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蹂躙する船上

海賊船から飛び出した俺は人が一番多い、無事な一番艦へと『ウィング』で空を飛ぶ。


「兄さんこれ凄いですよ!わぁっ空を飛んでる!!」

「お前よくこれで喜べるな…俺なんて怖くてしかたねぇぞ!」


ローハスは空を飛ぶのに憧れていたと後で聞いた。道理でこの喜び具合だ。

バルバロッサは反対に高所恐怖症らしい。ガタガタ震えるのが手に伝わるが、俺はしっかりと二人の鎧の襟を握っているので落とす心配はない。


「大親分!!矢ぁ!魔法ぅぅ!砲弾んん!!!」


バルバロッサが悲鳴に似た声を上げているが言わずともわかっている。

身体能力上昇のお蔭でこの程度の攻撃はゆっくり見える。軽く曲芸しながら飛んでいるとバルバロッサは悲鳴を、ローハスは歓声を上げる。

五月蠅いのは両方ともかわらんか。


「大親分!炎の魔法が来てます!」

「避けてくれぇぇぇ!!」


「突っ込む!!」


悲鳴を上げたバルバロッサを無視して俺は魔法『グラビティウォール』を唱える。

風を纏い、十秒だけ遠距離攻撃を無効化する。これの前にはドラゴンブレスも通用しないが再使用時間が10分と長めだ。

いざという時にしか使えないが今は試しに使うには丁度いいだろう。


ドラゴンのブレスにも似た火炎の魔法は俺達を包み込むが『グラビティウォール』の前には意味をなさず、目の前で湾曲して熱自体も通さない。

火炎の中を突きぬけると唖然とした兵士たちの表情が見える。降りるならあそこがいいか。


「二人とも。降りるぞ!戦だ!!」


「はいよ!やってやります!」

「ああもう!全力で当たってやる!!!」


バルバロッサは相当怖かったようだ。手に持った両手剣のライトニングソードを強く握りしめ、気合を入れてるのか剣が放電を始めてる。

ローハスも楽しそうにしながらも片手剣のフレイムブレードと片手盾の火炎龍の盾を構え、いつでも降りられるように構えている。

ローハスはこういうのには冷静に対応できるんだな。



少しずつ速度を弱めて二人に支援魔法『プロテオール』『クイックバイト』を掛けて前者は防御能力上昇、後者は身体能力上昇の支援魔法をかける。

支援を掛け終った俺はゆっくりと甲板へと降り立ち二人を降ろす。

兵士達は矢も魔法も砲弾も通用しない俺達を見て恐怖を浮かべている。

手を出すに出せず剣や杖を構えながらこちらの様子を見ている。

魔法や弓ぐらい撃てよ。冷静に心の中でツッコミを入れたくなった。



「貴様らぁぁぁ!何をしておる!賊だ!!殺せ!むごたらしく殺せ!頭をそぎ落とし尻の穴に突っ込ませろ!」


汚い言葉が聞こえるとそこには豚。豚に失礼か。真っ赤な顔をし、腹が出た見るからに悪徳船長という言葉を体現した男が出てきた。

腹の出具合はバルバロッサより上か。


船長の声で目が覚めたようで、俺らを囲むように兵士達が展開する。


「いくぞ。くれぐれもこんな所で死ぬなよ」


「こんな修羅場幾らでもありましたよ。屁でもありませんね」

「空を飛ぶのに比べたらどうってこたぁねぇですぜ!」


「そうか。ならば…蹂躙だ!」


「「おう!!」」


俺の合図とともに二人は突撃し、俺は単独で目の前の大群へと走り出す。

それと同時に兵士達も剣や槍を構え、突撃してきた。


俺の手に持っているのは『セブンアーサー』というGM時代でPCとして遊んでいた時の愛剣だ。

攻撃力が低い代わりに一度切れば複数回のダメージを与えることもあるレア武器で入手するのに一年以上かかった剣だ。


効果が発揮されるかを確認がてら、目の前で大きく剣を振りかぶっている兵士に向けて剣を横薙ぎする。

すると当たったのが剣にもかかわらず、4発分の斬撃が兵士の胴や腕、足などに入った

パッシブスキルで威力を増したお蔭で頑丈なプレートアーマーでさえ豆腐を斬ったかのように滑らかな切り痕が目に入る。


