5-47
「やハリ、オマえタちはオモシろイ。しかシ、ざンネんじャ。そろソろしマイにせネバ、こタビのたワムレがおわッテしマウ」
露出した二対の肺から喉らしき管へと空気を送り込んで、鮮やかな紅色の肉が付随した気道の動きで空気の流れを音へと変換し、聞き取り辛い言葉のようなものを吐き出してから、魔は紅き力を集めた。
彼女の異様な姿に呆けていたルーヴァンスとティアリスは、血肉へと力が集い行くのを感じ取り、身構えた。人の子は神の刃と楯を生み出して構え、精霊さまは背に白翼を生じさせて飛び上がった。
肉片は精霊の動きを追ってぐりんッと紅玉を天上へ向け、集めた力を操った。
「ッ!」
悪魔の動向に対していち早く反応を示したのは、ルーヴァンスだった。彼は咄嗟に、背へと黒翼を生み出して飛び上がった。
「ティア!」
ばさっ!
ルーヴァンスが叫び、急速度で天上へと向かった。そこに居たティアリスを庇うように、紅玉との間に飛び出た。
そして、紅き瞳からは漸う紅黒き光が放たれた。
「シね」
ずんッ!
特に技巧を凝らしたわけでもない只の力が――紅と闇で染まった閃光が放たれた。
「神閃ッッ!!」
かッ!
人の子は咄嗟に、現状で最も神の力を強き光として放つことが可能な術を選択した。
ギイイィン!!
黒き光と白き光がぶつかり、ルーヴァンスと血と肉の集合との間で拮抗した。
「ほォ。うチのチカらデつばサを、いるハードノちかラでやイバをナすカエ。きヨウよなァ」
アスビィルが可笑しそうにおかしな響きの言葉を紡いだ。微量とはいえ、彼女の力を人の子に横取りされても、その態度には余裕があった。
ぐぐぐ……ッ!
地から放たれている黒き光が、少しずつ少しずつ白き光を押し戻していった。