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番外編 王国の休日①

少々体調を崩してました。気分転換にアデルとヨーコの絡みを深くした番外編です。時系列的には『貴族』の間の出来事です。番外編が終わり、本調子に戻り次第本編も進めます。

俺がアデルとヨーコを婚約者として周囲に発表して数日がたった。



 初めのうちはそれでも、と門の前に押し掛ける貴族や商人が少なからずいたが、門番に海賊団のメンバーを二人ほど配備したらすぐにそれも収まった。装備は元から優秀な物だし、更にはコスチューム衣装として白と黒の重甲冑を着用させたので、威圧感が凄まじいことになった。後に白と黒の守護神とかいう噂までたってしまったのだが中身は海賊なんだよなぁ。


 このコスチューム衣装は装備品を隠す用途として使われるのとは別に、ファッションとして好評な迷彩装備だ。防御力は装備品に依存していて、重さは全く変わらない便利な代物だ。渡したときは魔道具扱いされたが似たようなものだと思う。


 コスチューム衣装は王国の魔道具ギルドに見せたら大好評だった。余っていたコスチューム衣装は、王国の魔道具ギルドに貸し出して量産が出来るか検討中だ。もし成功したなら、売り上げの何割かをこちらに回してもらうようになっている。性能が良いが、見た目が悪いという理由で使うのを躊躇するのはゲームでもこの世界でも同じようだ。


 そんなある日の事だ。アデルとヨーコ、そして海賊団で非番だったローハスに協力してもらって、ルームのアイテムボックスの中身を整理しようと数百種類の衣装や装備を屋敷に種類ごとに並べていた。


課金ガチャも結構つぎ込んでいただけあって出るわ出るわ。……水着とか出た時、すっと戻してしまったがヨーコに引っ張り出されて並べる事に。


「マサキったらこんなのまで持ってるのね」


「クジ引きの景品で当たった奴だ。断じて俺の趣味じゃないからな…」


「趣味だとしたら流石に引いてしまうぞ…しかし、こういう水着もあるんだな」


 アデルがスクール水着を手に持って眺めている。貴女がそれを着たら効果が抜群すぎるのであまり手に持たないでほしい。三十路手前でも健全な男です。


 男物の衣装や女性の衣装、鎧やスーツなど多種多様な服が並べられていく。和服、洋服、中華、西洋鎧に武者鎧、パンダを模したきぐるみ。こうしてみると、まるで演劇の衣装室だなぁ。俺がそう思っているとヨーコが一つの衣装を手に持って姿鏡の前に立って体に当てている。その服は白を基調とした衣装で、スカートの裾に綺麗なレースが施されていて綺麗なんだよな。俺は着ないが取引だと結構高騰したコスチュームだ。


「良いわねこれ。ねぇ、マサキ。折角だから良さそうな衣装着てお出かけしない?」



「あ〜…そういえば、まだまともに王国回ってなかったな」


 王城や雑貨屋、家具屋とかは回ったんだが、この広い王都を見物する暇は中々取れなかったんだよな。今日は晴れてるし、丁度いいかもしれないな。


「それなら、後は俺がやっておきますよ。こういった整理整頓は得意ですし、色んな服を見るのは退屈しませんしね」


「そうか。悪いな。それなら適当に見積もって…アデル?」


 さっきからアデルの声が聞こえないと思い、探してみると一つのゴシックドレスを手にしたまま自分の体に当てて、微笑みながらクルクル回っている。いつもは凛々しい服だから、こういった衣装は着る機会は騎士をやっていたこともあって、無かったのかもしれないな。クルクル回る姿は可愛らしい。


「おーい、アデル〜?」


「ひゃわっ…な…何だ?」


 可愛い声を頂きました。周りに気づかない程に着た自分を想像したのかもしれないな。…よし、アデルの服はそれで決まりだ。


「今から出かけるぞ。アデルの服はそれで決まりとして、ヨーコはどれを着る?」


「えっ?い…一体何のことだ!?」


「そうね…やっぱりこれかしら?」


「俺は…こいつかな?」


 俺は焦げ茶色のスーツ上下と黒と茶色のストライプが入ったネクタイを選ぶ。


「お…おい!だから何の―――」


「今からその服を着て出かけるって話だ。二人ともアクセサリーとかは仕分けした箱の中から勝手に使っていいからな。準備は今から一時間でもあれば十分か?」


「えっ…ええ!?こ…これをか?それにアクセサリ―って…私はそんなの子供の時にしか…」


「普段から薄化粧だし、それくらいあれば大丈夫よ。アデルは私がしっかりと綺麗にするから!という訳でアデル〜別室に行くわよ」


「ちょ…ちょっとまってくれ!ヨー」


 アデルの抵抗もむなしくヨーコはずるずると別室まで引きずり、俺に助けを求めて手を伸ばすが…


―パタン―


 ドアを閉めて強制終了。あの先は男子禁制の女性の花園だ。ローハスは良い意味で紳士だから入ることはないな。それにしてもヨーコの張り切り具合が凄いな。人に着せ替えするのが好きなタイプなのかもしれない。


「じゃ、俺は整理の続きしておきますので」


「ああ。頼んだ。道具の方はスペクタクルズグラス(鑑定の効果付メガネ)を使って良いから、回復効果別に箱に仕分けしておいてくれ」


「解りました」


 俺も久々に街を楽しむとしようかね。文字や数字は覚えても買い物する機会が殆ど無かったし、元の世界でもこういった街を歩いたり、買い物したりするのは好きだったからな。金も全然使ってないし、こういう風に使って少しでも良いから経済に協力しよう。