腕が吹き飛び、胴を斬られた兵士は崩れ落ちるが、次の攻撃が俺に飛んでくる。

槍を身体を捻って回避し、そのままの勢いで回転切りを加えると丁度首元に当たり兵士の首が飛ぶ。追撃として2回分の攻撃も加わり死体と化した兵士の身体が切り刻まれる。


二人のむごい死にざまを見た兵士が突撃を止まったのを見計らい、マップにて弓兵の居場所を確認する。

弓兵の方を見ると二階から俺の方へ向けて弓を撃っていた。

剣で弾くと返す剣でアクティブスキル『波動剣』『ソニックブレイド』のコンボを発動する。


二階の弓兵に向けて『ソニックブレイド』を放つと大きな斬撃が飛び、弓兵を斬り刻み即死させる。追加効果も起きたようで周囲にいた弓兵3人が纏めて斬られて死んだ者もいるが、腕だけが斬られて生きてる奴もいるようだ。だがもう腕を斬られては弓は使えないだろう。


次に魔法使いへと剣を飛ばそうと思ったら横から炎の道が出来上がり、魔法使いの軍団が炎に包まれ炎上する。

周りの兵士達を『波動剣』でリーチを増した剣で切り刻みながら炎の出先を見るとフレイムブレードを大きく構えて炎を放ったローハスの姿が目に入る。

バルバロッサも剣を床に打ち付けて周囲の奴らに纏めて電撃のダメージを与えてるのが見えた。


(二人とも装備を使いこなしてるな。支援魔法で動きを良くしたのもあるが柔軟性が高いのは、あの二人が本当に強い海賊だからかもしれないな)


二人の実力に驚きつつも二人の無事に戦ってる姿を見て目の前の槍兵を斬る。最大で7回の攻撃が出たようで槍兵がバラバラになった。




俺達3人が甲板で無双している中、隣の船が大きな音を立てて横に傾き沈み始める。どうやら海賊船に乗った奴等が砲撃で船を沈めた様だ。

マップで様子を見てみると一人の欠員も出ていない。そして海賊船の上には大多数に重ねられた兵士が見えた。



俺は船から飛ぶ前にこう宣言していた。


「無抵抗の者は斬るな。これだけは確実に守れ」


剣を捨てた者にまで死を与える必要はない。

投降したのに手を掛けてしまっては外道と同じだからだ。

どうやら海賊団でもそれは鉄の掟らしく大きく頷いてくれた。



俺らの辺りには血の海が広がって大多数の死体が出来上がる。

それを見た俺は身体を震わせそうになるが堪える。

現実としてみたくはなかったが…あらかじめ殺す覚悟をしていた。それのお蔭か、それともまだ現実を受け入れてないから出来るのか解らない。

だがここで俺が怯み震えれば海賊団の士気に大きくかかわる。

それはやってはいけないことだ。



気づけば俺達を囲むだけで手を出す奴も少なくなっていた。

手を出せば死体の仲間入りとなると兵士達は魂の底にまで理解してしまったのだ。

投降したいのに出来ないという様子が見える。明らかに怯えてる奴らもいた。


それを許さないのが二階にいる腐った奴の所為だろう。



「貴様らぁぁぁ!何を止まっている!殺せ!死んでも殺せ!貴様らの代わりなぞ幾らでもいるのだぞ!!」




命の代わりなんて無い。人の代わりなんてない。

その言葉でアイツは命乞いをしても投降しても許さない。死刑宣告を決めた。

兵士達も憎たらしそうに見ている。あんな奴の為に命は捨てたくないのだろう。



命を捨てるのはあいつが一番お似合いだと俺は思い、兵士たちの頭上を『ウィング』で飛び越え肥えに肥えた醜い屑の首根っこを持ち上げる。


「ひ…ひぃぃぃい!お前!自分が何してるのか解らないのか!俺様は先代皇帝の血筋を引く大いな」


「黙れ」


五月蠅いので『サイレンス』の魔法を叩きこんで言葉を封じる。

本当なら魔法を使わせないための魔法だが言葉を止めるにも使えるみたいだな。


そのまま『ウィング』で空を飛び、更に大きく飛び上がる。何処まで飛べるかわからないがこのぐらいでいいだろう。俺は雲の上まで高度を上げて目の前で顔を真っ青にして寒さで震えている屑をにらみつける。



