運命の出会いー2
突然の事に意識までもが止まった。
確かに死を覚悟した。
それほどまでに逃れられぬ状況だったと思う。
それが・・・。
「ーーちっ・・・おいそこの!助けてやったんだからさっさと動け!」
はっと意識を取り戻し、慌てて前方の群から距離をとった。
どうやらゴブリンは、自分の背後に現れた人間を援軍だと思ったのか、自分へむかうか背後の人間に向かうかで迷いが生じたようだった。
おかげで命拾いをしたわけだが・・・しかし、いったい誰が・・・?
つい気になり助けてくれた人間へと視線を「おい、煙幕は作れるか?」向けようとしたところで声をかけられた。
「来る前に一つ・・・作っておきました」
「一つだけか・・・まぁ、俺の手持ちも足せばなんとかなるか」
なにを・・・と言う必要はなかったようだ。
そして、帰ってきた返答で何をすればいいかもわかった。
「どこに作ればいいですか?」
「・・・右の大きく枝のはった木の辺りに作れ。
・・・・3・・・2・・・1・・・今だ!」
未だこちらへの出方を探っていたゴブリン達の側面、指示通りの場所へ、火をつけた煙玉を投げつける。
煙の尾を引きながら、投げた煙玉は吸い込まれるように飛んでいき・・・ねらい通りの場所でもくもくと煙を出し始めた。
それを追うように、背後から反対とその奥へと煙玉が投げ込まれ、すぐにあたりを煙で包んでいく。
「よし、退くぞ」
そう一言だけ言うと、即座に身を翻し、森の中へと消えていく謎の男。
煙の中からゴブリン達の戸惑う叫びを背に受けながら、トリスは謎の人物を追って森へと駆け込んだ。
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「ありがとうございました」
森に入って暫く。
ある程度距離をとった川辺で腰を下ろしていた謎の男に、トリスは深々と頭を下げた。
この人がいなければ、間違いなく死んでいた。
「次行くときは、もうちょい準備していくんだな。一人で潰そうなんざ思わずに・・・な」
川の水で顔を洗い、顔についた水滴を布で拭いながら、男は振り返った。
「とりあえず、戻ったらちゃんとギルドには報告しとけよ?
・・・じゃねえと、場合によっちゃ今回のことで動きが活発になるかもしれねぇからな」
30半ばだろうか・・・いくつかの傷を刻んだ顔には、険しい表情が浮かんでいた。
「活発に・・・?」
「ああ。今までも少しづつ駆除はしたんだろうが、今回は中途半端に手を出しすぎちまってる。
ゴブリンは利口じゃないが、バカでもない。そのうち近くの村が襲われるだろう」
トリスはその言葉で、自分のした事がどんな意味を持つか、ようやく認識した。
「そんな・・・俺のせいで・・・?」
「そう、お前のせいだ。だから、できるだけ早いうちにあの巣を潰さにゃならん。
まぁ、そこそこの町のギルドなら、あの程度の巣を潰せる位の人員は集められるだろう。
だが、お前がそれを伝えなけりゃ、誰も今日の事に気がつけない。
自分がした事を理解したなら、きちんと報告しておくんだな」
そう言って男は街道の方へと歩きだした。
「あ、ちょっと・・・ちょっと待ってください!」
慌てて後を追い、声をかけるトリス。
「なんだ、まだ何か用があるのか?」
助けてやっただけじゃ足りないのか?と言わんばかりに、鬱陶しそうな声。
振り向くことすらしてこない。
「あ、あの、巣を潰すまで、手伝っては貰えませんか?」
「なんで俺がそこまでせにゃならん。巣を潰すくらいならそこそこの実力の冒険者が10人も集まればいけるさ。
俺は別な用事がある。後はお前がなんとかしろ」
そう言い残し、彼はスタスタと歩き去ってしまった。
その後トリスは町へ戻り、今回のことをギルドへ報告。
注意を受けた後、カイトや町の冒険者と共に再度ここへ訪れる。
ギルドから討伐依頼が出され、その依頼を受けたトリス含む5名の討伐隊は、危なげなく仕事を終えた。
結局その後、彼とは再会することなく町を出る日がやってきた。
よくわからない、どこかの冒険者との一時だけすれ違った。
そんなものだと思っていたトリスは、後にこの出会いが彼の未来を変えることを知らない。
はい、ご無沙汰してます。
第一部が終わったらあれこれしようと思ってるんですが、なかなか終わらない・・・。
あれやてこれやって・・・この話の後にこうやって・・・とか考えてたら・・・。
自分で書き始めた物語ですが・・・なかなか・・・一筋縄じゃいかねっす・・・。