表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
5.紅闇と白光の輪舞
139/186

5-14

「ボクはセレネといいます。……えっと、というか、ボクはなぜ寝ていたのでしょう? ちょっと身体が痛いし…… それに、避難って?」

 頭に響くアルマースの声を受けて、セレネが丁寧に頭を下げた。傍から見ると妙な光景だった。

「? お前、悪魔に無理やり操られたみたいになって、んで、ティアリスさんにぶっ飛ばされたんだよ。覚えてないの?」

 悪魔アルマースの声が聞こえないヘリオスは、首を傾げつつ、セレネの言葉に返答した。

 アルマースに尋ねたつもりだったセレネは、悪魔の声が他の者に聞こえていない事実をようやく察した。

『無理やりとは心外だな。多少、理性のたがを外して力を与えただけだぞ。全ての行動はお前自身の願いだ。アスビィルに頼まれたのは精霊の足止めであったから、やり過ぎない程度にとどめたしな』

 幼い声音が、言い訳めいたことを可笑しそうに語った。如何なる事情や多少の気遣いがあろうとも、セレネを操って利用したことには変わりないと自覚していた。

 言外に謝罪の気持ちを汲み取ったセレネは、苦笑してからゆっくりとかぶりを振った。

「まあ、それはいいとして、何故まだいらっしゃるのですか?」

 ひそひそと、可能な限り潜めた声でセレネが尋ねた。

 周りがざわざわと騒がしいため、彼女の声が聞きとがめられることはなかった。

『もとより私は、人界へ顕現していたわけではない。魔界に居るままで、お前に声や力を送っているだけだ。それゆえに、精霊の攻撃を受けようがどうしようが、私が傷つくことはないし、滅びる謂われもない』

「……それで、ボクだけが痛い目を見たというわけですね」

『そうだな。ご苦労なことだ。まあ、死ななくてよかっただろう。実にめでたい』

 悪びれた様子のない声に、セレネが苛立った。頬を膨らませて何処とも無く睨み付けた。

 彼女の頭の中で、アルマースが舌を出してみせた。その光景が瞳に映ったわけではなかったが、セレネはそう感じた。

 すっ。

 憤懣やるかたなしといった様子のセレネの隣に、ミッシェルが近寄った。

「セレネ」

「あ、ママ。ご心配おかけしてごめんなさい」

 セレネとヘリオスの母、ミッシェルは、何かにつけて心配性で、子供たちが怪我をしたり病気をしたりすると、直ぐに泣き出すのが常だった。それゆえ、セレネはこういった場合、直ぐに謝るクセがついていた。

 ミッシェルはそんな娘に微笑みかけて――

「アルマースはそういう性格ですし、適度に話を流すのが付き合う上でのコツですよ」

「……え?」

 予想外の言葉に、セレネは呆けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