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「この状況でのんきに突っ立てるクソ虫どもなんか知ったこっちゃねーんですよ。それより、ヴァン。追撃するですよ」
すぅっとティアリスが指先だけを、ルーンヴァンスに突き出した。
より強力なトリニテイル術を扱う際、精霊と人の子は物理的接触を持たないといけない。しかし、ティアリスはルーヴァンスになるべく触れたくない。それゆえの行動だった。
とんっと指先と指先があわせられ、それを契機として、精霊さまの身体に力が満ちていった。二人の接触と、トリニテイル術士たるティアリスの集中を契機として、神の力が人界へと流れ込んだ。
その力を人の子が受け取り、想像力をもってして具体的な術として形成していった。
紅き光を駆逐するかのように、二人が光り輝き、そして――
「神炎!」
力強い言葉にともなって、轟炎が生じた。
空気を燃やすかのような物音を立てて、轟炎が中空に浮かび上がっている。人間数名をまるごと飲み込まんばかりの大きさのそれは、ルーヴァンスが腕に力を込めることで、空間を駆け抜けていった。
どおおおおぉおんッ!
轟炎は瞬時に墓場へと至り、再び爆音を響かせた。
「このように死者を冒涜するのは、イルハード正教会の信者でない僕でもちょっと心が痛むのですが……」
「我慢しろです」
端的に応えて、ティアリスはちらりと天に瞳を向けた。
その視線の先では、赤き光の描く図形がまさに完成するところであった。真円が六芒星を囲い込み、激しく発光し始めた。
呼応して、墓標のひとつが真っ赤に輝いた。その十字は、先の爆発でもまったく傷ついた様子がなかった。