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三龍

リヴァイアサン……リヴァイアたんの思った以上の反響で吹きました。

前々からフラグだけは立ててたのですがこうして登場に。

 今現在、俺の目の前で大量の空の器が量産されていく。

 俺や秋葉、春香と海に出ていたローハスを連れ戻し、屋敷の厨房でこの大喰らい娘に食事を作っている。

 屋敷に移動したのはあのままだとやじ馬で余計な騒動が起きそうだったからだ。いや、もう起きてるんだがな。料理という名の戦場が。

 焼き鳥の山を作り、どんっと大喰らい娘――リヴァイアサンの前に置き、真正面に座る。

 リヴァイアサンは串を掴み、一口で焼き鳥を食らい尽くしていく。


「ガツガツガツ! ムシャムシャ!」


「おい」


「もぐもぐ! おかわりじゃ!」


 魚のフライが入っていた皿を空にすると口元を脂だらけにしながら秋葉に空の皿を差し出す。


「あ、は〜い」


 お代わりじゃねぇよ。屋台であれだけ食べたのにまた食べるのか。請求書を見たが、見たことが無い請求額になってたぞ。払えるし、中には自腹切った人たちもいるけどさ!


「んぐんぐ、ぷはー。このトウモロコシというのは大変美味じゃのぅ。あと2本、いや、5本くらい無いかぇ?」


「今から生やしますからちょっとまってくださいねぇー」


「5本も食べるんじゃねぇ!」


 スパーンとリヴァイアサンの頭にハリセンをぶち込む。実にいい音がした。

 ハリセンを食らったリヴァイアサンは痛そうに頭を押さえながら涙目で俺の方を睨んでくる。これが海神と言われたリヴァイアサンと言われても信じられないな。


「いったぁぁあー……! 何をするのじゃ! もう少し敬ってくれてもいいではないか」


「誰が敬うか! と言うか何をしに来た。俺を探しに来たんだろ?」


「おお、そうじゃった。ここの食事が美味くてつい用事を忘れるところじゃった」


 リヴァイアサンは口元を何処からか出したナプキンで綺麗にふき取り、姿勢を正した。

 その姿勢は服装も合ってお姫様やどこかの令嬢を思わせる。

 最初からそうしてればいいんだが、第一印象がアレな所為で敬う気が全く起きない。


「英雄殿、おぬしの力を見込んで頼みがある。ちと、獣王国の方にいってくれぬかのぅ?」


「獣王国? そりゃまたなんで突然」


「うむ、それなんじゃが、三龍の事は知っておるか?」


「軽く勲章の説明で聞いたな。空龍バハムート、地龍ヨルムンガルド、海龍リヴァイアサンの事だろ」


 ヨーコが三龍勲章を貰った時に軽くアラン伯爵から聞いたのを思い出す。世界に3匹しかいない龍帝で、地域によっては神とも崇められてる存在。バハムートはセントドラグ王国の守護龍になっているな。これは海の神だが、中身は二―ト神だ。

 地龍のヨルムンガルドは獣王国があるアース大陸にいると聞いたくらいだ。三龍、いや、二龍とも正確な居場所は分からないな。残りの一龍は今、俺の目の前で茹でたてのトウモロコシを食べている。

 俺も一本拝借して、がぶりつく。採れたてで糖度が高く美味い。


「んぐ、うむ。それで、ヨルムンガルドの爺の反応がどうにも鈍いのじゃよ」


「鈍い?」


 爺ってヨルムンガルドはリヴァイアサンより年上なのか。そもそもこいつらの年齢を考えたら訳が分からなくなりそうだからやめておこう。


「妾達は互いの居場所が感覚的に分かるのじゃよ。妾がお主に送ったリングの反応を辿ってここにきたようにな」


 なるほど。居場所を教えたこともないのにまっすぐ俺の領地に来れたのはそういう理由があったのか。


「ヨルムンガルドの爺に限ってそんなことはないと思うのじゃが……ほれ、妾の時があったじゃろ」


「ああ。よく覚えてる。体の中になんか樹が生えていたな。斬ったらすぐに朽ちたが……っておい、まさか……」


「最悪の場合を考えると……ヨルムンガルドの爺が操られてるか、身動きを封じられてる可能性があるのじゃよ。爺の反応に微妙にじゃが、あの忌々しい波動も混ざっておるしの」


 三龍のうちの一匹が何者かの手に……といってもバリー、イーロやフィリアの時でも何かしら奇妙な植物が侵食してる様子だった。リヴァイアサンも同様に浅かった感じだが受けている。からこそ、その忌々しい波動を感じ取る事が出来たのだろう。

