表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
4.魔に惑いし者の盲進
82/186

4-1

 ルーヴァンス=グレイがリストールの町にやって来たのは、十年前のことになる。

 彼はロアー南北戦争で両親と幼い妹を失い、大陸を満たしていた戦という名の魔を憎んだ。その結果、いくつかの偶然と必然を経て、サタニテイル術士として戦場の最前線で戦い、十四歳という若きにおいて多くの悲劇を目にすることとなった。

 人は人を殺し、人は人に殺され、時には人を救い、しかし、その先に更なる絶望を見た。

 ルーヴァンスは人に疲れ、世に疲れ、全てに疲れていた。

「どーしました?」

「?」

 かつての上司たちに勧められるまま向かった先――ロアー大陸南方のリストールの町にある大きな屋敷の中庭で、彼は声をかけられた。

 その鈴のように高き声音は、微かながら荒んだ心に安らぎを与えた。

 ルーヴァンスはぼうっと遠くを見つめていた視線をキョロキョロと巡らせるも、彼に話しかけてきた某かは見つけられなかった。

(気のせいか……)

 特に気にせず、つまらなそうに視線を下げた。何を見るためでもなく、気持ちと共に瞳を下方へと向けた。

 しかし、そこにはまさしく、声の主がいた。

 小さな小さな生き物がいた。

「……………お前は?」

「ボクはセレネ=アントニウスです。こんにちは。どうぞ、よろしくおねがいします」

 ぺこりと、女児が丁寧に頭を下げた。それから、にぱっと太陽のような笑みを浮かべた。

 彼女はこの屋敷に住まう四歳児で、屋敷の主人マルクァス=アントニウスの娘だった。

「……………」

 セレネに用事など特にはなく、興味すらもないルーヴァンスは、沈黙をもって返答とした。彼女の言葉通りによろしくする気は全くないようだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