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セメント・オブ・トリニティ  作者: makerSat
4.魔に惑いし者の盲進
125/186

4-44

「なのになぜ今になって…… どうして貴方は今頃……」

 絶望の中で限定的にもたらされた救いは、彼にとって決して救いとはなり得ず、更なる闇を容赦なく与えた。人は闇に侵蝕され尽くした。

 パドルは肩を震わせて、佇んでいた。

 大聖堂では孤児や捨て子を何人も預かって育てていた。パドルが八歳の時に一人の赤子がその中に加わった。赤子はマリアと名付けられ、長じてからはシスターとして神に仕えるようになった。

 マリアはパドルを兄のように慕い、パドルはマリアを妹のように慈しんだ。

 けれど、マリアは殺された。無残な最期を迎えた。

 だからこそ、兄は哀しみを怒りへと転じた。闇を迎えた。そして願った。罪人よ滅べ、と。

 その結果、彼自身もまた幾つもの罪を重ねた。

 滅ぶべき罪人と成った。

「あははははははははははははははははッッ!!」

 罪人が高く高く嗤った。

 彼にはもう一つの願いが有った。罪人の滅亡などは副次的な願いでしか無かった。

 怒りゆえに滅びを願い、悲哀ゆえに救いを願った。

 人の求むる滅びも救いも、魔が請け負った。

 神はいずれにも応えなかった。

 そうであったのに――

「なぜなのです! イルハードよっ!」

 人の子は大音声で叫び、すぅと持ち上げた右腕に力を込めた。腕に濃い闇が収束し――

 ぶしゅっ!

 血煙が大広間を染めた。

 パドル=マイクロトフの四肢が千切れた。

 そして、最後に――

「……むっつ……め……」

 ぽとり。

 掠れた言葉を最期に残して赤毛の首が墜ちた。傷口からは罪深き血が止め処なく流れ出でた。六つ目の紅き頂点がリストールの町に刻まれた。

 遂に、愚かな願いを叶える紅き血の六芒星が完成した。


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