牢屋生活
出来上がってから投稿するように今はしてます。
ある程度貯めることが出来たら夕方か朝にでも投稿する方針に変わるかもしれません。
『牢屋生活二日目』
「朝か…ふぁ……ぁぁ」
格子窓から僅かな光が降り注ぎ、朝日が俺を刺激する。
石畳の床は固く眠れそうになかったので、牢屋の中にあった汚い毛布を敷き布団の代わりにし、背広のスーツを上に掛けてようやく眠れることが出来た。
それでも体は固まっていて痛いな…寝てる時に殴られて「無敵」というチート級能力がばれないようにしていたが、これって無敵を付けていても適用されるのか?
GM限定能力「無敵」
これは名前の通りであるがこれを付けて置けば敵なしというあらゆるダメージの対象外となる。
この能力は意外とサービス開始の段階では実装されておらず、話に聞いた限りだが、バグで壁に埋まったPCを救済すべく向かったGMが、大型ボスモンスターの範囲攻撃の巻き添えで死亡する。という珍事が起きてしまったので付けた。と俺は先輩から聞いた。本当のような嘘のような話だな。
「こんな能力あるってこの国の奴らにばれたらロクでもない事にしかならないな…」
そういう事もあって身体に多少の痛みはあるが「無敵」だけは今の段階では付けるつもりはない。
昨日は食事をとった後、とあるスキルを見つけたので試してみるつもりだ。
アイテムの方も装備品は充実していたが、問題点も見つけた。
「食料アイテム尽きてたままってのが痛いんだよなぁ…」
夜に腹が減って何かないか探してみたが、見事に何もない。
GM業する前の狩りで食い尽くしてたんだよな。いつもはカレーとか肉系統の料理を入れてるんだが、残りはルーム倉庫に入れたままだ。
何時までも寝たままじゃダメだな。起きて少し運動しよう…腹が減ってるが少し身体を解さないと…。
そうやって俺は牢屋の中で一人、屈伸や腕立て伏せなど軽く動いているとコツコツと足音が聞こえてきた。
「おい、飯を……何やってんだお前」
「毎朝の日課だ。これやらないと太るんだよ」
「俺も腹がヤバいんだよな…お前何かいいの知らないか?」
「朝少しでもいいから早く歩いてみるのもいいぞ。30分ぐらいな。それでも意外と痩せる」
「そうか。少し試してみよう。ほら、朝食だ」
朝飯はこの時間に出るのか。時間を覚えておこう。
運動を終えた俺は朝食を前にしていつも通り手を合わせる。
「頂きます…」
の前にだ。マップを開き、さっきの警備兵にチェックを付けておく。
これをしておけばこいつの動きがマップ上で反映され何処を歩いているのか一目瞭然だ。同じ鉄仮面をしているから、顔は見えなかったが昨日の夜来た奴とは別の奴だったな。
マップを開いて、マップ縮小と念じてみればこの城の全体図が出てくる。これも昨日の深夜に気づいたことだ。
GMのマップはPCとは違い行ったことある場所のみ開示されるのではなく、入った途端にすべてのマップが表示される仕組みだ。
水を一口飲んだ俺は、先ほどの警備兵が別の部屋に待機するのを見届けると早速スキルを試す。
試すスキルは生産系スキル「品質向上」だ。これは後半の段階で覚えられるスキルで、指定した素材アイテムの品質を数段階引き上げることが出来る。スープは食事アイテムだから別のスキルを使うつもりだ。俺は固く黒いパンに対して「品質向上」のスキルを念じると、パンが薄く輝いて、光が収まるとそこには白い見慣れたパンが現れた。
白パン:柔らかくふんわりとした焼き立てのパン。普段は上位貴族以上の人にしか口にできない貴重品。
「おお…成功だ」
良かった。魔法とは違いスキルは使えるみたいだな。
次はスープだ。こっちに使うのは同じ生産系スキルの調理「味の王:奥義」
名前から聞くと口からビームを出しそうな爺さんが出てくるが関係がないはず。これを使えば低ランクの料理アイテムに限り、品質が数段階上昇するスキルだ。
普段は使えないスキルと思ってたが、まさかこういう場面で役に立つとは思わなかった。
スキルを薄塩の野菜スープに使ってみると黄金色のスープに変わった。
黄金のコンソメスープ:鶏肉や牛肉、魚や野菜などをじっくりと煮込み、贅沢にもその旨味だけを残したスープ。具材として細い野菜を入れられている。
良しっ!上出来だ。匂いが漏れるとも限らないが早速頂こう。
白いパンも焼き立てのようで元が堅い黒パンとは思えない程柔らかい。
スープも…はぁ…温まる。美味い。昨日の段階で、これに気づいておけば美味い飯にありつけたんだよな…今更後悔しても仕方ない。今はこれを堪能することにしよう。
あっという間に食事を終えてしまった。ばれない為に早く食わないといけないのもあったが、昨日の空腹が続いてたのもあるな。
スキルを使っても器は変わらないようだ。変わってたら困るところだったが、これで牢屋の飯は何とかなる。
昨日は周囲を見渡す余裕が無かったが良く考えたら隣も牢屋だったんだよな。匂いが漏れてないか気になったので両隣に声を掛けてみたが、反応が返ってこない。無人のようだ。
これなら安心してスキルの実験が出来るな。
食事をとり終えた俺は朝の帝都…でいいんだよな。帝国だし。外の様子を見てみると、結構活気がある様子が見える。
昨日は夕方でよく見えなかったが、改めて見るとフリゲート艦がある辺りは軍港っぽいな。商船とは離された位置に置かれている。
昨日は10隻だったが、今日は100隻以上いる…この辺りはどうやら海に囲まれた所みたいだな。
どうやらどこかと戦争してきたようでで、捕虜を大量に連れ、全員手縄を付けられてる様子がよく見える。捕虜をよく見てみると、人もいるがその中に狼男のような奴や獣耳少女、兎耳少女までいる。けしからん。
大量の捕虜がつれられる様子を見ていて気分が悪くなるな。今は見るのは止めておこう。
座ってこれからの事を考えるか。獣人のような姿をした亜人の存在は確認した。猫耳やウサ耳など良い趣味してるな。いや違う違う。
「何にせよ、今は戦争状態か。俺がここに呼び出された理由も戦力の増強を狙っての事だろう。…あれだけの戦艦があってまだ欲するって事は何処かデカいところとぶつかってる可能性もあるな」
捕虜の中で誰か隣の牢屋に来てくれたら話を聞けるかも知れないな。今は動くには余りにも情報が無さすぎる。殺されるギリギリまで粘ってみよう。ダメならその時はその時だ。
牢屋仲間が来てくれることを祈りながら待っていたが、結局来なかった。話す仲間が欲しい。ボッチはきついものがあるな……。
異世界に来て二日目でボッチ気分を感じつつ、俺はその日を過ごすのであった。