表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
5.紅闇と白光の輪舞
156/186

5-31

 爆煙が天上の血六芒星ブラッディ・ヘキサグラムを受けて紅く染まっていた。紅色の煙の中から、黒と紅に彩られた魔が飛び出した。

 シスター・マリア=アスビィルは口元を繊月のように歪め、右の手に闇色の刃を生み出した。

黒月刀こくげつとう……」

神刀イルハーズ・ブレイド!」

 ヴンッ!

 歪んだ口元と同様に欠けた月のような黒き刀を携え、紅魔がセレネ=アルマースへと迫った。

 しかし、彼女たちが重なるよりも前に、ルーヴァンスが光の刃を手に魔の攻勢を削いだ。

 光と闇がせめぎ合った。

「ほぉ。先よりも強い光じゃの。良いぞ良いぞ、褒めてやろう」

 無邪気な笑顔を浮かべてシスター・マリア=アスビィルが賛辞の言葉を人の子へ下賜した。

「……きょ、恐悦至極ですね。それではご褒美に魔界へお帰り頂けませんか?」

 余裕のあるシスター・マリア=アスビィルに対して、ルーヴァンスは歯を食いしばりながら苦しそうに言の葉を吐き出した。腕力の差ではなく神と魔の力の大小が、光の刃と闇の刃のせめぎ合いに優劣を与えているようだった。

 紅魔は愉しそうに声を立てて嗤い、刃を振り上げた。

「それはウチが詰まらんので不可じゃ!」

「ッ! はあッ!」

 闇の刃が振り下ろされるよりも前に、ルーヴァンスが光刃を突き出した。光は紅魔の胸に吸い込まれ――

 ずさッ!

 人の子は直ぐに刃を手放して大きく後退った。伴って、すぅっと神の刃が消え去った。

 一方で、闇の刃はルーヴァンスが居た場所を勢いよく通り抜け、そのままの勢いで大地を穿った。

「おや? 避けよったか。流石に争いばかりしておる人界の者よの。慣れておるわ」

 感心した様子のシスター・マリア=アスビィルの胸からは赤黒い液体が、ぽたりぽたりと滴り落ちていた。傷口からは内臓と肉が覗いていた。

 すぅ。

 痛々しい裂傷は瞬時に消え去った。

(……ちっ。傷や痛みを無視して攻撃して来るとなると厄介だな)

 歯ぎしりをして内心で弱音を吐き、ルーヴァンスは両の手に光刃を生み出した。

 彼は離れていた紅魔との距離を寸時で詰め、左の刃を垂直に振った。

 すぱんっと小気味のいい音が響き、シスター・マリア=アスビィルの右手が闇の刃と共に宙を舞った。

「お」

 狐につままれたような顔で紅魔は、人の子と飛んだ右手を交互に見た。

 その間に、ルーヴァンスが身体を回転させて右の刃を水平に薙いだ。刃はやはり肉を裂き、紅魔が身にまとった漆黒の衣服に切れ目を入れた。

 シスター・マリア=アスビィルの上半身と下半身がズレた。

 そこへ白き光と黒き光が迫った。ティアリスの精霊術とセレネ=アルマースの魔術だった。

 ルーヴァンスは手の中の光刃を消して大きく跳び、大地に伏せた。

 どんッッ!!

 再び、爆発に伴って土煙が舞い踊った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