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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
5.紅闇と白光の輪舞
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5-37

「! 本当なのですか!?」

 ティアリスがルーヴァンス=アルマースとの距離を詰めた。

 ぽんっ。

 小さな物音に伴って、ルーヴァンスとティアリスの間に小さな影が生じた。白い髪と紅い瞳、真紅のドレス。アルマースがただの魔として人界に顕れた。

「ルーヴァンスよ。そして精霊よ。セレネは死んでいない」

 紅の瞳が、金の瞳と青の瞳を順繰りに覗いた。

 人の子にも精霊にも、未だ猜疑の影が有った。けれど、一抹の光もまた差していた。

「アスビィルの術を受ける直前、私は魔術でマルクァス共がたむろしている港へと移動したのだ。セレネは私がしばし身体を借りていた影響で意識を失っているが、別段、怪我も精神的な汚染も無い。時が経てば壮健な様子を拝めるだろう」

「……本当……ですか……?」

 金の瞳を見開いて、ルーヴァンスはその希望にすがるように尋ねた。

 ティアリスもまたその隣で、空色の瞳に真摯の色を乗せ、アルマースを見つめていた。

「本当だ」

 単純なひとことだった。悪魔は一切の言葉を重ねようとはしなかった。

 飾らぬが故に、ルーヴァンスもティアリスも、アルマースの言葉を信じられる気がした。

 金と空に漸う輝きが満ちた。

 しかし、アルマースは背の黒翼を羽ばたかせて、ふよふよと中空を漂いながら眉を潜めた。

「とはいえ、悪い知らせも有る」

『え?』

 再び、ルーヴァンスとティアリスの表情に落胆の色が生まれた。

「……上げて落としますね、アルマース」

「セレネのことは先に言った通りだ。心配いらん。悪いのは戦況だ。私はもう参戦できん。セレネを運ぶ術で、人界への干渉限度を超えた。正式に約さんことには、二、三日は人界へ赴くことも不可だ」

 その言葉を証明するかのように、彼女の瞳が真紅から淡紅ときへと変化していた。姿自体も薄らぎ、背後の風景が透けて見え始めた。

「では、やはり僕と契約を――」

「駄目だ。今のでも分かっただろう。お前は魔に染まり易い。その道は行くな」

 魔と共に邁進しても未来さきが無い。向かった未来さきは、更に強大な魔からの支配でしかない。

 悪魔アルマースルーヴァンスを慮り、共に行くことを拒んだ。


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