大平原の決戦①
初投稿の小説で日刊ランキング一位を頂きました。沢山の感想や意見、ありがとうございます。出来る限り速度は維持しますが豆腐メンタルなのでお手柔らかにお願いします。
あ、決戦は残酷描写有です。ご注意ください。
敵陣のど真ん中で浮いている俺に、向かって多数の魔法や弓矢、砲弾が飛んでくるが、いつもの『無敵』で完全に無力化している。それでも、その量が多すぎて砂煙が立ち上り返って敵兵が、俺の姿を見失う。
「やったか?」
やってない。このセリフ前にも聞いたが、異世界人いるなら教えてやれよ。
(敵陣のどてっぱらに風穴を開ける。そこから一気に崩してくれ)
(了解!)
念話で各部隊に、配置された魔法使いに連絡を取ると、早速魔力を練り始める。今は『ウィング』を使わずに地面に降りているので、ある程度魔力を使っても問題が無かった。
「スピリットゾーン!リヴァイアサン、力を借りるぞ!『水竜召喚!』」
アクティブスキルのスピリットゾーンで、敵を倒せばHPとMPの回復を得るゾーンを作りだし、両手から水で出来た龍を召喚する。
敵兵は砂煙の中から無傷で、生還している俺にも驚いたが、突如現れた水龍に気を取られ突撃を緩めてしまっている。
水龍は俺の意識したとおりに動くようで、まるでシーサーペントを巨大化したような龍が、平原を走り多くの敵兵を薙ぎ払い吹き飛ばしていく。
中には槍や剣で水龍を切ろうとした兵士もいるが、元が水なので完全に意味がなく、逆に剣を水の中に持っていかれて被害が増えるだけになっていった。
水龍を最後に天高くまで操作し、地面に叩き付ければ平原に小規模な津波が起き、大多数の兵士が波に足を取られてバランスを崩していった。
そこに俺の後ろから迫る馬や走竜に乗った騎乗部隊が、その穴をこじ開けるように突撃していく。水龍に怯んだ敵の前線では、突撃を持ちこたえることが出来ず多くの敵兵が、貫かれ踏みつぶされ弾き飛ばされて死んでいく。
俺はそれを眺める余裕はなく、次の場所へと『ウィング』を使わずに身体能力上昇の跳躍だけで、敵の密集地域へと飛び何か偉そうな奴にめがけて蹴りをぶち込んでおく。
「た…隊長!」
隊長だったか。都合がいい。俺はそのまま隊長の首を足で踏み折り波動剣を発動させて、長さ3mもの青白く光る刃がセブンアーサーにまとわりつく。
「はぁぁぁぁぁっ…!!」
俺は気合を入れて、横一線に薙ぎ払えば兵士達は剣や盾で防御するも、パッシブスキルと装備でゴリ押しで上げた力の前に板切れの様に、武具はへし折れ身体は鎧ごとセブンアーサーの追加攻撃により細切れに切り刻まれて血煙を起こす。
刃が触れておらず、安心した兵士もいたが範囲攻撃(小)において、その安堵すら打ち砕かれ見えざる刃に屠られ死んでいく。
たった一撃で目の前にいた数十人が、消し飛んだ様子に怯んだ兵を俺は見逃さず、返す刃でさらに踏み込み大きく敵を巻き込んで死体を量産させていく。
気配感知能力上昇(大)で、敵がどの方角から狙っているかを視線に入れずに解るようになった俺は、そのまま身体を捻りながら回転切りを放ち、腕を振り上げていた兵士を胴から両断し、内臓をまき散らしていく。
マップを見れば俺の周囲だけが、空白でその周りには敵の赤いマーカーで埋め尽くされている。これだけグルグル回っていると、今の俺の向きが解りづらいので適度な時に見なければ味方に向けて六道千塵をぶちかましかねない。
俺はMPもHPもある程度回復したら両腕を広げ、アクティブスキル『ダブルスペル』を発動し、両腕から『水龍召喚』を解き放つ。今回は一匹では無く2匹の水龍が敵を蹂躙して行けば、水龍の身体が水色から赤に変わり敵の血を取り込んでる様子が見て取れる。
(これじゃ血龍って感じだな)
マップを見ながら敵の位置を確認していると、轟音と共に突如大きな空白が出来たのが目に入った。その上空を見ればアデルが、秋葉から借りたグレネードを投擲する姿を見つけた。
秋葉は、自動である程度の数まで弾丸やグレネードなどを補充できるスキル『弾丸補充』を身に着けているようで、アデルにあるだけの数を持たせて爆撃要因としても動いてもらっている。
今回の戦場は短期で終わらせたいが、魔力枯渇が懸念されるので道具にも頼っておきたいと思い使わせている。
