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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
1.人と悪魔と精霊と
15/186

1-14

 セレネがにこりと微笑み、すっと手を伸ばす。

「さあ、皆さんが道をあけてくれましたよ。ボクと一緒に行きましょう。ところで、初めましてだと思いますけど、今日から初等科に入塾するのかしら?」

 少女の言葉に、女児が両の手の平でぐしぐしと涙を拭いて首を傾げる。

「入塾? 何を言っていやがるのですか?」

 空色の瞳が訝しげにセレネを見た。

 しかし、彼女は直ぐに微笑む。晴れ渡る空の如く健やかである。

 にこっ。

「よくわからねーですが、助かりやがったのですよ」

 ぺこり。

 暴言ばかり吐いている様からは予想不可能なほど、女児は丁寧に頭を下げた。

(うーん。すっごいギャップ……)

 ぱちくりと瞳を瞬かせて、セレネが苦笑する。

 女児は構わずに言葉を続ける。

「すまねーですが、ワタシは急がないといけねーのです」

 半身を少女へと向けて、彼女は右手をシュタッと上げて見せた。黒き艶やかな髪をなびかせ先を行く。

 そして、瞳を細め、にっこりと笑った。

「またあとでお礼に伺いやがるのですよ、セレネ!」

「え? いきなり呼び捨て? い、いや、それはどうでもいいけど…… ちょっと待って――」

 国営塾へと向けて駆け出した女児を追って、セレネもまた駆け出す。子供のくせに存外足が速いようで、なかなか追いつけない。

 人々の間を抜けて、いよいよ建物が近づいてきた。そこで、セレネはようやく異変に気づく。

(……警邏隊? 事件?)

 どおおぉんッ!

 ひときわ大きな物音が響き、悲鳴が轟いた。

「ちぃ! 下級悪魔ごときが調子に乗っていやがりますね! 鬱陶しいったらねーです!」

「え? え?」

 目の前を駆ける女児の言葉に、セレネの脳が追いつかない。

(下級――アクマ? ……悪……魔……?)

 彼女の言葉が真実であるのなら、この場にはリストールの町を覆っている闇の本体が存在していることになる。

(この子の妄想? でも、警邏隊がいて、さっき悲鳴が……)

「きゃあああああぁあ!」

「うわあああああぁあ!」

 先ほどよりも近いところで悲鳴が響いた。

 声を上げたのは、セレネの左側に佇んでいる男女であった。

 そして、彼らの瞳に映るのは――

『餓鬼を嬲り殺す、か』

 にいぃ。

『こいつぁ、最高の娯楽だな。くくく』

 歪んだ口元も瞳も真紅に染まっていた。

 人足り得ないその姿。

「……あく……ま……?」


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