表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/61

暴虐の果てに

その日俺は、溜まっていた皮や牙等を近場の街に売りに出ていた。

牙や皮だけじゃなく、村で採れた野菜や果物なんかも一緒だ。週に1度、こうやって街に出て、売ったお金で消耗品を買い揃えて戻る。

どうしても、採れたものだけじゃ生活はできないから。


売れ残りや買った消耗品を馬車に載せ村に帰っていると、街道の向こうから、旅人らしき人影が必死に走って向かって来ていた。

「どうしたんだい?そんなに急いで」

「と…盗賊が…」

「盗賊!?」

戦争が起こってから、街や村では男が駆り出される。

そうして駆り出された男手の無い場所に、軍からの脱走兵や敗残兵が盗賊となって押し寄せる。今迄は戦場も遠く離れていたから比較的安全な場所だったのだが…

「お前も、早く逃げた方がいい。これだけ荷物を抱えていたら、きっと見逃しては「ダメだ!この先に、俺の村があるんだ!」…そこは…もうダメだろう…俺が盗賊を見かけたのは、1刻も前の話だ…きっと…」

唇を噛み締め、それでも諦めないと馬にムチをくれる。

「おじさんは街の人達にその事を伝えてくれ!俺はいく!」

脳裏にいろんな顔が浮かんでは消えていく。

リース…母さん…ベルク…トリス…

俺がいった所で何ができるかはわからない。それでも、見捨てる事はできなかった。

半刻ほど走らせると、ようやく村が見えてきた。しかし、村の至る所から煙が上がっている。

涙がこぼれそうになるのを必死で抑え馬車を走らせていると、村から何人かの人影が走り出てきた。

あの人影は…

「リーーース!!」

「…ッ!…お兄ちゃん!!」

馬車を止め、話を聞こうとする…が、

「あっちにいるぞぉ!!」

「く…ッ!皆はこの馬車で街にいけ!おれが食い止める!」

「無茶だ!一人でなんて…「トリス!妹達を死なせる気か!?」…でも…」

馬車から飛び降り弓に矢をつがえる俺に、なお渋るトリス。

「大丈夫だ、少しの間脚を止めたらおれもすぐに逃げる。森の中にはいれば俺なら逃げられる!早く行け!」

そう言うと馬に問答無用でムチをくれ走り出させる。

もう猶予はない。

「カイト!絶対!絶対死ぬんじゃねぇぞ!!」

…わかってる…こんな所で俺は死ねない!死んでやるものか!

馬車を追おうとする盗賊に矢を放ち牽制しながら、

必死に脱出手段を考えるカイトだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