 今までの状況を考えるとあいつ等、『パヴァリア』の一味の仕業の可能性が高い。

 こっちの大陸で見かけないと思っていたらアース大陸の方で騒ぎを起こしていたか。


「妾が行きたい所なのじゃが、ちと問題があってのぅ。どうにも爺の反応が鈍い所為で居場所が掴めぬ。何時もの神殿にはおらぬようじゃし、妾一人行ったとしてアース大陸は広い。探すには途方もない時間がかかる」


「つまり、それで人手が欲しいと。眷属の方は使えないのか?」


 あの時はシーサーペントも大量にいたし、海は広いからもっと多種多様な眷属がいるだろう。人魚とか半漁人とか。ペンギンとかもいるのだろうか。皇帝ペンギンとかいたらいいな。


「かの者達は海の生き物じゃ。陸に上がっては万全の力を出せぬ。妾のように人化も出来ぬしのぅ」


「今の獣王国もまだ治安が落ち着いてないみたいだからな。無理やり連れて行ってもただ命を散らすだけ……か」


「その通りじゃ。なに、なにも無償で頼むわけでもないぞ」


「というと、何かくれるのか?」


 リヴァイアサンリングにはかなりお世話になっている。口元にタレがついてても三龍だ。報酬は相当期待していいだろう。

 

 「うむ。手始めに、お主達が助けた娘は今だ眠り続けてるじゃろ? それを起こす手助けをしてやる」

 

「本当か!? フィリアが目覚めるのか!」

 

 うおっ!? 今まで黙って静観していたタツマがいきなり大声を上げた。

 まぁ、思い人を助ける手立てがあると知ったらそういう反応も分かるけど。自分を吹っ飛ばした相手だが、もう気にしていないようだ。止めようとした相手が悪かったしな。


「うむ。妾もあの力は受けておるし、協力は出来そうじゃ。詳しい状況を見る必要があるが、恐らくは魂に異物が混ざっているのが原因じゃろう。妾の時にもそのような力が近付いてきた感覚がある。もっとも、龍の魂に触れた時点で消滅したがの」


 魂か。そりゃエリクサーじゃ治らないわな。エリクサーでもポーションでもあれは肉体の損傷を治す薬だ。

 受けた本人が言うのだから信用性が高い。長年生きてきた龍だ。人では扱えない領域の魔法か何かで魂に干渉するのだろうな。


「それに加えて、妾自身もお主に力を貸す。正直、ここの食事と温泉とやらが非常に気に入ったしのぅ。住処を立ててくれたら住みたいくらいじゃ」


 俺好みで復興していたアタミがどうやらリヴァイアサンの琴線に触れたようだ。

 アタミに組してくれるのなら、世界最強クラスの戦力が手に入ったも当然と言える。

 当然、デメリットもある……力を貸してもらう立場になるのだから食費の面倒はみることになるだろう。かかる費用が今から考えても気が重い。

 気づけば用意した料理が全て無くなっている。この小さな体にどこに、あ、本体は大きいから問題ないのか。


「住処を建てるくらいなら問題ないぞ。といっても、街の情景に合わせた家になるから豪華な神殿とか困るからな?」


「判っておる。別に煌びやかな住処が欲しいわけではないしのぅ。ほれ、あれじゃ。木でできた家を作っておるじゃろ。ああいうのでいいのじゃ」


 木で出来た家……というと建築途中の旅館か。

 木造建築でいいのなら、海神って崇められることも考えて、神社みたいなのを作ってもらおう。ついでにスタンプラリーの印もリヴァイアサンの絵柄にすれば記念になるな。


「あれで良いのなら大丈夫だ。丁度、試験的に住居用の木造建築も検討中になっていたし」


「おお! 本当か! ならば世話になるのじゃ。」


「じゃあ、治療を先払いで頼んでいいか? 住居の方はどうしても立てるのに時間かかるしな」


 一刻も早く姫さんを起こしてやりたいしな。いつまでも王国の一室に預けっぱなしと言うわけにもいかない。


「うむ、妾はそれで構わぬ。その代り、英雄殿の力を存分に貸してもらうぞ。期待しておるからな」


「あー……力を貸すのは構わないんだが、英雄って呼ぶのはやめてくれ。どうにもむず痒くて仕方ない。マサキで頼む」


「英雄でもいいと思うのじゃがのぅ。致し方あるまい。なら、妾の事はリヴァイアサンとではなく、レヴィアとでも呼んでくれ。レヴィアたんでも良いぞ♪」


「OK,レヴィアだな」


「えー」


 誰が、たん、なんてつけるか!

 力を貸すのは問題なかった。ヨルムンガルドの事を放っておくととんでもないことになりそうだしな。仮に被害が出るとしたらどれくらいかと聞いたんだが……。


「そうじゃな。爺が暴れたら……アース大陸が割れるぐらいの被害は出るじゃろう」


 思った以上にとんでもない状況じゃねぇか。大陸が割れるって地殻変動クラスかよ!