「・・・・!・・・!・・・・・!!!」


「何言ってるか解らんなぁ?」



黙らせたのは俺だが涙目で命乞いをしてるのは何となくだが解る。

失禁もしているようで匂いが風に流されて俺に届かないのは幸いだった。

さて、こいつを処刑するか。捨てる命はこいつで十分だ。



「貴様に捨てられた命に地獄で詫び続けろ」



無慈悲に冷徹に言い放ち俺は手を離す。

ここまで冷徹になれる自分にも驚くがもう俺の手は血に濡れている。

これからも許せない奴は殺すだろう。



「・・・・・!・・・・・・・・!!!」



大声を上げたくてもあげられないまま俺に手を向けて屑船長は落ちていく。

そして海に大きな水柱が立った。

屑は海の藻屑と化して魚の栄養となっていくだろう。




俺が降りるとどうやら全員武器を捨てて投降したようだ。戦意を喪失して座り込んでいる。

奥で炎上していた船の奴らも俺の部下や、他の投降した兵士達が助けてやりたいと願い出て助け出したようだな。



「大親分、終わりやした。指示通り一つの船に兵士達は集めてありやす!」


「そうか。こっちの被害は?」


「大親分から支給された装備のお蔭で欠員0ですね。怪我した奴もいましたがHPポーションで回復してます」


スキル上げで量産したHPポーション制作が役に立って良かった。数だけあって序盤にはいいが、後半になると回復量が追いつかないんだよな。


敵兵を見渡すと大きく怪我して包帯を赤く染めてたり、海に落ちて体が冷えたのか身体を震わせてる奴らも見受けられる。


折角助けたのに死者が増えるのはダメだ。

仕方ない、回復魔法もいつか使うことになるだろうし実験も含めて使うか。


「お前ら、動くなよ。回復魔法を使う。もし無駄な抵抗したら…言わないでもわかってるか」


兵士達が恐怖の表情で頭を縦に振っている。

これだけの惨事を引き起こす奴と争いたくないんだろうな。




『オールエリアヒール』




今回イメージしたのは傷を塞ぐようなイメージだ。強くイメージすると過剰回復してしまうかもしれないから弱く。

その甲斐あって兵士たち全員の怪我が治り、どうやら体も温める効果もあったらしく震えてた奴が不思議そうに手を見て暖かさに驚いてるみたいだ。

魔法を使った俺にバルバロッサとローハスが近寄ってきた。


「大親分、指示通りにしやしたがこいつらをどうしやす?俺らに組み込むにしてもいつ裏切られるか解らない奴らですぜ」


「こいつらは帝国に逃がす。そのために捕まえたんだからな」


「失礼ながら何故でしょうか?捕虜にしてどこかの国に引き渡すというのも有りだと思いますが…」


それも考えたが、今の戦争状態でこの大勢の捕虜は国としても抱え込むのは大変だ。

捕虜を維持するのには費用が掛かる。飯も食わせなければいけない。

戦争は金がかかる、だからこいつらは帝国に返し、飯を食ってもらって資金と食料を減らしてもらう。心はへし折れてるはずだから戦争に行くのは難しいだろう。


その考えを二人に伝えると納得してくれたようで頷き、兵士にも伝えると生きていた副船長が帝国まで責任を持って連れて帰ると自ら引き受けてくれた。

当然ながら次は無いと脅すと敵兵全員が一斉に縦に首を振っていた。

俺は仏じゃないからな。3度も許すなんて真似はしない。




こいつらが捕まえていた捕虜の船に向かうと、そこには重軽症者を多数見つけた。

海賊と聞いておびえた様子を見せたが、俺が『オールエリアヒール』を使い怪我を治すと手を合わせて祈るようにお礼を言ってきた。

こういうのは嬉しいがまだ慣れてなくてムズムズする。

隣でバルバロッサがそんな俺を見て口元をにやけさせていた。

こいつ……後でまた飛ばすか。



その後、俺達は捕虜の中で船を動かせる奴らに頼み、元の国へと帰ってもらう。

やはり俺達で面倒を見るのは難しい。後ろ盾も何もない海賊団だからな。



全員が喜んだ様子で手を振りながら東へ針路を向けていく。

ここから東に向かった先で頼れる国がまだあると、捕虜達の隊長が俺に教えてくれた。

進路的に一度船から降りないといけないらしく、船に頼った戦いを得意とする帝国は積極的に攻められない地形らしい。





俺も頼れる国にたどり着いて一息ついたらその国を訪れてみたいと思う。

そう思いながら俺達の海賊団は、船団から食料や金品を積み更に進路を北へ。

帝国へ更なる痛手を追わせながら、海を進むのであった。

今回登場した魔法です。


プロテオール(ハイクレリック)

オールエリアヒール(ハイクレリック、中級回復魔法)

クイックバイト(マジックフェンサー)

グラビティウォール(マジックフェンサー)

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