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決戦後の野戦病院

スキルで一部(大)がないという意見を受けますが、GMが使えるのはプレイヤーが持つスキルだけとしてます。モンスターのスキルまで使えたら物理反射とか物理吸収とかトラウマなモノまで使える事になりそうですのでモンスタースキルは今後も使わせません。

 グランド大平原の決戦後、俺は今、戦闘以上に苦戦してた。理由は簡単だ。これだけの大規模の戦闘を起こしたという事は、大多数の怪我人が出ている。それも味方だけではなく、捕虜となった敵もだ。俺は貴重な回復魔法の使い手なので、出来る限り回復の為、動かなくてはならない。


 敵とはいえ、捕虜の治療をせずに死なせては捕虜にした意味がない。その為にハイポーションも数千個単位で作ったが、バリーの野郎が街で虐殺をやらかした所為で、怪我しなくていい一般市民にまで被害が出た。その所為でポーションの数が足りなくなるという事態が起きてしまった。


 ラーフの街で死者が大勢出たが、家屋に逃げ込んだり、瓦礫の下敷きでも生き延びた一般人や兵士もいた。だが、骨折や廃材が刺さったりなど重軽傷者が多数だ。


 俺達、異世界人は飛ばされた時期は少し違うが持ち寄った元の世界の知識を元に、とある災害マニュアルを活用することを決戦前に決めていた。


 使うのはトリアージという災害時に色が付いた紙で治療の優先度を決める方法だ。死亡は黒、緊急は赤、意識はあるが重傷は黄色、歩けるが怪我した場合は緑、無事な人は白と。紙は用意出来なかったので色を付けた紐で代用してある。


 緑の紐を付けた人は、無事な兵士達や志望した捕虜達が簡単な治療やポーションで回復を行っている。問題は赤だ。黄色はハイポーションで十分足りそうだ。赤はハイポーションでは回復が追いつかず、俺が回復魔法を使う事になっている。


今回はその為のスキル構成だ。スキル融合も試したいが急を要するので後回し。


パッシブスキル

MP自動回復(中)

MP自動回復(小)

HPMP自動回復(中)

身体能力上昇(特大)

回復魔法効果上昇(大)

回復魔法範囲上昇(大)

最大MP上昇(大)

気配感知能力上昇(大)

魔力上昇(中)


アクティブスキル

エナジーコンバート


 エナジーコンバートはHPの半分をMPに変換するスキルだ。魔法剣士関連が使うスキルで再使用時間が5分かかる。今回は怪我人が多すぎるのでこれを使ってもきついだろう。

 武器も今はセブンアーサーではなく、回復量が上がり、回復魔法のMP消費を抑える杖、アレクレピオスの杖を装備してる。治療師ならこれ!という一品だ。


「うあ……ぁ……」「手が…足が………」「俺は…死ぬ……のか……」


辺りに絶望な声を上げてる民が、兵士が大勢いる。早く楽にしてやろう。というと悪役の台詞に聞こえるが本当に楽にしてやらないとな。魔力を込めて範囲拡大……。


「オールエリアヒール」


「お……おお……怪我が……」「あれ……生きてる……生きてるよっ!」「良かった! あんた生きてるよ!」「足が……足が動く!」


 MPの消費が杖のお蔭で大分抑えられたが、それでも3割も減った。だが、効果は絶大だな。もっと強い回復魔法もあるが、範囲は一緒なのでこれで十分だ。MP効率もまだこっちの方がいいしな。感謝の言葉も程々に受けて次の怪我人の元に行かないと。




――――――――――――――――――――――――――――――――――





 怪我人が1万超えているときつすぎる。ハイMPポーションで腹がタプタプだぞ。うっぷ……飲みすぎて気持ち悪い。だが、まだ怪我人が……。


「マサキ……大丈夫か?あれだけの激戦の後に、このような激務までしていてはマサキが倒れてしまうぞ」


「だがな……やらんと死ぬ人がいるだろ」


 回復魔法の使い手が貴重と聞いていたが……両軍で10も居ないというのは驚きだ。しかも、俺みたいに強い回復を使える奴はいない。過去には居たみたいだが、ここ十数年のうちに死んでしまうか、突然行方不明になり、中々生まれなくなったと聞いている。回復魔法は血統により遺伝すると王国の癒し手から聞いた。両軍に居た回復魔法の使い手達は、既に魔力切れでダウンし、魔力の回復を待っている。MPポーションも飲んだが、俺みたいに気持ち悪くなって動けなくなったらしい。


 手が空いている兵士や捕虜は春香がスキルで作り続けてるハーブでポーションを、量産してるが追いついていない。


 次のエリアまで行くと今にも死にそうな子供が目に入った。母親だろうか。手を握ったまま必死に呼びかけている。


「お願い……! おねがいっ! 死なないでっ! やっと……やっと4歳になったのにっ!」


 死なせてなるものかっ……! 兵士はまだいい!何の関係もない子供が死ぬなんて間違ってる!


「オールエリアヒール!」


 魔力を込めて回復のエリアを拡大、効果を増大させて瀕死だった子供、兵士、捕虜など纏めて回復していく。


「ああ……え…?」「まま……?」「……うっ……うぅ……っ」「まま……どうしたの?なんでないてるの?」


 子供の怪我が治って驚いた母親は、そのまま子供を抱きしめて泣いていた。子供も何が起きたのか解らずに母親を抱きしめてる。良い光景だ……が……魔力込め過ぎた……。意識が……。


「マサキ……!? マサキ!」


 アデルの声が聞こえる……ダメだ。まだ……回復待ってる奴がいるんだ!

