あーゆーすぴーくじゃぱにーず?
「ね、ねぇミュウ。ケネディって日本語しゃべれないの?」
ミュウと話すと、妙にどもってしまう。そんな自分を恥じながら、瞳を見ないように話しかけた。
そういえば、ミュウだけは内線番号を教えてこなかった。
知りたいな、と思って軽く首を振る。
何を思っているんだか。
「いや、話せるよ。コイツの専門は交渉だから」
「こ、交渉ぅ?」
わかりやすく二度見してしまう。
こんなに幼く見え、気が弱そうで、さっきから一言も発していないような、内気(に見える)少年が?
「でも、自分が話したい、と思った時しか話さない。言語は、三十以上は話せるはずだ。英語に中国語、ロシア語にタイ語とか、全部読み書きが出来る」
「よんじゅう……」
「ああ、四十の国と地域か。随分増えたな」
ぽそり、とケネディが口を開いた。どうやら、三十ヶ国語ではなく四十以上あると言いたいらいしい。
結構、気が強いんだな。
背の大きなミュウに対しても、物怖じせず言い返す姿に、意思の強さを感じた。
って、四十以上って、何語が含まれているんだ。
聞いたこともないような国と地域も含まれるんだろうな……。
「でも、交渉ってどういうこと? ドラマに出てくるような、犯人との交渉?」
ケネディに聞いたが、まったくもって答えてくれない。
男嫌いだけど、頑張って話しかけたのに!
若干イラっとしつつ、ミュウの顔を見る。
ヤバ、目が合っちゃった。
慌ててそらすが、ミュウはさほど不審には思わなかったようなので、ケネディの代わりに答える。
「相手は、人の言い分など聞かない人間であることも多々ある。だが、何もまったく聞き入れないということではなくて、こちらの提示した条件によっては飲む場合もないことはない」
歯切れの悪い言い方に、椎菜はうーん、と首をかしげる。
「つまり……ほとんど無意味になることもあるの?」
「それは、交渉人の腕次第っていうか……」
「ボクは確実に、交渉のテーブルにつかせ、そしてこちらの有利になるように出来る」
突如として、ケネディははっきりと口を開いた。
負けん気の強い瞳は、その場にいた誰もが押し黙ってしまうほどだった。




