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穏やかな日々

ニーナの話が抜けていましたので加筆修正しました。


以後気をつけます。。。

ゴロゴロゴロゴロ……


ゴロゴロゴロゴロゴロ……


ゴロゴロゴロ……



……はっ!?



あぁいけない……また眠ってたみたい……。



勝手にくっつきそうになるまぶたを無理やり引き剥がし、ぐーっと伸びをする。


ぱきぽきっと背中から音がして強張っていた体が少しだけほぐれたような気がした。


「……うー……」


それでも眠気は取れないままで、またもまぶたが自然とおりてきてしまう。


街道を走る馬車の車輪の音とは、これほどまでに眠気を誘うものかと驚いてしまう。


「う……ん……」


耐えきれずにそのまま眠りの奥深くへと……


ガタンッ!


行きそうになったところで、不意に大きな振動。


車輪が石でも踏んづけたんだろうか?

そのおかげ?か、なんとか意識を繋ぎ止めた私は、足に頭を乗せて寝ている愛らしい生き物の頭をそっと撫でながら、ひたすらに睡魔という恐るべき魔物との戦いに戻る事になった。







「平和よねー」

「そうだね」


御者台に座っていても特にする事もなく、ただたんたんと前に進ませるだけという、どうにも“つまらない”時間を過ごすだけ。


出発直後は今後の進路等の相談をしたりもしたが、それも終わった今は本当に暇なのだ。


チラリと荷台の方を見てみれば、ルルカがクルトを膝に乗せて見事に船をこいでいる。


クルトはたまに降りて走り回ったりもしているが、最近はルルカの膝がお気に入りのようだ。


あまりに暇過ぎて日に何度もブラッシングをされているせいか、やけに毛並みが良くなっている。


トリスは……どうやら防具を磨いているようだ。


新しく買った鎧がとても気に入っているようで、暇があれば磨いているようだけど……おかげで買った時よりも綺麗になっている気がする。


進んでいる間は訓練をするわけにもいかないし、する事がないのはわかるんだけれど……。


「あれ……もし戦闘になって傷がついたりしたら、どうするんだろう」

「……気にしたら負けよ」


ふと気になった疑問をなんとなく言ってみれば、同じ事をすでに考えていたのか妹から即座に返答。


……今日も世間は平和なようだ。







「うーん……」


まずい。



とても、まずい。



何がまずいのか。



確かに、今の現状では“ソレ”を正確に調べる事は出来ない。


計る物が無いからだ。


“ソレ”を計る為には、専用の器具が必要で、それはある程度裕福な家か、大きな公共施設に行かなければならない。


一応ギルドにもあるにはあるが、人用ではない為に、細かく、正確に計るのが難しいのだ。



……あんな衆人環視のど真ん中で計る気にもならないし。



そんな事になれば、もう人前に出られなくなってしまう。



だからこそ、実際に目に見えないからこそ、余計に気になる訳で。



やはりあれだろうか。



自分の足で歩く事がないからだろうか。



以前の旅では馬車に乗って出かける事はそう無かった。


常に歩いていたおかげで、特に増減する事も無かったのだろう。



だが今は、馬車に日がな一日揺られ続け、夕方ごろになったところで馬車を降り、野営の準備をしたり、街での宿泊先に行ったりする生活だ。



カイトさんやリース姉さんが狩ってきた獲物はとても美味しく、違う街での夕食も、今はそれなりにお金を持っている為か、意外と豪勢だ。



……食べすぎてしまうのは仕方ないと思うのだ。



どうやら同じ事を姉さんもルルカも考えているらしく、時折脇腹や二の腕を触ったりしている。



……そう、それがいけないのだ。



きちんとした数値がわからないからこそ、ふとしたはずみで触った感触がとても、そう、とっても気になってしまうのだ。




なんとか……なんとかしなければ……。



この件の解決は急務だ。



乙女のプライドとか、いろいろな物に関わってくる。



とりあえずは、そう。



まずは、夕食の量を減らそう。



だから、いま、この手にある昼食は……食べて……いいよね。




昨日の夜の残りで作られた昼食のいい香りに誘われて、つい……つい誘惑に負けてしまうニーナだった。






……ゴシゴシ……


はぁーっ……ごしごし……


ごし……キュッ!




一心不乱に磨き続けていたが、これまでと手応えが変わった事で思わず笑みが漏れてしまう。


「よし……これで全部磨き終わったかな?」


周囲を見回し未だ手付かずの箇所がないか探してみる。


自分の周りには、先日買ったばかりのプレートメイルの部品溢れていて、その全てがぴかぴかと光り輝いている。


この鎧はダンジョンで手に入れた古代のアイテムを換金する事で手に入れたもので、体の各所に装着する部品を装着者自身で選ぶ事で、好みの重さ、防御力にする事ができるという優れものだった。


(くだん)の迷宮での戦いで、もっと防御力が高ければリーダーと一緒に敵の注意をひけた。

そうすればもう少し楽に……自分達だけで狩れたのではないかと、そう思い購入した物だった。


元々以前から自分が注意を引き、リースが隙を突いて攻撃するという組み合わせでやっていたものの、誰かに盾の使い方を教わった事も無く、全身を覆う鎧を手にする金銭的な余裕も無かった為、大ぶりの剣を盾がわりに必死で攻撃を防いでいたのだ。