俺は、杖を支えにして意地で意識を保つ。


「大丈夫……。次だ」


「ダメだな。そのままでは直ぐに倒れるぞ」


 声がした方を見ると、そこには魔族の女性……確か、魔族を率いてやってきてくれた指揮官の人か。


「MPポーションを飲めば……」


「既に飲んだ本数は50を超えてるはずだ」


「マサキ……そんなに飲んだのか!?」


 この人、数えてたのか。だが、一度に回復できる人数が300人ぐらいが限度だ。スキルや自動回復を使っても飲まなければ直ぐに枯渇する。だからこそ、飲み続け、回復し続けた。


「そのままだと貴殿が死ぬぞ。ポーションとはいえ薬物だ。過剰摂取すれば悪影響が出るに決まっているだろう」


 死。『無敵』を発動してるのに死ぬのかと思うが、確かに気持ち悪い。どんどん気持ち悪さは増えていく。ふと、アデルの方を見てみると心配そうな顔で俺を見ていた。


「私が力を貸してやろう。アーデルハイド、こいつを借りるぞ」


「えっ!?何を……!」


 ぐったりした俺は、魔族の女性に身体を引っ張られ、顔に手を……っ!?!?


「ななななっ何を!!」

「マサキさんに何をしてるの!?」


 ここには秋葉も居たのか、ってそれ所じゃないっ!唇を奪われ……!?


「な……何をっ!!」


「ぷはっ、どうだ。魔力が回復しただろう」


え?……そういえば……MPが最大まで回復してる?どういう事だ……今のキスで……?


「あ……ああ。一体これは……アンタは……?」


「ああ、名乗り忘れてたな。私はアスタとでも呼んでくれ。ただのしがない司令官さ」


「アスタ……って……」


アデルが何か言いたそうにじっと見てるが、アスタがじっと見つめると口を紡いでしまった。知り合いなのだろうか?


「こほん……魔力を回復してくれたのには感謝する。次の怪我人がいるから、俺は先に行くぞ」


「待ちたまえ」


 がしっと肩を掴まれた。無視していこうとするが……魔族の司令官だけあってアスタの力は強い。中々前に進めない。


「次の怪我人がいるって言っただろ?」


「そのままだとまた貴殿が倒れるだろう。私も付いていくぞ。それとだ、アーデルハイド」


「は……はい!」


「お前にも教えることがある。有り余る魔力をまだ使いこなせてないみたいだからな。英雄殿の事を考えたらアーデルハイドにも覚えてもらった方がいいだろう」


「覚えるって……まさかっ」


 そのまさかだろうな。魔力補給。有り余るってことは恐らく、魔力の貯蔵は俺以上にあるはずだ。真祖のヴァンパイアならあるのが当然だ。だが…補給がキスとか……なぁ……。アデルも真っ赤になってるし、あとなぜかその隣の秋葉も。


「魔力補給は覚えておいた方がいいだろう。幸運にも、英雄殿の魔力は普通の人の数十倍もある。許容量を超えて廃人になるという事もないだろう」


「確かに教えて貰えるなら助かりますが……ってあれ?そういえばあれは手を触れるだけで良かったはず……アスタ様?」


 なんだと、わざわざキスしなくてよかったのかよ! 触感は良かったけど婚約者の目の前で唇奪うとか何考えてんだ!

それにしても、アデルが丁寧な口調で喋ってるという事は結構偉い人なのかもしれないな。


「てへ。美味しそうだったからつい。許せ」


 てへ。じゃねぇよ! 美味しそうってこの人、淫魔か何かか!


「貴女様は本当に変わりないですね……はぁ……魔族の秘儀の筈ですが……宜しいので?」


「秘儀とは言っても、元から覚えれる者が極僅かだ。真祖返りのアーデルハイドなら教えてもじいや達は何も言わないだろうしな」


「それなら……お願いします」


「ああ。英雄殿の……」


「英雄なんて恥ずかしい呼び名は止めてくれ。マサキで頼む」


「ふふ、そうか。マサキどのの魔力を回復させながらやり方を教える。そっちの方がマサキ殿もいいだろう?」


「ああ。まだ怪我人は大勢いるからな」


 俺はそのまま、アデルとアスタ、そしてなぜか付いてきた秋葉と一緒に治療して回った。魔力補給というのは本当に助かる。二人の魔力が高いのもあって治療がサクサク進む。アデルも最初は魔力を送るというのに苦労していたが、アスタの教え方がいいのか、直ぐに覚えたようだ。背中に手を当てるだけで十分なら最初からそうしてくれ……。


「オールエリアヒールっと。所で、秋葉はここで何をしてたんだ?」


「えっ?ああ。私も治療キットが出せるからそれで延命処置してたの。マサキさんとは逆方向から治療した方が大勢助かるかなって思って」


 ああ、通りでさっきから死にかけた人が減ってた訳か。FPS軍人系ゲームなら治療キットがあるもんな。俺と逆の方からやってるなら、間に合わなくなりそうな人でも助けることが出来るか。


「そうか。助かる。正直、回復魔法が使える俺だけじゃきつすぎるからな。アデルも秋葉もアスタもありがとう」


 一人で出来る事は限度がある。GM能力がある俺だってそうだ。『無敵』や魔法があっても助けれない命も沢山ある。今日だって倒すより治す方が本当に大変だ。











 皆の甲斐があって、死者を出来る限り減らすことが出来た。…それでも間に合わなかった命はあったがな。戦争はやはりロクなもんじゃない。こういうのは早く終わらせるに限る。


 次は……本国だ。召喚されて、閉じ込められ、バルバロッサと一緒に脱走して、やっとここまできた。下らん戦争に終止符を打ってやる!

沢山の修正箇所を教えてくれた方がいらっしゃったので帰宅後、本日の作業の方を誤字脱字の修正に回ろうと思います。本当に有難うございます。

時間あれば次の話も書き終り次第、いつもの時間に上げる予定です。

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