気づけば真っ白元通り
………大丈夫だよって、何がだろう…。
僕は大丈夫だよ?気に病まなくてもいいよ?それともただの寝言?……謎だ。
ガラッ
後ろから扉が開く音がした。
恐る恐る後ろを向くと、そこにいたのは男の子のお母さんで。お母さんは顔を強張らせ、私を見つめる。その頬は徐々に赤く染まり、やばいと思った時には金切り声で叫んでいた。
「あんたどのツラ下げてここにいるのよ!!!あんたが自殺なんかしようとしたから、…息子は…武彦は…!!出て行って頂戴!!そして今度こそ私たちの前から消えなさい!」
「……申し訳ございませんでした。…………もう、来ません」
私たちは消え入りそうな声でそう告げ、窓から外へ出た。
「そんなことをしてるから、こんな事故になったんでしょう!!いい加減学んだらどうなの!?」
後ろから聞こえる金切り声が徐々に小さくなっていく。
……ハハ。こんなこと言っていい立場じゃないんだろうけど、やっぱり…。
「…つらいなぁ」
『なら、帰っておいで』
……え?
何処からか声が聞こえた気がした。次の瞬間、地面に穴があき、私は吸い込まれるかのように暗闇の中に消えていった。
ゴスッ
「痛っ!!」
今度は無事地面に着地した。
目を開けて見ると、そこはあの真っ白な空間で、目の前には神様がいた。
「……た、ただいまです」
「うん、おかえり。君なんてことしてくれてんの?あの子もう死んじゃうよ?」
……死ぬ?あの子が?私の所為で?
「まあ、君に潰されなくても遅かれ早かれ死んでたんだけどね」
でも、私の所為で寿命が縮まった?私所為だ。私があの子を。
「いや違う。君を落とした僕の責任だ。だからね?あの子は他の世界に転生させることにしたよ。勿論、手伝ってくれるよね?」
私は当然首を縦に振った。
今、私の目の前にはとんでもない量の書類がつまさっていた。
「あの、私はどれだけの関係ない仕事をやらされなければいいのでしょうか」
あまりの多さに呆然とする私を一瞥し、神様は自身の手元にある書類に手を伸ばした。
「君の仕事だから」
「あの子のは?」
「え?君、あの子の名前知ってるの?」
「武彦さんです」
「それだけじゃ、あの子を特定するのは難しい。なら、一通りやっちゃう方がはやいんじゃない?
それにあの子は今すぐ死ぬわけじゃないし」
「いや、でも…」
これは関係なさすぎだろう。
"先輩と恋人になれますように"
ここは神社じゃねぇぞ。
「まあ、僕の為に頑張れ」
いやいやいや。私はあの子の為に手伝うのであって、あんたの為じゃないからね!?
「僕の為」
「いやいや」
「僕の」
「なんでそこにこだわるの…」
もういいよ。わかったよ。あんたの為に頑張るよ。
あんたもあの子の為に頑張れよ。
「君さ、さっきから思ってたけど、なに勝手にタメで話してんだよ。生意気」
はいはいすみませんでしたー。