 スーツをマトモに着るのは久々だな。会社勤めをしていた頃は毎日のように着ていたが、牢屋に放り込まれたときに結構ズタズタになってしまったからなぁ…直せそうな服屋を見つけたら修繕を頼もう。あれも先輩に買ってもらった愛着のあるスーツだしな。



 設定画面の時計を見てみると40分くらい立ったころ、俺は玄関で待っていた。手荷物はアイテムボックスがあるから不要。ぼんやりとしながら待っていると、二階のアデルとヨーコが入った部屋のドアが開く音がした。

 そこには黒いゴシックドレスを着て、首には青色の宝石のネックレスを下げているアデルの姿が。その隣には、さっき選んだ白を基調とした服に、頭には長いリボンを着けたヨーコの姿があった。二人とも綺麗だな……。


「あの……だな…マサキ。じっと見られると………照れる……」


「うん…ちょっとここまで見られるとは予想外だったかも…」


 はっ!いかん…ついじっとみてしまった……。

 2人とも少し照れくさそうにしながら玄関まで下りてくる。待っている俺も頬を掻きながら…多分俺も赤くなってるんだろうなぁ…。まぁ、元の世界でもこういうデートは久々だからな…それに…二人とも美人だし。


「それでマサキ…何処に行くんだ?街と言っても王国は結構広いぞ?」


「んー…そうだな。普段はここから酒場までの通りくらいまでしか行かないし…それ以外で少しぶらぶら歩いてみようか。2人ともそれで大丈夫か?」


「構わない。私も久々に街をのんびり眺めたいところだったしな」


「私も問題ないわよ。あ、途中で甘いものがあったらそこに寄りたいわね」


「昼飯も外で食べる予定だし、そのついで寄ってみるか」


 王都は古い街並みを残しつつも、街中は結構整理されているからな。食事出来る場所も固まっていて見所も沢山あるだろう。まだ9時くらいだが楽しみだ。








―――――――――――――――――――――――――――――――





 俺達3人は、まずは大通りを通って適当に歩いていた。馬は門の出入り口付近で止められていて、大通りは綺麗に清掃されていた。帝国は窓から街を眺めるだけだったが、街の中にも馬車や馬は入っていて危なそうな場面も見た事がある。

その点、王国は安全に歩行者にも優しい道になっていた。


「まるで歩行者天国みたいだな」


「なにそれ?」


「車…ここで言えば馬車か。それらを一定時間立ち入り禁止にした歩行者優先の道の事」


「それに関してだが、私の小さい頃はこの通りも馬車や馬の通行が当たり前で、危険な場面も多くてな。それで、ジロウ殿が時間規制を朝と深夜にのみ。と提案をしたらしい。最初は重鎮や他の貴族たちは効果があるのか、物品が遅れないかと懸念し、実験として一か月ほど試験的に行った結果。怪我人が大幅に減り、物品の納品も思った以上に遅れる事が無いことが分かった。昼の方は手押しの台車で運ぶようにされている。緊急時は別だが、事前に大きな鐘を鳴らして道を開けるようにと通達がある」


「つまりそれで貴族達も反対する理由が無くなって、こういう風になったわけ?」


「ああ。今までも買い出しに出かけたメイドや執事見習いが、馬車や馬で酷い目にあったこともあってな。その危険性が減ったのであれば貴族達も反対する理由もなく、逆に整備に資金を援助するまでになったようだ」



 資金援助か。余り勘ぐりたくはないが、この道は我が家が金を掛けたー!とでも自慢したい貴族がいたのだろうか。まぁ、街の安全や清掃に関して金を掛けるのならその貴族の評判は少しくらいは上がるだろうな。



「安全になるのは良い事だな。馬車にぶつかっても痛くもなんともないが普通の人はそうじゃないからなぁ」


「「普通の人じゃなくてもただでは済まないから。マサキが異常なだけ」」


 2人にハモって言われた。ですよねー。うん、いまもまだ『無敵』は付けてるから不意打ち、流れ弾でもダメージは無い。





 しばらく2人を連れて歩いていると、どうにも視線を感じる。いつもとは衣装が違うから『蒼き英雄』や『深紅の姫騎士』とか言われないはずだが………ああ、視線がアデルとヨーコに半分以上が向いてる。そして俺には男の嫉妬の視線がザクザクと。たまに背中か尻あたりに視線を感じてぞくっとする。何かヤバいのがいるぞ、おい!


「んー…どうにも視線を感じるわね」


「そうか?いつもの服よりはそこまで感じないが…?」


 それは多分、慣れてしまったのだと思う。俺の方は嫉妬の視線が飛んできて何時もより刺さるような視線を感じるけどな。要らない視線は消えたようだ。本当に良かった。



「あ、そうだ。アデル。この辺りで洋服を修理できる店を知らないか?ちょっと服を直してもらいたいんだよ」


「それなら、この路地にデイヴ裁縫店という腕の良い店があったはずだ。まだ残ってればだが…」


「あ、あれじゃない?古い看板だけど店は開いてるみたいよ」


 路地を覗き込んでみると、服のマークが書かれた看板があった。文字もデイヴ裁縫店と書いてある。店先には服も並んであるし、開店しているのは間違いないみたいだな。




 あのスーツを直してくれる事を祈りつつ、俺達は店の中に入っていった。直るといいんだがな…。





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