だが、今回の件で資金的な余裕ができたために、リースに付き合ってもらって、街で一番いい防具店で購入したのだった。


その時はルルカの親父さん……トルネさんだったか……の協力でだいぶ安くして貰い、今迄では考えられないほど質のいいものを手に入れる事ができた。



……これさえあれば、いざという時自分の身を盾にしてリースを守る事もできる。



そう考えれば、この高い買い物も無駄ではないと思える。



本当は盾の使い方も学べればよかったんだが……。


「今度またあの街に行く事があれば、使い方を教えて貰おうか」


もしその時にまだウォルト達がいれば……だが。


あの人の盾捌きは見事の一言に尽きた。


今まで何人かの盾使いと出会ったが、その中でも群を抜いてうまかった。


だからこそあの魔物の攻撃を一人で受けきれたのだろう。


自分にもそんな力があれば……。


「まぁ、先ずは使い方を知らなきゃいけないし、この鎧になれる事が先決だよな」


買ったばかりの防具では、どれだけの攻撃が防げて、どんな衝撃を逃がせないのか。

そしてどんな動き方ができるのか。


そういったものを知らなければその次に手を出す事などできはしない。


一足飛びに手を出して帰らぬ人となった冒険者は後を絶たない事はよく知っている。




それでも、これを手に入れた事でできる幅は広がったと言う事で……。



「ぐふふ……」


怪しい笑みが漏れてしまうのも不思議ではないだろう。



とりあえず磨いた防具を片付けようと立ち上がり……ガシャリ……。



金属質な音がして、思わず足元を見下ろせば、着けたままの脚部装甲。



……磨き残しに気がつき、いそいそとそれを磨く作業に向かうのだった。







*+*+*+*+*+*+*+*+*






ゴトンという振動と共に馬車が止まる気配がした。


微睡(まどろみ)の中にいたクルトは、なんとなくその気配に体を起こしてみる。


頭を預けていた少女は、そのままぐっすり眠ってたしまったようで、荷台の壁に体を寄せて寝息をたてている。


思っていたよりも早くに馬車が止まった気がしたクルトは、狩りに出るのかと期待しながらカイトがいるはずの荷台へと近寄っていった。



幌の隙間から顔を出し、カイトの顔を見上げると、それに気がついたカイトが「ああ、起きたのか。狩りに行くよ」と、期待した通りの言葉をかけてくれた。


馬車で移動している間は、遅れないようにと馬車の中に乗っている。


別に降りて走っても全く問題ない速さではあるんだけれども、同じスピードでずっと走り続けるのはどうしても疲れる。


どうしても体を動かしたい時以外は、やはり馬車の中にいるのが普通だ。


なので、たまの野宿の時などに、カイトと一緒に野を駆ける時が、今のクルトの一番の楽しみだった。


やっぱり、狼である以上狩猟本能は消える事はない。


特にカイトと一緒に狩りに行く時は格別だ。


人と狼の差はあれど、まるで父親と一緒に狩りに出ている気分になる。


その父親は、誰かに操られた末にカイトによって討ち取られたという事だったが、その事でカイトを恨むつもりはない。


元々は神の化身として崇められていた父は、よく自分に「弱き者を護れ。自分の正義を持ち、決して欲望に溺れるな」と言い聞かせてきた。

それは、黒狼族としての矜恃だったのかもしれない。


そんな父親が悪さをした……という事なら、それを正されるのは必然。



いつかは自分もあの森に帰る事になるかもしれないが、それまではこの気持ちのいい人と一緒にいたいと思うクルトだった。







*+*+*+*+*+*+*+*+*





日が沈み、暗くなった世界で5人と一匹は、たきびを囲んでゆったりと流れる時間を楽しんでいた。


中央のたきびの側には今日の獲物の姿。


こんがりと焼かれた肉からは、美味しそうな匂いが湯気とともに立ち昇っている。


それぞれの分を切り分け、思い思いに食べ進める。


最初の方は遠慮していたのかあまり食べなかったルルカも、今ではみんなと同じくそれなりの量を食べている。


ただ、そのおかげか微妙に体重を気にしているようで……時折馬車のなかで脇腹をつまんでいたりする事もあるのだが。


ちなみに以前その場面に遭遇した時は、顔を真っ赤にして半泣きになっていたので、その話題は極力避けるようにはしているのだが……。


ちなみに食べ始める時も若干の躊躇してから口をつけている事に気がついている事は触れないようにしている。


触れる事でどんな反応をするかは、妹で既に経験しているので、同じく轍を踏む事だけはしたくない。



まあ、いつも美味しそうに食べているから問題は無いとは思うが……。



体と言えば、クルトも出会った頃に比べればかなり大きくなっている。


最初は仔犬程度の大きさだったのが、今では成犬と同じ位の大きさにはなっている。


父親の体躯はさらに大きく、人が乗れそうな位だったので、まだまだ子供のうちではあるのだろうけれども。


そんなクルトは既に食事を終え、お腹を真上に向けてゴロンと引っくり返っていたりする。


そんな姿はまだまだ子供で、中身まで大人になるのはもう少しかかりそうだ。



いずれにせよ、これからしばらく……いや、できればずっと、こんな幸せな日々が続いていって欲しいと、カイトは夜空に輝く星達に、ひっそりと願っていた。


最低週一更新を目指しつつ頑張っていこうかとおっもていたりなんだり。


今後も気長にお待ちください(滝汗

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