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対峙する時

戦闘シーンが入ります。


グロ系嫌いな方は飛ばして下さい。

どうやら警備兵が迎え撃つ決心をしたのは、その橋の上にいる人達をモンスターから守るためのようだ。


アースリザードは走る速度は速いが、空を飛べず砦の中にはいる事ができない為、本来は砦の上から弓などで撃って倒すのだと言う。


近くの兵士に尋ねるとそう答えられた。


まるでよくある事のように言う。それだけ相手をし慣れているという事か。



だが、今回は守るべき人が外にいる為に、外で対峙せねばならない。


微かに緊張が伝わる砦だったが、その心配を余所に、アースリザードに近付いた兵士達は、見事な連携でモンスターを取り囲み、次々と討ち取っていった。


同じように見ていた人々が歓声を上げる中、その中の一人が悲鳴をあげて指差した。




その先……川の上流、今兵士達が戦っている反対岸、つまり此方側の岸にもアースリザードが現れ、橋を目指してひた走っていたのだ。


更に、今戦っている方の中から1体、包囲を抜けると、そのまま橋に駆け寄り始める。



虚を突かれた兵士達は、囲んでいるモンスターで手一杯で動けないようだ。



徐々に距離が詰まるモンスターと橋。




これから起こるであろう光景を想像したカイトは、いても経ってもいられずに、砦から飛び出した。





************






「ほら、もう少しだ!頑張れ!」


御者台に乗って、馬車を引く馬に声をかけながら、必死に反対側の砦を目指す。



あの時、周りから聞こえたどよめきに驚き、その後で躊躇さえしなければ、こんな事には……!



それは、丁度橋の中間あたりにいた時だった。


それ程大きくない橋で、いつも渡り慣れていた場所。

周りを囲む人波にうっとおしさを感じながらも、ここさえ越えてしまえばもう後は街道を行くだけ……と自分を励まし、家族が乗る馬車をゆっくりと、反対岸の砦へと進ませていた。


そんな矢先、橋を渡っていた男の一人が、今までいた岸を指差し何事か叫んだ。


なんとなくその先を見た私は、その光景に驚き、恐怖した。



恐ろしいモンスターの集団が、こちらに向け一心不乱に駆けてきていたのだ。



砦には警備兵もいて、たまに現れるこのモンスターの対処にも慣れている。


そう知ってはいても、砦の外にいる私達にとっては大した意味もない。


馬車に乗っている家族がモンスターに襲われる……その事を考えると、気が狂いそうになった。



周囲の人間も同じなのか、その姿を見るなり悲鳴を上げ、次々に走り出した。



しかし、その向かう方向がバラバラだったのが、災いした。



走り出す人波は、自分のいる馬車を囲み、向かいの砦と背後の向かう人とでごった返した。



それでも、そんなに沢山の人がいたわけではなかったから、直ぐに人波は薄まり、馬車を進める余裕もできた。


簡単に進む方向を変えられない馬車は、背後に向かう為には捨てなければいけない。



しかし、それを躊躇した私は、家族を乗せたまま正面の砦に向かう事を決めたのだ。



他に数人いた周りの人間を一緒に乗せ、正面の砦へと走らせる。


だが、人が増えたせいか思う程の速度が出ない。



苛立つ私は、顔を上げ、気がついた。



向かいの岸の上流にも、モンスターの姿がある事に。







************







おそらく、橋の中程にいた人達も、その姿を見つけたのだろう。こちらに走っていた足を止め、踵を返そうとしていた。




「そのまま進め!思い切り走るんだ!!」



おそらく背後のリザードの姿は見えていない。こちらのリザード達よりも近い場所にいる、そちらのほうが厄介だった。



砦から飛び出したカイトは、背負っていた弓を持ち、矢筒から矢を何本か引き出した。



まだ射程には届いていない。




橋にいた集団にむけて走りながら、丁度橋に辿り着いた反対岸のリザードを睨む。




やはりこちらのほうが速い!




カイトの指示に従い、走り出した人達。先頭にいる馬車の陰に入らない様に位置を調整したカイトは、限界まで弓を引き絞り、リザードが射程にはいると同時、撃ち出した。



まっすぐに打ち出された矢は、吸い込まれるように正面のリザードへ。


しかしリザードは、その矢を横に一歩踏み出す事で避け、尚も走り近付いてきた。



しかし、もとより一矢で仕留めるつもりは無い。



カイトはそのまま、二の矢三の矢を放ち、リザードを牽制する。



と、背後の砦から兵士が現れ、向かってきていた上流からの一団と相対した。



――今だ!



全速力で駆け抜ける人と馬車に当たらぬ様にと撃っていた矢を、確実に仕留める為の撃ち方へ変える。



「クルト!」



カイトが叫ぶと同時、背後に控えていた黒狼が、人波をよけリザードへ飛びかかった!



間近に迫った人間へ爪をたてようとしていたリザードは、いきなり現れた黒狼に驚き、咄嗟に身を(かわ)そうと体をひねる。


カイトは体制が崩れたそのすきを逃さず、8割程に引き絞られた弓から、十分な威力を持った矢が飛び出し、狙い違わずリザードの眉間へと突き刺さった。



息を止めたリザードから目を離し、上流の一団へと目を向ける。


どうやら此方の様子が気になるらしく、あくまで時間稼ぎの様に戦っている。



漏れ出て来るかもしれない。



そう判断したカイトは、橋の上の人達に「早く砦へ!」と声を掛けるなり、兵士達の方へ駆け出した。







同じく駆け出したクルトが追い抜き、今まさに兵士の一人に牙を突き立てようとしていたリザードに飛びかかった!



その首筋へ牙をつきたて、体ごとねじる様に回転する。


突然噛み付かれたリザードは叫び声を上げ、同時に襲いかかった激痛に身をよじらせた。



鋭く尖った牙を突き立てられ、さらにねじる様に動きを加えた結果、噛み付かれた部分をえぐる様に切り取られ、その痛みに耐えかねるように地へとその身を投げ出したリザード。



近寄るなり腰の剣を抜き、躊躇せずその頭蓋へと突き刺す。


驚いている兵士を尻目に、カイトとクルトは次の獲物へと向けて飛び出した。






その後カイトの加勢もあり持ち直した警備兵達は、巧みな連携で徐々にリザードの数を削り、ついに群れを殲滅することができた。




辺りには、首が飛んだり、頭が割られたり、心臓を貫かれたりしている死体が散らばっている。




「いや……助かったよ。君がいてくれなかったらどうなっていた事か」



礼を言ってくる兵士に「いや、できる事をしただけで」と返したカイトは、剣からモンスターの体液を拭い取り、その刃を見つめた。



この剣を使って初めてまともな戦闘をしたけれど、凄い切れ味だった……。




鉄の鎧に匹敵すると言われるアースリザードの鱗をいとも容易く斬り裂いたこの剣。


これが無ければこうも簡単にはいかなかっただろうな……。



この剣を持たせてくれたガゼットに、心の中で礼を言いつつ、カイトは砦へと引き返した。


たまに来るモンスターの襲撃。


そのおかげで、練度と士気の低下が防がれているんですね。

国境警備兵が強い理由は、常に最前線にある事だからでしょうか。

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