空からは、ワイバーンやグリフォンがアデルや俺を狙ってくるが、それらに対してはアデルは魔力を槍状に変化させて騎乗した兵士事貫いで地へと落とす。その落下先に居た兵士は、ワイバーンと兵士の重さに耐えきれず圧死したようだ。
俺の方は水龍が真っ赤に染まりつつあり、そのままグリフォンとワイバーンすら纏めて取り込んで地面へと落とし、敵を出来るだけ巻き込んでいく。
「くそっ!何をやっている!敵は無謀にも単独で突っ込んでいるのだぞ!早くころ…」
偉そうな口調で馬に乗った兵士がいたが、最後まで喋ることが出来ずに頭を吹き飛ばされて即死した。うわぁ…その隣にいた兵士が頭の中身をまともに浴びてる。
「…う……うわぁぁぁぁあああああ!!!」
そりゃ自分の手に隊長っぽいの頭の中身がくっ付いてたら怖いわな。
その恐怖が、伝線したようにその辺り一帯の兵士が一気に怯んだ、今の射撃は秋葉か…すげぇ命中率だな。
その付近に狙いを定めたのか兵士が、次々とミンチになっていく。これになれた俺も危ないな。普通ならSAN値でも下がって発狂するんだが、これって対戦車ライフルで撃ってるな。
俺も両腕で操作していた真っ赤な水龍を、次の敵へと向けるべく走らせていたが
「おらぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ロケットパァァァァンチ!!」
右側に走らせていた水龍は頭から尾まで槍でぶった切られ、左側の水龍はデカい鋼鉄の拳により霧状に霧散した。『魏武将』と『超合金』か!ハンターは……!?
目の前に来た真っ赤な危険信号に気づき、セブンアーサーを横に構えて盾代わりにしたが、それでも大きく弾き飛ばされた。『無敵』があってもつい防御をしてしまったが、この癖は付けておいた方がいいだろう。何かしらの拍子に無敵が通用せず防御できず、死にましたとかなってはシャレにならんからな。
「最速の拳を防いだか…」
俺の目の前に、サングラスをかけオールバックの黒いスーツを着た男がいた。ハンターってそっちかよ!ただ、威力はただの拳の割に凄まじい重さだった。これをまともに受けたらと思うと、ぞっとする。ハンターの男は、俺が後ろに飛びのいたのを見ると何処からか……バズーカ!?
バズーカの他に、片手にはマシンガンまで持っている。ここまでできるのは…こいつ…宇宙人を退治する系統のMMOからの異世界人だな。下手すると秋葉より重火力を持ってるかもしれない。
ハンターからの銃撃と砲撃を防ぎ、爆風で吹き飛ばされない様に避けながら切り込むが、相手は速度に特化してるのか剣が当たらず避けられてしまう。
ハンターとの戦いに集中していた俺にヨーコからの念話が入ってきた。
(マサキ、皆来たわよ!まったく暴れすぎ!)
(すまん。手加減してる余裕がなかった)
どうやら俺が暴れすぎて敵将が、3人もこっちに集まりつつあるが…マップを見ると俺の後方からも青い味方のマーカーが丁度3人分突出するのが見える。
(いいわよ。これで敵将も炙りだせたんだし、結果おーらいってことで!)
(それならいいが、超合金は気を付けろよ?俺の水龍を消し飛ばせる程の拳を放つ相手だ)
(心配性ね。多分だけど行けるはずよ。何がとは言えないけど、楽しみにしててね)
ヨーコは何をやらかすつもりなのだろうかと思っていたら、また真正面からはハンターが俺に向かって手榴弾を投げようとしていたが、俺の後ろから『忍頭』ジロウが手榴弾に向けて手裏剣を投げ空中で爆発する。その爆発で起きた砂煙の中を俺はジロウと交代するように飛び、次への目標、ウィルム討伐へと動く。
後ろからは銃撃と刀と手裏剣が打ち合い落としあう音が響いてきた。
更に右からには青い鎧を着た武将…後ろに魏の旗を掲げた兵士が見えた。こいつが『魏武将』か。その魏武将は俺に一直線に向かってきていたが何かの気配を察知したのか、俺の後ろ側を見て進軍を止める。その表情は嬉しそうに獲物を見つけたような眼だ。
その視線の先には、『番長』が笑っていた。だがその表情は以前見た者と違い完全に狼ともいえる笑みを浮かべ、血に濡れた木刀を掲げていた。
その後ろにはあれは…『天上天下唯我独尊素戔嗚』と書かれた旗を掲げてる兵士がいた。全員が見事に特攻服。何だろうこの異色すぎる戦い。
「ぶっこんでいくぞオラァァァァァァ!!!」
「オオオオオオォォォォォォォ!!!」
番長の掛け声に部下が大声で応じ、『素戔嗚』と『魏武将』の部隊と激突した。
ストック数の問題で日曜も一話投稿になりそうです。