勝利の美酒の味は
一度書いた文が手違いで消えてしまって、
「うおおおぉぉぉぉぉぉ」
とか一人でバカやってました。
うん、バックアップは大切ですね。。。
戦い終え、砦に戻ったカイトを待っていたのは、歓声と感謝の嵐だった。
砦の中に居た者は、皆一様に橋の上に残っていた者達を心配していたようだ。
同じ様に旅をしている者達だ。いつ自分が同じ様な危機に遭うかわからない。
だからこそ、皆自分の事の様に考えていたようだった。
助けられた者達も、ある程度の覚悟はしていた筈だった。
しかし、想像の中の出来事だったものが、実際に目の前に降りかかってくれば話が違う。
ここで命を落としていたかもしれない。
それを身近に感じた彼等は、目に涙を浮かべ、己が助かった事を、神と、救ってくれた恩人に感謝していたのだった。
その気持ちを一身に受けていたカイトだったが、素直に誇れるものではなかった。
カイトとしては、見ていられずに飛び出しただけで、後から警備兵達が来てくれなければ一人で全員を助けられたかわからない。
むしろ、自分も命を落としていたかもしれない。
そう思ったからこそ、皆に、
「自分の力だけで助けられた訳じゃありません。警備兵の皆さんが来てくださったから、自分も生きて帰ってこられたんです」
だから、自分ではなく、普段からここを守っている人達に感謝を言ってください。
しかし、それを謙遜と受け取った皆は、あれだけの腕を持つのにそれを誇らないとは!と、さらに評価を上げ、尚カイトを褒め称えるのであった。
その雰囲気に流石に居心地が悪くなってきたカイトは、急ぎの用があるからとその場を離れようとした。
しかし、それを告げようとした所、背後の扉が開き、外から警備兵の面々が砦の中に入って来た。
それぞれの防具を血で染めて帰ってきた警備兵の者達は、砦の中にいた人達と同じ様にカイトを褒め称えた。
だが、旅人達はその威容に一瞬気圧され、静まり返る。
すると、それを察したのか、一人の男が歩み出て来た。
「君が居てくれて助かったよ。
おかげで誰一人と犠牲を出す事なく、モンスターを討伐できた。
きっと反対岸の面々もそう思っているだろう。
この国境を守る人間全ての代表として、感謝の言葉を言わせて貰うよ。ありがとう。」
そう言うと彼は、兜を脱ぎ頭を下げた。
その姿にカイトは動揺してしまう。
いくら助けたとはいえ、騎士ともなればその身分は平民の遥か上。
その騎士様が、平民の自分に頭を下げたのだ。
「や、やめてください。俺は、自分に出来る事をしただけです。皆さんがいなければ自分も死んでいたかもしれない」
だから顔を上げてくださいと、お願いするカイト。
「いや、謙遜する事はない。君とその子狼の連携は見事だった。
どうだろう、もし急ぎの用件がなければ、一緒に夕食でも?ーーよければ、後ろにいる方々もどうでしょうか?今回危険な目にあわせたお詫び……という事で」
すると、さっきまで腰が引けていた連中も皆、ただ飯が食えるとあって口々に賛成の声を上げた。
更に、先程馬車に乗っていた人だろうか?恰幅のいい男性が、「なら私も助けていただいたお礼に半分持ちましょう」と言うと、場は歓声に包まれた。
「……で、どうかな?」
と聞いてくる兵士。
この雰囲気では断るほうが勇気がいる。
実際に“急ぎ”では無い為、断る口実も無いまま、カイトは流されるように酒宴へと向かうのだった。
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「それでは、見事モンスターを退けたカイト君と警備兵の勇姿に敬意を表してーー乾杯!!」
その掛け声と共に始まった酒宴は、その夜遅くまで続いた。
あの後交代を終えた兵士達に連れられて来た、酒場兼宿で、テーブルいっぱいに広げられたご馳走と酒を前に、皆生きている喜びを分かち合おう!と、ひたすら飲み、食べた。
最初、その食事等の豪華さに驚き、大丈夫なんですか?と聞いたカイトだったが、
「大丈夫。半分はあの商人が出していてくれてるし、こちらはあの時一緒に出ていた兵士達全員で割っているから」
と、抜け目なく言われた言葉に、それならとカイトも席に着き、目の前のご馳走に舌鼓を打った。
兵士達と挨拶を交わし、親交を深めたカイトだったが、良かったらうちの騎士団に入らないか?との勧誘には首を縦に降らなかった。
それを見た兵士達は残念そうだったが、気が変わったらいつでも来てくれよ!と彼の肩を叩き、酒を進めてくるのであった。
生まれて始めて飲んだ酒の味に酔ったカイトは流されるまま酒杯を傾け、何時の間にか意識を失い、気がついたのは翌朝、ベッドの上だった。
「ん……ここ…は…あ、あ、あぁぁ……」
目を覚まし、体を起こそうとしたカイトは、ガンガン鳴る頭と、クラクラと回る視界に驚き、そのまま体をベッドへと戻した。
人生で初めてたらふく酒を飲み、初めての二日酔いを経験したカイトは、しばらく酒は飲まなくていいかも……。と、その頭痛に顔をしかめ、再び目をつむった。
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なんとか昼頃に起き出したカイトだったが、その頃には既に粗方の者が宿を出た後だった。
その事を聞いた宿の女将は、「昨夜はなかなかいい飲みっぷりだったね。皆、お前さんにありがとうと伝えてくれと言って出て行ったよ」と教えてくれた。
なんか食べるかい?と聞いた女将に、食欲が無いと伝えると、笑いながらこれでも飲んどきな、と水を出してくれた。
……水がこんなに美味しく感じたのは、奴隷商から売られてすぐのあの時以来だ。
そしてふと、あの時一緒に馬車に乗っていた面々を思い出し、少しだけ気分が重くなった。
奴隷として売られた者が3年生きれる割合は、およそ3分の1。
おそらくほとんどの人間が生きていないだろう。
彼等は、こうやって酒を飲み、二日酔いになって、
それを笑い合いながら、水を飲む。
それをきっと経験せぬまま、逝ってしまったのだろう。
それを考え、やるせない様な気持ちになりながらグラスを傾けていると、
「そう言えば、昨日の隊長さんが話があるとか言っていたよ。起きたら宿舎に来てくれってさ」
それを聞き、きっと待たせているだろうと思ったカイトは、慌ててクルトを連れ、兵舎へと向かうのだった。
いずれ加筆修正を加えると思いますが、
現状勢いに任せて書いたような文章で、所々変な表現があるかと思います。
「おいおいこれは……」
と言う様な場所があれば、感想等でご指摘ください。
ついでに、良い所悪い所も書いて頂ければ幸いです。
……一言だけ突っ込まれても、返す言葉に困ってしまうので。。。サーセン。。。