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帰還

次で2章が終わり……かな?

次の日からカイト達は、失った時を取り戻すかのようにゆっくりと街へと向けて歩み出した。


一晩では語り尽くせぬ、3年という長い月日の間にお互いに起きた事、経験した事を、只々笑い合いながら話続けた。


トリス達がとある街で会った不思議な人物や。


カイトの屋敷に来たお転婆な皇女。


初めての迷宮で拾ったトリスの剣の話や、リースに一目惚れしてきたうっとおしい貴族の話。


三日間話続けても話はまだまだ出てくる。


当然その話ばかりしていたわけではない。


今回潰した迷宮で見つけた宝の分配等も話し合った。


今回は未発掘の迷宮だったので、ほぼ全てカイト達の手で集められていた。



様々な力を付与された幾多の宝石や武器達。

古代の金貨や装飾を施された燭台。


おそらくこれを売り切ればしばらくは遊んで暮らせる。

それだけの価値がある宝物達だ。


最初に迷宮の奥に安置されている所を見た時はため息どころか、呆気にとられて魂まで何処かにいってしまうんじゃないかと思った程。


既に多くの迷宮が探索され尽くした今では、未発掘の迷宮を最初に制覇する事など、大きな金脈を見つけてしまう程に幸運な事だ。


「俺は、きっちり5等分するのがいいとおもっている」


分配の時に口火を切ったのは、パーティーリーダーのウォルトだった。


「今回はカイトがいなければきっとこれを持ち帰る事はできなかった。


流石に全部とは言えないが、彼を含めた5人で、きっちり分けるのが後腐れも無くていいだろう」


ハッキリと言い切ったウォルトに皆が頷きかけた時、カイトだけが一人待ったをかけた。


「俺は、その分配からは除外してくれ」

「お、おい何を言い出すんだ!?」

「そうよ!5人で分けても相当な額になるわ!それだけあれば皆で家を買って住む事もできるじゃない!」


……確かに、それもいい。


きっと幸せな生活を送れるはずだ。


ーーだが……。


「俺は、皆に会う前にある物を拾った。


それがなんなのか、俺にはわからない。


だけど、何故かそれを手放すのだけは、嫌なんだ。


その不思議な何かを手放すのを嫌がる俺がいる。


俺を分配するメンバーに入れるなら、俺はこれもその分配する内に入れなければいけない。


……だけど、俺にはその宝とこれを秤にかける事はできそうにないんだ」


それは、あの石像が守っていた二つの塊。


金属のような、生物のような、不思議なその物体は、カイトがそれを袋にいれて背負った時から、まるで自分の一部であるかのような錯覚さえしていた。


なんて事はない鉱石なのかもしれない。


ただの置物である可能性も高い。


だが、手を添えると微かに脈動するような不思議な鼓動を聞かせるそれを、手放す事だけはできなかった。


「……そんなに、大事か?価値があると?」


不審げに顔を覗き込んでくるウォルトに、「俺には」とだけ返した。


きっとこれを手放せば、俺はこの先絶対後悔する。

そんな確信があった。


「……そこまで言うなら仕方ねぇな。今回は武器みたいな代物はそう無いし、結局は全部換金する事になるだろう。


カイトの物は除外して、残りを換金後に4等分。それでいいな?」


揃って頷く4人。

カイトの瞳に、後悔の文字は無かった。






*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+








行きより1日多く費やし、4日かけて帰り着いた一行は、一先ずそれぞれの宿で休息を取る事になった。



いくらゆっくり帰ってきたと言っても、迷宮を探索し、交替で見張りをしながらだ。


しかも今回は多くの価値ある物を持っている。


張り詰めた神経を解く時間が必要だった。


街についた途端緊張の糸がきれ、足をふらつかせたリースを支えながら<飛龍の鋭角>(ひりゅうのつの)へ戻ったリースとトリスは、それぞれの部屋に戻るなりそのままベッドへ突っ伏して、夕食の時間まで起きてくる事は無かった。


一方カイトはウォルトとリサを連れて、トルネの屋敷へと来ていた。


大きな商会なら、それなりの金額で買い取ってもらえるんじゃないだろうか?