 被害予想を聞いた以上、これを放置するの無理だ。


「それじゃあ、今日はもう遅いから明日、一緒にセントドラグ王国に行ってくれるか? アデルとタツマも一緒に来てくれ。王様に話をした方がいいだろうし、俺が居ない間の領地運営の補助を頼む必要もある。それにフィリアが目が覚めた時、タツマが居たほうが安心できるだろ」


「分かった」

「分かった。そうか……フィリアが目が覚めるのか」


 本当にうれしそうだな。タツマ。


「のう、マサキ。明日行くのは構わぬが、これのお代りを」


「少しは自重しろ! 屋台の金額だけでも酷いことになってるんだぞ!」


 本日二発目のスパーンとハリセンの一撃を食らわせる。レヴィアは不満げに魚の骨をボリボリとスナック菓子のように食べていた。こいつが居る限り食べ残しというものは出そうにないな。


 まったく、休日のデートがとんでもない方向に転がってしまったものだ。アデルに非常に申し訳ない。頑張った秋葉にも上手く労ってやれなかった気がするしな。


 だが、それより気になる事がある。さっきからフェンがずっと下を向いていて動かない。元からあまり活発的に動く子でもないが、さりげなく飲み物の差し入れやお代わりなどをしてくれるいい子だ。

 今日に限っては、どうにも落ち着かないというかそわそわしている。温泉から出た時にはそんなそぶりは見せなかったが、レヴィアの姿を見てから様子がおかしい。


「フェン、さっきからどうした? 風邪でも引いたか?」


「ふぇ!? えっ……えっと、なんでもありません。あ、ちょっとネメアーおじさんに頼まれた裁縫があるので失礼しますね」


 肩をびくっと震わせて、フェンはそそくさとこの場から逃げるように立ち去って行った。これはちと様子を見たほうがいいな。フェンには悪いが、マップでチェックを入れておこう。


 その後、デザートまで要求してきたレヴィアに試しで作ったチーズケーキを振る舞ってやったら、美味しさのあまり抱きつかれた。まるで小動物みたいだ。これでいいのか海神。






◆◇◆






 月が天高く上った深夜、フェンはネメアーの下を訪れていた。

 要件は今日の出来事の事だ。リヴァイアサンの来訪と、ヨルムンガルドの事について。

 

 「ネメアーおじさん、このままじゃ……」

 

 「分かっているよ。フェン、直ぐに準備をしなさい。マサキ君達には申し訳ないが、フェンの力を感づかれるわけにはいかない」


「……うん。あのっ……置手紙……してもいいですか? ここでもお友達が出来たので……」


「それくらいなら構わないだろう。ただし、一時間後には出発するよ。動くなら速い方がいい」


 ネメアーの言葉にフェンはコクリと頷いて、音を立てずに自分の部屋に戻っていった。

 ネメアーは短い間だったが、マサキに世話になっていたことを思いながらも、これ以上迷惑を掛けるわけには行かないと思っていた。

 確かにあのマップの力やマサキ自体の強さは特筆したものがある。フェンの事でも頼りたい。しかし、頼ってしまう以上はフェンの事も話す必要はある。


 フェンの力に関しては気付かれてはいけない。特にあの三龍には。もし知られれば殺されてしまうだろう。






 草木が眠る丑三つ時、ネメアーとフェンは人知れず、マサキが用意してくれた寮から音を立てずに抜け出した。

 ネメアーの動きは冒険者ではなく、どこかで訓練されたような斥候の動き。フェンを背中に背負いながら、草木の中に忍び込み、鬱蒼と茂る森の中を駆け抜けていく。


 ネメアーはある程度、屋敷から距離を置くとふうっと、安堵の息を吐いた。フェンはネメアーの鬣をぎゅっと握りしめながら振り落とされないようにしているので精一杯だった。

 

 油断をしてしまったのだろう。ネメアーが上空に浮かぶ二つの人影に気付かなかったのは。


「ネメアー、フェンを連れてどこに行く?」


「!? マサキ君か。それに……リヴァイアサン」


「レヴィアたんと呼ぶがよい」


「たんは要らん」


 二人の漫才のようなやり取りにネメアーは苦笑しながら、震えているフェンを宥める。


「なぁ、ネメアー。そろそろ話してくれてもいいんじゃないか? お前、ただの冒険者じゃないだろ」


「さて、なんの事かな?」


「とぼけても無駄だぞ。この際だから言うが、俺には触れた相手の過去を見るスキルがある。……お前は冒険者ではなく、神官だろ。そしてフェンは……」


「巫女じゃな。それも、三龍を殺すための『神喰らい』の力を持った」


名前の方はリヴァか、リヴァイ辺りにしようかなと思っていましたが、レヴィアがしっくりくるのでそちらに決まりました。いろんな名前が上げられて参考にさせていただきました。

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