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セクハラという逆境

今回は短めです

 知道は町の南門へと向かった。南の門を出るとレベルの低い魔物が出てくるという情報を立ち聞きした。道もほぼ一本道で初心者向けとなっていると。

 そこにたどり着くまでの道中、知道は何もない方向を向きながら喋っている人を多々見かけた。それが気になって仕方がない様子。

「なあキュリ、さっきからすれ違う人が横を見ながら歩いてるいるのを良く見かけるんだが、なにやってんだ?」

「はい。みなさんも私たちと同じく、精霊と話をしているのでしょう。この世界では一人につき一つの精霊とお供が出来るようになっています」

「他の人の精霊って肉眼で見えるの?」

「はい、設定画面を出して精霊視覚の所を可に変更してください」

「こうか?」

 知道は目の前に設定画面を出して、言われた通りにやってみた。

 すると、大勢の人の横に120センチぐらいの精霊が浮かんで見えた。

 精霊の形は人型をはじめ、虎や馬を縮小化した動物のような形をしているもの、さらにはこれまた小さな船やバイクなどといった乗り物まである。

「ちなみに他の人の精霊を見えなく設定していた理由は2つありまして、とりあえず目の前の精霊を触って見てください」

 知道が目を下に向けると、そこに幼い妖精がいた。

 非常に愛らしい顔をしている。髪は黄色で波打つように長く、目はパッチリと大きい。キュリも可愛いのだが、キュリを月と例えると彼女は太陽のような明るい印象を受ける。

 その妖精は知道には気がついていない様子。

 知道は頷いて、目の前にいた小さな女の子の精霊のお尻を──堂々とさすった。

 しかしその手は空を切った。

 そして幼い精霊は違和感を察知し、その手を見た。

 自身の股から貫通して伸びてくる大きい手。

 自分が何をされたのか整理中の精霊と、特に悪びれる様子もない知道と目が会った。

「なな……何をしていらっしゃるのですか?」

 涙ぐんで言う幼い精霊。

「いや大した事はない、ケツを触ってただけだ」

 それを聞いて幼い精霊は翼を大きく広げた。

「いやああああああ! マスターーー!!!!」

 そう泣き叫びながら、何かに助けを求めるように飛んでいってしまった。

「…………」

 無言のジト目でプレッシャーを放つキュリ。同じ精霊に何してくれてんだ、と言わんばかりに怒っている。

「すまん男としての本能が出てしまった。俺じゃなく、男として産んだ親を責めてくれ」

「何でも親のせいにしない。まあ、とりあえず理由は分かったでしょう。対人戦での精霊による攻撃は禁止されていますし、見えなくても問題ないのです」

「人間は精霊に触れる事が出来ないってことか。なるほど、見えたら変に疲れるってのはあるな」

「もう一つの理由は──こちらが重要な理由になりまして」

 キュリは急に真剣な表情をして周囲を見渡した。

「マスター、あれを見てください」

 そっと前方を指さすキュリ。

 指先を辿ると……そこには爽やかな男の勇者と、可愛らしい女の妖精が、少し頬を赤らめながら笑顔で語り合っていた。

 その姿は、まさにカップルである。精霊と人間を垣根を越えた美しくも儚い恋愛──。

 それをゴミを見るかのような目で見つめる二人。

「キモすぎワロタ」

「本当に気持ち悪いです」

 二人、言葉は違えど同じ感想を言った。二人の意思が初めて通じ合った瞬間である。

「こう……ああいう甘い空気に当てられて、何かの間違いで、知道さんと私の恋とかが始まってしまうと……人間と精霊の恋なんて気持ち悪いでしょう。精霊と人間、ましてマスターとなど、付き合ってはならないものなのです」

「今までの俺の行動の、どこにその可能性を感じたのかと疑問に思うが、まあいいか」

 知道は再び精霊視覚を切った。しかしキュリだけは見える。どうやら、マスターとの関係である精霊は絶対に見えるらしい。

 そうこうしているうちに、北門へと到着した。木製で出来た門は大きく、高さは5メートル程もあった。

「よーし、俺のデビュー戦か。派手に決めてやるよ。日ッシリの福留ぐらい思いっきり決めてやるよ」

「出来ればWBCの福留にしてください。蘇りましょう」

 知道は大きな北門を大胆に蹴り開けて、モンスターのいる道へと入っていった。

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