それに、『アレ』がなんなのかもわかるかもしれない。



屋敷へ着いたカイトは、ドアノックを叩いた。


「はい……あら、カイト様!お帰りなさいませ。

皆さん心配しておられましたよ。


後ろの方々はお知り合いですか?」

「はい。妹達とパーティーを組んでいた人です。

トルネさんは……執務室ですか?」

「はい。ご案内いたしましょう」


此方へ……と言って先導するメイドの後をついて行くカイト達。


後ろの二人は、邸宅の大きさと豪華さに目を白黒させている。




メイドに連れられ執務室へとやって来た三人は、トルネと向き合い宝物の鑑定をお願いしていた。


ーーほぉ……。


とか、


ーーふぅむ……。


などと時折つぶやき、目を輝かせながら品物を手に取りひたすら見続ける。


その間何も声がかけられていないウォルトとリサは、緊張でカチコチになっている。


「むむむ……これが全て、迷宮の中にあったのかね?」

「ーーは、はいっ!全て、迷宮の小部屋や、魔物が守っていた部屋から手に入れた物ですっ」


普段はこんな大商人に直接見てもらう事などない為に、緊張でどもりながら答えてしまう。


「なるほど……。恐らく、その迷宮は古代の魔術師か、工作師(クリエイター)の倉庫か、宝物庫だったのだろうな」


見なさい。


彼が差し出したのは、淡く光を放つ一つの宝石。


赤く光るその宝石は、まるで宝石そのものが光っているように見える。


「これは、宝石の価値だけとってもかなりの物だ。


……とても純度が高い。


だが、それだけではこうも光は放つまい。


他にも同じような物があるが、恐らく全て、何かしらの魔法か、それに準ずる物が込められているのだろう」


そして彼は、おもむろに全ての宝物を綺麗にテーブルに並べると、窓へ歩み寄った。



ーーーーシャッ!



彼がカーテンを閉め、部屋を暗くした途端、テーブルの上に赤や青など様々な光が所狭しと光り輝いた。



その美しさに思わず息を呑む。



「私も長年商売をしているが、これだけ上質の物がたくさん集まっているのを見るのは初めてだ。


この手の物を蒐集(しゅうしゅう)する好事家(コレクター)に見せれば、相当な高値で売れるはずだ」


自分で持って行った方が実入りはいいと思うぞ?


