気づけば殺人未遂です
「ぎぃやぁぁああ!!」
私、只今落下中。
「死ぬぅぅぅううう!!」
もう一度死んでいるのに、また死にそうになるとか凄いことだね!!
え?生への執着はないんじゃないかって?でもやっぱり死ぬのは怖いよ!
「なんて、自問自答してる場合じゃねぇ!!!マジで死ぬって!!ぎゃぁあああ!!!ヘルペスミー!!!!」
あ、ビルだ。ビルが横にある。
ゴスッ!!
嫌な音がして、頭が割れるような痛みに襲われる。死んでも痛いって感じられるんだ。…って違う!!
「痛い!!痛い死ぬ!」
慌てて頭を摩る。これって人間の本能なんだって。摩るとそこの痛みが麻痺するらしい。
暫く摩っていると痛みが引き、手を離す。しかし、その手は、ドス黒い赤に染まっていた。
「……うわぁぁぁああああ!!!」
赤赤赤!血!!え?嘘!!私の血!?骨無いのに血は通ってるの!?なにそれどゆこと!?つか、もう痛み引いてるぜ!?こんなに血が出てるのに!?ありえねぇぜ!この体!!
しかし、落ち着いてみると、私の体には傷一つ付いていない。
じゃあ、何処から?
その疑問はすぐに解決することになる。下だ。
この、私のお尻の下に感じる僅かな温もり。
恐る恐る下を見ると、案の定、同じ年くらいの男の子が血を流し、倒れていた。
「………きゃぁぁああああ!!」
まさか、私、人殺しを…!?頭にジャージを被り、パトカーに連行される私の姿が浮かぶ。幸運にもここは人通りがなく、目撃者もいなさそうだ。逃げるなら今しかない!!…って駄目だ!手が血で染まっている!!私が犯人ですと言っているようではないか!!って、こんな考えになる時点で、もう人間失格だ!!ま、まず、救急車を呼ぼう!どうやって!?
あああ、それよりもこの人が生きているかどうか確かめないと!!脈か?脈なのか!!
男の子の手首に指をあてる。
わかんねえ!!私は医者でもなんでもないんだよコンチクショー!!
「ちょっと、大丈夫!?起きて!」
もう無我夢中で男の子の顔をペチペチ叩く。
そうしてるうちに、さっきの私の叫び声を聞き、寄ってくれたらしいダンディなおじさんが現れた!!
「どうしたのかね?……って、うわぁあ!!き、君が…こ、これを…?」
「んなわけないに決まってます!!救急車を呼んで下さい!!今スグに!!」
その時、私はよほど酷い顔をしていたのだろう。おじさんは、顔を引きつらせながら頷き、ポケットに手を忍ばせた。それを確認し、私は男の子に再び意識を戻した。
お願い!私を人殺しにしないで!!つかこうなったのも私を宙に放り投げた神様が悪いんじゃん!!もし死んで、恨むなら神様を恨んでくれ、名も知らぬ少年よ。
「でも、出来るだけ頑張って耐えろ!親より早く死ぬ奴があるかー!!」
…あ、それ自分のことじゃん。
あの後救急車が来て男の子を運んでくれた。そして、何故か私も同行することに。一命を取り留めた男の子は、個室の病室に運ばれた。そして数日がたち、私も警察の事情聴取を受け(自殺しようとしたら下にこの子がいて潰してしまった、と答えた)、この子の家族に会い、頬に大きなもみじを貼られたりしながら(泣きながら二度と顔を見せるなと言われた)、それでもこの子の家族がいない時間を見計らってこの病室に足を運んでいる。男の子は植物状態であれから目覚めていない。この子をこんな状態にしてしまったことには責任を感じているし、神様の処に戻りたくても戻り方がわからないため、この子の家族が来ている時はこの病室の窓の近くにある木に登り、中の様子を覗いて、出来るだけ男の子の近くにいるようにしている。……これってストーカー?………だ、大丈夫だ!問題な…い……。
「……ごめんね?」
いつも通り男の子の手を握り、謝罪する。ここまではいつも通りだった。違ったのはその後、男の子の手が握り返してきた。
「!お、起きた!?」
男の子の瞼が少し持ち上がり、口から微かに声が聞こえた。
「………ょ…ぶ……大丈夫…だよ」
男の子は再び瞼を閉じた。