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すっ。
「無事ですか、セレネくん?」
「は、はい。ヴァン先生……」
ルーヴァンスが、腰を抜かしている女生徒に駆け寄って声をかけた。優しく彼女の背に手を回す。
しかし、そうしながらも、彼の意識はセレネではなく、セレネの直ぐ側に佇む女児に向けられていた。
悪魔は彼女のことを『精霊』と呼んでいた。真実ならば、彼女は『神の代行者』と言っていい。
当然ながら、ルーヴァンスでなくとも彼女に注目を浴びせる。
「精霊さまだって?」
「あぁ。神は我らをお見捨てになっていなかったのね」
「これでようやく事件は……」
悪魔は彼らの目の前で、女児の――精霊の生み出した光の槍で胸を穿たれ、消滅した。
なれば、リストール猟奇悪魔事件も、これで終焉を迎えたことを期待できる。人々は歓喜した。
しかし――
「事件はまだ終わっていやがりませんよ。まったく、クソ人間どもはどうしようもねーバカ野郎ですね」
精霊――女児自身が言い切った。
ざわっ。
にわかに騒々しくなる。