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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
エピローグ
183/186

6-4

「まあ、どんなにこっちに合わせてきやがっても、ヴァンがヴァンである時点でワタシがてめーを気に入ることは金輪際ねーですよ、ご安心下さい。このクソ虫が」

 精霊さまが、満面の笑みで言い放った。

「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。女児の暴言が心に突き刺さって、僕はもう!」

「寄んなです! 第十精霊術『聖打』!」

「ぶふぅ!」

 変態が吹き飛んだ。

「ルーせんせえ…… 怪我とか治りかけなんだし、大人しくしてなよ」

「女児に興奮しないなんてあり得ませんよっ!」

「……あり得るよ」

 現在、国営塾は休みとなっている。しかし、二日後から再開すると、塾長が今朝アントニウス家に報告に上がっていた。

 当然ながら、ルーヴァンスも古代悪魔学の講師としての仕事を再開する。

 そして、国営塾には初等科があり、女児がたっぷりいた。

「今さらだけど、ルーせんせえが初等科でも授業するの、何か不安だよ」

 その言葉に、ルーヴァンスが心外だとでもいうように肩を竦めた。

「僕はプロの講師ですよ。プロは生徒に手を出しません!」

「えッ!」

 驚愕の声を上げたのはセレネだ。ぶるぶると青い顔で震えていた。

「じゃ、じゃあ、ボクが相手にされていないのも……」

「セリィは女児じゃねぇじゃん」

「セレネはやっぱバカ野郎ですね」

 こぞって馬鹿にされた。

『そもそもルーヴァンスのどこがいいのか、理解に苦しむな。セレネは変だぞ』

 先日の事件以来、たまに頭の中でコメントを残すようになった『エグリグル』の悪魔にすら突き放された。

 引きつる顔でぎこちなく笑み、セレネがゆっくりと大地に跪いた。祈りの姿勢を取り、ゆっくりと瞑目した。

「い、イルハードさま。罪深き彼らに、ちょっとした天罰をお与え下さい」

「あれだけ色々あって、まだ神さまに祈るんだ。すげーな、セリィ」

「つーか、罰じゃなくて許しを与えやがれですよ」

 信仰の薄い者と、信仰などせぬ者が、それぞれ肩を竦めた。

『望むならば私が、足の小指を角にぶつけるように仕向けてやってもいいぞ』

「しなくていいですっ!」

 親切な『エグリグル』の悪魔の言葉を、人の子は強固な意志で退いた。

 そして、双子の弟と精霊さまを紅い瞳でキッと睨んだ。

「パドル神父さまのこととか、今回の諸々とか、そういうのはともかく! 信仰は大切なんですっ! 朝にお祈りしていると清々しい気持ちになれるし! イルハードさまが見守ってくれていると思うとがんばれるし! 心が豊かになるんです! 実益なんてなくていいんですッ! 信仰っていうのは、それでいいんですッッ!!」

 はぁ! はぁ!

 セレネが涙目になって怒りを爆発させた、その時――

 ヴン。

 鈍い音が響いて、何もなかったはずの空間に、光の扉が生じた。


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