113話 久しぶりのアタミ
お久しぶりです。少し間が開き過ぎました。
獣王国での騒動を終え、何事もなく妖精の道を抜けて俺達はアタミへと帰還した。
流石に帰り道まで魔力嵐に巻き込まれるなんてトラブルもない。
妖精のアリスに聞けば、一度大規模な魔力嵐が起きれば当分の間は沈静化するらしい。その期間も聞いてみたが判らないとの事。
まぁアリスなので仕方ないと言えば仕方ないだろう。
アタミに戻り、真っ先に出迎えてくれたのは丁度農作業をしていた【狙撃姫】秋葉の姉である【農家】の春香だ。
「あら~秋葉ちゃんに正樹さん達も。やっと帰ってきたのですね~おかえりなさ~い」
「お姉ちゃん、ただいま!」
「春香、ただいま」
間延びした声がだいぶ懐かしく思える。離れてたのが一か月ぐらいだというのに一年以上聞いてなかったと思えるほどだ。
春香はパタパタと駆けより、たゆんたゆんと秋葉以上の豊かな胸を揺らしながら秋葉へと抱きつき、秋葉もそれに応じて抱き返す。
「んふふ~♪ 久しぶりの秋葉ちゃん~……ってあら?」
「お姉ちゃんどうしたの?」
「ん~……とね、秋葉ちゃん。ちょっと変わった?」
「変わったって……太ってないわよ多分」
太ってはいないはずだ。体型はよく確認するし、この間もげふんげふん。
獣王国では肉の比率は多かったが、その分野菜も取ったし動いたからな。余り体型が変わったのはいない。
春香は秋葉を見て、俺を見て何か納得したかのように頷く。
「なるほどね~、秋葉ちゃん♪ おめでとう!」
「お、おめでとうってお姉ちゃん!?」
「正樹さんに告白したんでしょ~? だからおめでとう♪」
おい、まだその事報告してないのに何で判るんだよ。
「え、あ……ぅ、その……うん、ありがとう」
秋葉は顔を耳まで真っ赤にし頷く。ここまで来たら報告するしかない。
「そのなんだ。後でちゃんと皆にも伝えるつもりだったが、先に春香に伝えておく。秋葉を嫁にもらう。式は後になるがな」
「あらあらぁ、そこは秋葉ちゃんをお嫁さんに下さいじゃないのねぇ」
「秋葉の気持ちもしっかりと聞いたし、根回しもされちゃな……」
ジト目でアデルやヨーコ達を見やると二人とも視線を逸らした。気持ちは分かるがこういう根回しはこれっきりにしてほしい。
「じゃあ、私からも一つだけ。秋葉ちゃんを幸せにしてくださいね」
「ああ。秋葉と共に幸せになるさ」
「うん……お姉ちゃん、私幸せになるよ」
そっと秋葉の肩を抱き寄せながら、宣言すると春香は満面の笑みを浮かべて頷いてくれた。
ところで背中から物欲しそうにアデルとヨーコが見ているのだが、君らは先に済ませただろうに。
今夜覚悟しなければいけない気がする。栄養ドリンク調合しないと……!
秋葉は春香と話しがしたいという事なので、その場で別れて一旦アタミの街へ。
「では、妾は皆の者に挨拶がてら色々と食べてくるのじゃ!」
「あ、私もいくー!」
「おい、行くなら財布持って行け」
街に入ると三龍の一匹、海龍リヴァイアサンであるレヴィアが颯爽と財布を持って屋台へと突撃し、アリスもそれに習って飛んでいく。普段は喧嘩するのにこういう時だけ仲がいいなアイツら。
獣王国での騒動関係で謝礼金も貰ったので懐は温かいとはいえ、半分はレヴィアの食費に消えるだろう。
アリスは体格が小さくそこまで食べないのでそこだけは安心だな。
「さてと、俺は屋敷に戻るつもりだが、どうする?」
「そうだな。私はマサキに付き合おう。王子に報告すべき事も一杯あるからな」
「私は久々に温泉にいってくるわ。司達もどうかしら?」
「せやなー。冒険者ギルドにも顔出しせんといかんし、いろいろ見て回りたいからええよ」
「えっと……私は……お家に帰りたいのでマサキおにーさんと一緒に……」
「私は師父に街の案内をしてきます」
「頼むよ。ネメアー」
「温泉、楽しみですね旦那様」
アデルとフェンは俺と一緒に帰宅して、ヨーコ、司(とその仲間達)、ネメアー、そして聡さんとその嫁さんである猫人族のリナさんはアタミで温泉と観光しにいくつもりらしい。見どころたっぷりなので楽しんでください。
あ、因みに獣王国で知り合った鍛冶屋のオーガスたちは身辺整理が整い次第アタミに引っ越してくる予定だ。
ドワーフの鍛冶屋ゲットだぜ。
三人になったので、クリスタルドラゴンであるクリスタに三人で騎乗しゆっくりとアタミの風を感じながら館へと向かう。
その際、畑から俺達の姿を見つけた領民たちが駆け寄り手を振ってくる。
「領主様じゃないか! おかえりになったんですね! って……それドラゴンですかい!?」
「ああ、向こうで手に入れた。綺麗だろ」
「ええ! 綺麗でかっこいいですね!」
「ギャウギャウ!」
クリスタもご機嫌に尻尾をブンブン振っている。地面を抉れない様に振る配慮も忘れない良い子だ。
「ところで、俺が離れている間に何か困ったことはあったか?」
「いえ、特には無かったと思いますなぁ」
「そうか。それならいい。それじゃ仕事の邪魔して悪かったな」
「いえいえ! おらも領主様の無事な顔を見れて良かったです! 皆にも知らせますね!」
特になかったなら何より。レオン王子がうまくやってくれていたようだ。
まぁ、一か月かそこらで問題が出るような領地運営してない訳で、開発も一応俺抜きで出来るように調整はしていたからな。
その後、三度くらい同じやり取りをしてやっと屋敷へとたどり着いた。
屋敷の前ではジミーやルードリッヒ、そしてレオン王子が出迎えて……っておい、王子が出迎えに来ていいのかよ。
「トウドウ伯! 無事帰ったのだな!」
「え、ええ。色々とあり過ぎました何とか」
「そうかそうか! では、色々と話を――」
「レオン王子、その前にトウドウ伯はお仕事があります」
「そうですはい。レオン王子には申し訳ございませんが……」
「むぅ……確かにマサキでなければ出来ぬ案件も多かったな」
デスヨネー、知ってた。
幾つか出発前に計画していた案件もあったしな。
「……マサキ、レオン王子には私から話をしておく」
「ああ。頼んだ」
アデルとヨーコ、秋葉には『パヴァリア』の事もコウキ・ミナモトの事も伝えてある。レヴァーテイン含め、残りの封印も緩んでいるとなると俺一人だけの問題でなく世界の問題になるのは明らかだ。
レオン王子に話を通せば自ずとローラン王にも、そして各国にも伝わるだろう。混乱が予想されるが、何も知らないよりはましだ。
久しぶりの政務室に戻ると、座り慣れた椅子に俺好みのデスク。
「あの……マサキおにーさん、コーヒー入れてきました……」
「ありがとう、フェン」
メイド姿のフェンが笑顔で珈琲を運ぶ姿を見ると本当に帰ってきたなと思えてくる。
コーヒーを一口飲むと、使い慣れた万年筆を引出しから取り出し、《筆記》のスキルを全開にし、つかの間の日常へと戻るのだった。
お読みいただきありがとうございます。
前回からまた間が開き申し訳ありません。
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