と微笑むトルネ。


顔を見合わせ、何事か考えたサラとウォルトだったようだが、意を決すると、「いえ、ここで買い取ってください」と告げた。



「まともに商売をした事がない俺達が行っても、足元を見られるのがオチです。


それなら、ある程度の適正価格を知っているあなたに売る方がいい」

「私が足元を見るかもしれんぞ?」


人の悪い笑みを向けるトルネ


「それならそれで、構いません。


本来ならこうやって見せる事も無かったはずだ。

それなら俺は、ここに連れて来てくれたカイトを信じます」


まっすぐに目を向けるウォルト。


その目をじっと見つめたトルネはふっと微笑むと、「カイト君の知り合いに嘘をつくわけにもいかんな」と告げ、少し待ってなさいと言った後、隣の部屋へと去って行った。



ウォルトは、トルネの姿が見えなくなると共に一気に肩の力を抜きため息をついた。



「もう一生こんな商談はしたくない……」



心の底からそう呟くウォルトと、それに無言でこくこくと頷くサラ。



ーーガチャッ



隣の部屋から戻って来たトルネは、一枚の羊紙皮を持っていた。


「すぐにこれ全てを買い取る金は、今はこの屋敷にはない。


街の商業ギルドへこの証書を持って行けば、私の金庫から書いてある額を引き出して、渡してくれるはずだ」


差し出された紙に書かれた金額を見て度肝を抜かれるウォルトとサラ。



その証書にはこう書かれていた。




【これはこの者との取引において買い取った商品の対価となる金銭を、私『トルネ・ドランコ』の名において、我がクラスト商会の所有金庫から引き出す事を許可する物である。


私、『トルネ・ドランコ』は、彼の者が引き渡した商品の対価として、


エルム金貨2300枚


を、彼の者へ引き渡す事を承諾するものとする。


これは、いかなる事態が起きようとも、変更される事は無いものである事を、

『クラスト商会筆頭 トルネ・ドランコ』

の名において誓う。


xxxx年xx月xx日 トルネ・ドランコ 】


放心したままの二人の姿を見たトルネは、


「ん? 足りなかったかね? 」


と告げた後、面白そうに笑った。




*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+







なんとか正気を取り戻した二人が、証書を握り締めて部屋を辞した後も、カイトはトルネと向かい合っていた。


「いいんですか? あんな大金で買い取ってもらって」


少し心配になり声をかける。


脇から見ただけだが、確かに金貨2300枚と書かれていた。


確か、国境の警備兵の給料が、小隊長で月にエルム金貨2枚と聞いた。


普通の平民なら、その1/4、レルム銀貨50枚程で余裕を持って生活できる。


「なに、私はそれなりの伝を持っているからな。


恐らくこれ全て売り払えば、5000エルムにはなる」


それなりの時間を使えばな。


そう言って笑う彼の顔は、今までに見た優しい父親ではなく、一流の商売人の物だった。



「しかし、君にも運が巡って来たのかもしれないね。


エルム金貨を500枚近く手に入れれば、それだけで働かなくてもよくなるだろう」


そう聞くトルネの顔は、何故か面白そうに笑っていた。


「……実は、自分は分配には参加していないんです」

「なんでまた?」


不思議と言うより、怪訝な表情をするトルネ。


無理もない。


トルネの所へ持ってこなくても、冒険者ギルドの伝で紹介された所へ持って行けば、間違いなく金貨1000枚はくだらない。


いくら確かな目利きができずとも、それ位はわからなければ冒険者とは言えない。


そこまで目は曇っていないだろう。


すると、カイトがおもむろに腰の袋から何かを取り出した。


拳程の大きさのそれは、見た目以上に重いのか、ゴスンッという音とともに机の上に置かれた。


「これは、同じ迷宮にあった物です。


自分はこれを手にする為に、他の物の所有権を放棄しました」


眩く輝く金色と、闇さえ飲み込む様な漆黒のそれは、机の上で妖しい存在感を放っていた。



「触ってみて……いいかね? 」


カイトが頷いたのを見たトルネは、その内の金色の方に手を伸ばす。


ーーーー重いっ!?


見た目以上に重かったそれは、片手で持ち上げるのがやっとの重さ。


恐らく10ドグルム(10kg)はあるだろう。


「……よくこれを持ち帰れたね?」

「それが……自分には軽く感じるんです。


大きさも、一抱え程ある卵の様な物でした。」


迷宮から出て、最初の野営をする時には既にその大きさに縮んでいた。


不思議な現象に驚いたカイトはトリスにも見せたが、カイトが手渡すとその重さに驚いて落としそうになった。


カイトが持つ時だけ、何故か軽く感じる様だ。


その手に持った金色の何かを子細に調べるトルネ。



だが、それが何かは全く判断出来ない。


「……すまない、私にもこれがなんだかわからない。


今までにこんな物はみた事もなかった」

「そうですか……何故かそれを体から離すと心がざわめくので、売ったりする気は全くないんですが……」

「私の方でも出来るだけ調べてみよう。


……それよりカイト君」



なんでしょう?と顔を上げたカイトが見た物は、嬉しい様な悲しい様な微妙な顔をしたトルネ。


「娘が会いたがってると思う」


その声と同時、背中越しに扉が開く音と、「カイトさん! 」という少女の声が聞こえてきた。

ちなみにトルネの家を家財道具一式揃えて買うと、エルム金貨1800枚になるといふ

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