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曙を圧倒するように黄金色の輝きが地表を満たした。
光の輪が一定の間隔で広がっていく。
眩さが人を癒して闇を駆逐する。
「第五精霊術『聖槍』ッッ!」
一切の輝きが手の内に収まり、瞬時に力と成る。
女児が金色の槍を、重量という概念が消え去ったかのように軽やかに、くるりと回した。
そして、ヒュンッと突き出す。
ざしゅ。
光は何の抵抗もなく闇に吸い込まれた。
『ぐ…… ぎがああああああああああぁあ!!』
断末魔が響いた。
闇の者は灰塵と消え、ざああぁあと音を立てて風に攫われていった。
静寂がシンと朝を満たす。
ヴン……
静かな音を立てて、輝きが四散した。光の槍もまた消え去った。
場には、黒き髪の女児と、金の髪の少女と、物見高い町民の姿だけが残っている。
さわさわ。
小気味のいい葉擦れの音がどこかから聞こえてくる。
精霊は真剣な表情を崩して、ふぅ、と息を吐く。
「いっちょあがり、でいやがるですね」
嘲りの表情を浮かべた女児は、腰に左手を当てて、右手で肩にかかる長い黒髪をはらう。
塵となった魔も呆然とする人も皆、彼女にとっては愚か者でしかない。
「第一級トリニテイル術士ともなれば精霊術も完璧でないといけねーのです。覚えておきやがれです」
胸を張り、闇を滅した者は笑みを浮かべて誰にでもなくそう言った。
光と共に、神々しくそこに在った。