパーティーのリーダーなのだろう。


「いやー。本当に助かった。剣が折れた時はもうだめかと思った。それにしてもアンタの仲間も強いんだなぁ。妖精まで連れてるなんて驚きだよ」


「妖精持ちって凄いわぁ。ねね! 何処にいたの?」


 甘いデザートにつられて仲間になったとか言えないな。他の妖精たちも似たようなものなのだろうか。いや、多分こいつだけだな。


「森を迷ってるところに偶然戦う音が聞こえてな。それで近づいてみたら危険な状況だったんだよ。こいつに関してはすまんが教えてやれないな」


「えー」

「いいじゃないですか。助けてもらったんですし、滅多に見れない妖精を見れただけ良かったと思いましょうよ」

「そーそー」


 熊の彼は見た目によらず丁寧な口調だ。装備も見てみるに軽鎧で他の奴らよりは少し豪華に見える。良い所の生まれかもしれない。

 そんなことを思っていると秋葉が服の袖を引っ張っていた。


「マサキさん、そろそろ日が……」


 あ、そうだ。さっきの戦闘は早く終わったとはいえ、日が落ち始め段々暗くなってきた。


「えーとお前達……」


「あ、名乗ってなかったな。俺の名前はガードル、魔法使いのエリス、槍使いのグンア、弓使いのシブラだ。見ての通り、冒険者のパーティーだ」


「俺の名前はマサキ、こっちのは秋葉、そこでトカゲに乗ってるのがレヴィア、で、妖精のアリスだな。それで、ガードル達に聞きたいんだが、この辺りに村か街はないか?」


 街や村が無ければ最悪野宿でもいいんだが、宿があるに越したことはない。


「ああ、村ならこの先にあるぞ。俺も武器を買い直さないといけないから一緒に行くか?助けてくれた恩も返したいしさ」


「良かったですね。マサキさん」


「ああ。迷子になり続けなくて良かった」


「腹も減ってきたのぅ。恩と言うのであれば飯をたらふく奢ってもらおうかの♪」


「あ、私もー!」


「お、お手柔らかに頼むぜ。あまり金ないんだからよぉ」


 この欠食童子共め。食い意地が張り過ぎだろ。しかも飯の話題になった時だけ仲よくしてるし。

 ガードルの情けない声に俺達は笑いながら、ガードル達冒険者に連れられて獣人達が住む村にまで行くことになった。



報告になりますが、GMが異世界にログインしました。が書籍化することになりました。詳細は活動報告にあげてます。体調を整える為と、書籍化作業に集中するので一週間か二週間程お休みをいただきたいと思います。出来るだけ早い復帰を目指します。

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