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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
5.紅闇と白光の輪舞
127/186

5-2

「まあ、クソ虫が死んじまったなら魔化術か顕化術ですね。それならなんとかイケルですか……」

 悪魔の力を人界で引き出すとき、単純に力の大小で考えるならば、同化術、魔化術、顕化術の順で弱くなる。今回、サタニテイル術士たるパドル=マイクロトフは死亡している。つまり、術士と悪魔が同化する術は使用し得ない。

 なれば、次に彼らが採るべき道は、より強い力を得られる魔化術だと予想できた。あとは、どこの誰に『エグリグル』の悪魔の力が注ぎ込まれるのか、という一点だけが疑問だった。

 ざわざわ。

 にわかに、外が騒がしくなった。

 紅い光がリストールの町を彩り、空を染めていた。人々は窓から天を仰ぎ、六つの頂点を基礎においた、赤々とした魔の図形に心を奪われた。

 紅は最後に、六芒星を囲むように円を描きはじめた。緩慢に囲いが出来ていった。

「……サタニテイル術士が死んでやがるっつーのに、妙に手際がいいですね」

 人々と同様に、精霊さまが天に視線を送りつつ、呟いた。眉を潜めた彼女は、先ほど破った窓枠にひょいっと飛び乗った。

「ヴァン! 行くですよ!」

「行くとは、何処に?」

 天上の紅と、床の上の紅に気を取られていたルーヴァンスが、尋ねた。

「寝ボケてんじゃねーですよ! 真ん中のバカでけー建物です!」

 血六芒星ブラッディ・ヘキサグラムの力は全て、その中心に集っていた。力は世と世を繋ぐ門となり、力に見合うだけの魔が人界へと喚び込まれ始めた。

 リストールの町全体で描かれた六芒星は、町の中央に聳え立つ大聖堂へとその力を集めるに違いなかった。

 かつて魔と共に在った者は即座に状況を察して小さく頷いた。

「なるほど、道理です。では、参りましょう」

 ルーヴァンスが手を差し出した。

 しかし、ティアリスはその手をひょいと避け、回避の勢いを転じて回し蹴りを繰り出した。細く小さなおみ足は変質者の手をバシッと弾いた。

「甘えんじゃねーです。というよりも、てめーに触りたくねーんです。きめーです。マジ死んじまえです。ウジ虫以下のてめーは地面を這いつくばってワタシを追って来やがれですよ」

「なっ!」

 暴言を浴びせかけられた人の子が驚愕に言葉を失った。流石に腹を立てたのかと思いきや――

「そんな殺生な! 精霊術でご一緒しましょうよ! ラブ飛行しましょうよ!」

 愚者は平生と変わりなかった。

「状況を考えやがれですよ! まったく……」

 ティアリスが頭を抱えた。その後、腕を下ろして胸の前で組み、人の子を気怠げに睥睨した。

 精霊さまもまた平生と変わらぬご様子だった。


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