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ラスティカ

「おお、見えた。あれがラスティカの街ですよ」


前方に向けて指差したトルネ。


確かに、うっすらと街を取り囲む壁のような物が見える。


「あれが、ラスティカ……」


あそこに妹が……。



今、何処で何をしているのかわからない妹の手掛かりがあの街にある。


まだ遠い街の姿に、はやる気持ちを抑え、カイトは馬車に揺られ続けた。







「おや、これはトルネさん。おかえりなさい。無事で安心しましたよ」


街へ入る為に通行審査を受ける列に並んでいたカイト達は、順番が来ると衛兵からそんな声をかけられた。


「やぁ。いつもお務めご苦労さん」


笑顔で接するトルネと衛兵は顔なじみのようだ。

何度も買い付けで通ったりしているからだろうか?


「聞きましたよ。国境の砦にアースリザードの群れが襲いかかってきて、結構危なかったとか」

「おやおや、全く耳が早い。うちの商会の人間にも見習って欲しいもんだ」


そう言ってわざとらしくため息をつくトルネに、「私が衛兵だからですよ」 と苦笑を返す衛兵。


「おや、君がもしかして、砦を救った英雄様かい?」

「え、えいゆう?」


唐突に話を向けられたカイトは、その内容に驚きを隠せない。


「橋に残っていた人達に襲い掛かるリザードの群れを、単身飛び出して救った英雄……だろ?」


面白そうに語る衛兵の話は、あの時の状況に尾鰭(おひれ)をつけた物だ。

……しかも、どうやら自分一人で助けたような話になっている。


あまりの恥ずかしさに顔を赤くしながら、「いやいや、自分一人だったわけではないですし」と弁明?をするカイトを、面白そうに見る衛兵。


「まぁまぁ、そうからかう物ではないよ?」

「失敬、冗談が過ぎましたかな?」


お互いに笑みを交わすトルネと衛兵に、ちょっとだけ恨みを込めた視線を投げながら、手続きが終わるのを待つ。


「あぁ、そうだそうだ。ウィルス君、リースという女の子を知らないかい?彼の妹みたいなんだが、この街にいるという話を聞いてここ迄きたようなんだ」


ウィルスと呼ばれた衛兵は、少し考えたようだが首を振った。


「……いや、わからないですね。自分が非番の日や、別な門から入ったのかもしれません。後で仲間に聞いてみましょう」

「すまないね、助かるよ」

「いえいえ、トルネさんに恩を売れるのなら安い物です。ーーあぁ、こちらが通行証です。お待たせしました」


差し出された木の板を受け取る。


「門をくぐった先の詰め所でこちらをお出し下さい。


街を出て、再度入る際には、またこちらでこの入場証を受け取る必要がありますので。


……最近この辺りも物騒になっていますから、どうにも面倒をおかけします」

「いえ、こちらこそ。妹の事で何かわかったら教えてください」


任せて下さい。と言うウィルスと別れ、カイト達は街の中へと入った。




*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+






街に入ったところで、今晩からの宿を探す為に別れる事をカイトが告げると、トルネは「家に泊まりませんか?その方が情報も集まりやすいと思いますよ?」と申し出てくれた。


何故か強く賛成してきたルルカの勢いにも押され、カイトは暫くの間トルネの家に泊めて貰う事となった。


了承した時に、大袈裟に喜ぶ妻と娘の横で、何故かそれを提案した本人にも関わらず、悔しいような悲しいような表情を浮かべていたトルネがとても印象的だった。

ラスティカに到着したカイト。


無事妹は見つかるのでしょうか?

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