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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
5.紅闇と白光の輪舞
151/186

5-26

『兎に角だ。ルーヴァンスは悪魔わたしたちと接し過ぎたのだ。せめて、魔と関わらずに傷を抱えて人の中で暮らしたなら、どのような形であれ、何時かは人を赦し、人界を赦し、神を赦せただろう。それが叶わなかったのは悪魔わたしたちの――いや、わたしのせいだ。ゆえに、そいつは私と再び約すべきでは無い』

 人が力を得ることは容易い。魔が力を与えることは容易い。

 けれど、それでは未来さきへと向かえない。

『ルーヴァンス。取り敢えずお前は神のことを忘れろ』

「は?」

 突然の申し出に人の子は眉を潜めた。話の流れが全く分からなかった。

『トリニテイル術は神との関係も肝要だが、今のお前がイルハードをどう意識しても無駄だ。ならば考えるな。奴を憎むな。奴を赦そうともするな。只、忘れろ。即席で出来ることなどそれくらいだ』

「いや、アルマース。忘れろと言われて直ぐに忘れられるわけが――」

『五月蠅い。黙れ。異論は認めん』

 幼き声音の悪魔は問答無用で話を打っ遣った。

『次は精霊だ。セレネ、頼む』

「あ、はい。アリスちゃん。アルマースさんが何かお話があるそうです」

「あ?」

 少女の通訳を受けて、精霊さまが迷惑そうに瞳を細めた。人の子を通じて会話をするのが面倒になってきていた。

「クソ悪魔その二。うっぜーんで、もういっそセレネに憑りついてくんねーですか」

「嫌ですよ!」

 人の子に全力で拒否された。

 魔の者もまたその気は無いようで、小さなため息を吐いてから言葉を人界へ飛ばした。

『仕方が無い。セレネ。地面に六芒星ヘキサグラムを描け。血は要らん』

「え? は、はい……」

 頭へと響いた指示に従い、セレネがしゃがんだ。転がっていた石片を手に取って、魔を喚び込む図形を描いた。

『よし。少し離れていろ』

「はい」

 再び頭へと去来した声の通りに、人の子は六芒星ヘキサグラムから距離を取った。

 人と精霊の視線が大地に描かれた六角の図形へと注がれた。

アブロード

 魔界からは言葉と共に力がそそがれ、ぽんっと小さな物音が響いた。

「ふむ。これで良かろう。私の声が聞こえるな、精霊」

 六芒星ヘキサグラムの中心に顕れた手の平サイズの幼子が、腰に手を当てて居丈高に言った。真っ白な髪を微風に揺らし、淡紅とき色の瞳をティアリスへと向けていた。真紅のドレスは人形の為に作られたかのように小さく、装飾が細やかだった。

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