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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
5.紅闇と白光の輪舞
146/186

5-21

(……ちっ。さっきの攻撃でしとめられなかったのはいてーですね)

 心の中で毒づき、ティアリスは白翼を羽ばたかせて天上を駆け回った。迫ってきた黒弾を全て避けてから、シスター・マリア=アスビィルへと意識を集中した。

「ティア!」

 その時、ルーヴァンスの声が響いた。声には焦燥の念がふんだんに込められていた。

 ティアリスが視線を移すと、黒の弾が横手から襲い来るのが目に入った。それをすんでのところで避けた。

 先ほど避けたいくつかの弾が、途中で方向転換して再び襲い来たらしかった。

 どん!

 更なる追撃を防ぐために、女児が白き光弾を生み出して黒弾へぶつけ、意図的に破裂させた。

「ふぅ。今のは危なかったです……」

 ティアリスが天上で白翼をはためかせながらひと息ついた、その時――

 ずんッ!

 アスビィルからまた新たな光が放たれた。

 黒き光はまっすぐ精霊へと向かった。光線の速度は彼女の認識をはるかに超えるものであり、避ける暇はなかった。

 どおおぉん!!

 炸裂音が一帯に響き渡り、天上を爆煙が覆った。

「ティア!!」

 絶望に表情を歪め、人の子が叫んだ。

「ふむ。そう来るか」

 そこで、何故かシスター・マリア=アスビィルが感心したように呟いた。

 暫くすると視界を遮る煙が消えた。

 天上には、白翼を携えた精霊さまを守るように、黒翼を背に負った少女が居た。

「アリスちゃん、ご無事ですか?」

「……セレネ?」

 ティアリスの眼前には華奢な背中があった。黒翼を有したその背中ごしに振り返った顔には表情が有り、瞳には健全な光が宿り、言葉には慈しみが含まれていた。先頃のように、少女が悪魔に魅入られてしまっている可能性は低かった。

 それでも、精霊さまは万が一に備えて身構えた。小さな身体には緊張が走り、ビリリと電流を帯びた。

「あ、アリスちゃん! ボクはきちんと正気ですので精霊術はご勘弁ください!」

 慌てた様子でセレネが待ったをかけた。

 ティアリスは疑念を消し去った様子だったが、意地の悪い笑みを浮かべて身体に帯びた電流を強くした。

「悪魔にそう言わされていやがる可能性もあるですよね」

「ソレ、意地悪で言ってるでしょ!」

 正鵠を射た指摘に、精霊さまが舌を出した。しかし、巫山戯てばかりいられる状況ではないと、直ぐに表情を引き締めた。


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