骨まで溶かして
キヨに案内され、ビルのエレベーターに乗り込む。回数表示は十三階。
「ここが宿泊施設。一階、二階は事務所。三階から十二階が色々勉強するところ。十三階から十五階が居住区ね。一応、同じフロアに他の人間もいるけれど、その辺の詳しいことは、部屋にあるしおりでも読んでおいて」
適当な説明に、椎菜は先行き不安だった。
十三階につき、通された部屋は広いワンルームだった。二十畳はありそうだから、少しくらい区切って欲しいものだが。
だが、トイレ、風呂、簡易キッチンに冷蔵庫と、充分暮らしていける設備が整っている。
「それじゃ、荷物はここに置いていくから。わからないことがあったら、内線の一番で電話してくれればいいから。じゃ、これ返す」
というと、キヨはいつの間にか椎菜の携帯電話を手にしていた。
「いつの間に……!」
「キミの父親のメールアドレス以外、全部消去しておいたから。外部との連絡は禁止。わかった? 文句はお父様に言うように!」
携帯を投げて渡してくる。慌ててアドレス帳をひらく。
荷物を廊下に置いたままキヨは去っていった。
「ほんとに、アドレスも履歴も全部消されてる……」
馬鹿にしていたが、あの先生、抜け目ない。
ここにスカウトされたということはそれなりの才能があるのであろう。
「もう、部屋の中まで荷物運んでくれればいいのに」
文句を言いながら、キャリーバッグやその他衣服の入ったバッグを部屋に入れる。
ウォークインクローゼットもあるし、収納には困らないな、と思ったところで、部屋がノックされた。
そういば、ここには男性しかいなかったはず。
相手が誰だろうと不安に思って覗き穴を見る。すると、そこには金髪の女性がいた。
体に入っていた緊張が解ける。なんだ、女性もいるじゃない。
椎菜は内鍵を開けて、その女性を迎え入れた。
「初めまして、シーナちゃん」
にっこりと微笑む。ハーフのような顔立ちで美しいのだが、何か違和感があった。
「はじめまして」
「あたしはアリサ。あなたよりひとつ学年が上になるのかな。高校生なら二年生。よろしくね」
「あ、はい。よろしく……」
差し出された手を握る。まだ違和感が残っている。
「あの、よかったら、部屋でお話しません?」
この人に興味があり、そう誘い込むと、首を横に振られた。
「聞いてない? この部屋、シーナちゃん以外が入ると、問答無用でそこから熱光線銃で音もなく撃たれて、骨まで溶けるんだよ」
指をさされた上を見ると、出入り口の上には銃と、監視カメラがあった。
「動くものは、問答無用でね」
そう言うと、出入り口付近にあったぬいぐるみを取り、ポイと部屋の中に投げた。
すると、熱光線銃はそのぬいぐるみを焼き焦がしていく。
焦げ臭いニオイに顔をしかめる。思わず、背中が冷たくなった。
「なんで、ここまで……」
「会長……じゃなくて、ダークフレイムマスターが、娘大事さにつけたみたい。ゴキブリも駆除してくれるわよ」
「ダークフレイムマスター?」
椎菜が問い返すと、アリサは目をくりっとさせた。透き通るような瞳で、アリサは続ける。
「あなたのお父様。自分のことは黒炎の使い手と呼べ、って。知らない?」
だから、さっきキヨの学校の通称の提案に黒炎の騎士なんてのがあったのか!
あとで文句のメールを送らなければならない。娘に恥をかかせるな、と。
ということで、アリサとは、居住区にあるカフェスペースへと行くことになった。
学校というより、ちょっとした商業施設だな、と思った。




