爆弾好きの正義とかわいさ
「国レベルの戦争だけじゃない。テロ行為を事前に潰すことで、被害は最小になる」
そんな大きなことが可能なのだろうか。
父は、そんな広い視野で、この学校を作ったというのだろうか。
「理想論だとは思わないんですか?」
そう尋ねると、ミュウはふっと笑った。
「そうかもな。でも理想がなければ何も出来ない。そうだろ?」
「そんなに深く考えたことないというか……」
「いや、構わない。君だって、この間まで普通の人間だったわけだから」
そう言われてほっとした。
「他のみなさんも、そういう考えなんでしょうか」
「……どうだろう。コウには会った?」
「はい」
「あいつなんかは、ただ自分の趣味を生かせるだけで、理想とかそういうのは掲げていない気がする」
「ああ、それっぽいですね。あとヘンタイですし」
「……アイツ……。なんだか、すまないな」
「そんな、謝るべきはアイツですから!」
まともに謝罪できる人がいるだけで感動だ。
「けど、父もそんなに理想に燃えているとは思えないんだけど……」
家族のおかしな行動を思うと、自分がまともに育ったとはゆめゆめ思えない。一応マトモなつもりではあるけれど。
「君の父上は、何も悪いことで金を稼ぐばかりではない。罪のない人をターゲットにする悪人からも、金は貰わない。そんな悪人が行動を起こす前に、僕は止めたい」
から『も』ってことは、罪のない人からも奪っているのか。
前半、さりげなく父が悪いことをして稼いでいるという情報が耳に入ったものの、後半の証言には驚いた。
「父が、そんなに正義感溢れる人だとは思ってもみなかったです」
真顔で言うと、ミュウは小さく笑った。
「酷い言い様だな」
その顔に、動悸がした。
動悸というのもおかしな話だが、まだ爆発の余韻のままドキドキしている。それがずっと続くものだから、ミュウに対してなんだか妙な気持ちになる。
「父は、未だにつかみどころがないというか……何が正しいのか分からないので」
金が欲しいだけなのか、何か思うところがあるのか。
気分を変えて話すことにした。
ここで言い合っても結論は出ない。
「ミュウさんみたいに、そんな気持ちでスパイになる人もいるんですね」
「ミュウでいい。本名じゃないから敬称は必要ない」
「あの、なんでミュウなんですか? ミュウミュウのブランドが好き……ってワケじゃないですよね?」
すると、ミュウは眉をひそめた。




